2011年2月6日日曜日

菊水の家 温度測定

本日は、菊水の家に温度測定に来ました。各部に自動記録式の温湿度計を置き、北海道の厳寒期に当たる二月の各室の温度と湿度を調べようというものです。なんだか小学校の自由研究のようでもありますが(笑)、こうすることで自らの設計が熱的にうまくいっているのかを検証することが大切なのです。「え~っ!それじゃ山本さん上手くいくかどうかも分からなかったの~??」なんて驚く声も聞こえてきそうですが(笑)...いえいえけして分からないのに設計なんてしません。誤解を解くために言いますが、本来、建物はその敷地の条件によって室内の環境が大きく影響を受けます。日当たりが良い悪い≒冬暖かい寒い等々は北海道の人間ならばおなじみの事柄ですよね。日当たりのよい敷地で当然のようににできたことが、北向き敷地だと支障をきたす。風の穏やかな旭川なら許される作り方も強風地域の岩内なら注意が必要。こんな風にさまざまな設計上の優先順位が絡み合って、その地域ごとに多様な工夫が求められるのです。同じ札幌市内でも風の強い南あいの里地区と周囲に既にたくさんの建物が立ち並び比較的風が穏やかな菊水地区では雪の積もり方や雪庇のでき方が大きく違います。反面、私たちが住まいに求める快適性や健康性は方位や風速に左右されるようでは困ってしまいます。そこで実証検分を通して設計の勘所を絶えず鋭敏に保つ必要があるのです。こんな理由で私が行うことは科学で言うところの基礎研究、「未知なる危険な液体同士を混ぜてみよう。」といった趣旨ではなくむしろ「改良の余地を探す」ことが目的なのです。今後は自然エネルギーのように不安定な熱源や使いすぎると再生不可能になりやすいもの、また従来の電気やガス、灯油を使うにしても以前では考えられなかったほど低燃費が求められます。これは一見するとハイテク技術が主役のように感じられますが、そうした技術を進歩させるためには、牽引力として消費者の高い環境意識が必要です。建築も似ていて、建物全体に大きな影響を及ぼす設計者の意識が新しくないと、大きなエンジンばかりが目立つ設計からなかなか卒業することができません。実に簡単なことなのですが、北海道の建築を進化させるためには消費者の意識に加えて設計者の意識改革も同時に進めなければならないのです。

外部につけた温度計。直射日光を避けて取り付けられている。

腕のように飛び出た部分が温湿度センサー。

熱交換換気装置のある一階にも設置。