本日は、雨雲が広がる中、屋根の防水工事です。札幌で一般的な70坪の区画割りで南側敷地という「屯田の家」は、当初から無落雪であることが求められました。当然ながら南側にはエントランスや敷地内通路、駐車スペース等があるので落雪させることができないからです。こういった条件は道内の住宅街では珍しくないですよね~?ではどうやって雪の落ちない陸屋根をデザインするの?
一般にはスノーレーンと呼ばれる、屋根の中央に水を集めて排水する形式の屋根が今でも圧倒的に多いのですが、私の事務所では2009年からこのスノーレーンは作っていないのです。最近はもっぱら特種ビニル樹脂シートによるシート防水。屋根の勾配はナシでフラット(通称:小室屋根)。屋根に溜まった水は表面張力で盛り上がり風が吹くと風下へ流れて地面に落ちます。要は雨樋も勾配も雨樋を凍結から守るヒーターも集めた水を下水に流す配管も不要なシンプル屋根なのです。
写真は2009年竣工の「銭函の家」。この後、風が吹くと風下の軒から雨水は地面に落ちておしまい。 呆気ないほどの「これだけ感」...(笑)
北海道で一般的なスノーレーンによる陸屋根。水を屋根の中央に集めるために勾配が必用であり、集めた水を流すための樋も必用となる。おまけに凍らせないためにはヒーターと電源が必用であり、もちろん放流先である下水が整備された地域(要は田舎では難しい)でなくてはいけない。落ち葉やごみが詰まらないように定期的なメンテナンスが必用である。ということは屋根に上がるためのタラップが必用であり、電気代やetc.....(笑)
平たいだけで雪を落とさず溶けた雪水は都市のインフラ(下水、雨水)に頼ることなく敷地内で通常の屋根のごとく浸透させてしまいます。考案者は先輩建築家の小室さんなので、通称:小室屋根と呼んで愛用しているのです。こんな話をするとなんだか物足りなさを感じる人はいませんか~?(笑)
実は建築ってあれもこれも付ければ付けるほどめんどくさくなって、メンテナンスや管理の工夫が必要になって結果的には維持費に跳ね返る!っていう悪循環の渦巻きに陥りやすいんです。特に床、壁、屋根みたいに基本的な部分は、後々、対処療法に陥らないように最初からシンプルに解決策を考えないといけません。そんな意味で考えると従来のスノーレーンの屋根をさらに発展させた究極の陸屋根がこのスタイルなのかもしれません。
このグレーのシート一枚で、北海道にぴったりの屋根が簡単に作れるなんて...単純にすることでむしろ根本的な解決に近づくのは、最近なんでも複雑化する日常にあって建築の面白いところではないでしょうか。でも物事って意外にそうなのかも知れません。既成概念から一旦離れてみるって建築に限らずとっても大切だと思いませんか。(笑)
さてもうすぐ上棟式!プロテック(屋根屋)さん頑張って!
今日はBENIのカバーなんていかがでしょう?