2019年3月31日日曜日

野幌の家Ⅱ 基礎工事

 
敷地は野幌(ノッポロ)地方特有の水はけのあまりよくない固い粘性土地盤。直接基礎とするには充分な強さがありますが、その反面地下水位が高く通常の布基礎だと床下への湧水が懸念されます。そこで基礎下を水平に水が通るように砂利層を連続させその上に防湿ビニル+断熱材+基礎底板(耐圧板)とすることにしました。
 
北海道で一般的な幅50cm程度の基礎底板ではなく建物の広さと同じ厚み15cmのコンクリートの大きな板を一旦作りその板で水圧を抑えようと考えました。布基礎はその上に立ち上げる方法です。


アンカーボルトが基礎幅の芯に来るように鉄筋はボルトの太さ分オフセットさせ、コンクリート打設時の圧力でアンカーボルトが動かないように、またねじ山がコンクリートのトロでつぶれないように冶具で位置を固定しねじ山にはテープを巻いてコンクリートを流し込んでくれました。

 
止水板がばっちり効いて雪解け水が流れ出さないで溜まっています。季節が春先なので雪や雨が降ったりそのせいで泥っぽくて写真がきれいじゃないのが残念ですが、建て方前には完全に水を排水し充分乾燥させて最初の清掃を行います。

平屋なので基礎が広いです。既に建て込んだ市街地なので計画では既存建物の窓の位置を意識して間取りを考えました。単純に南東に開くと敷地奥の4階建てのマンションとお見合いしてしまい、さりとて日射取得を意識した明るい室内にもしたい・・・色々と計画で悩んだ時期を想い出します。
 
実は碁盤の目状の比較的新しい都市計画が多い北海道でも都市軸と南北軸が一致しているケースはかなり稀です。そんな敷地条件で真南に建物を向けようとすると敷地内で大きく建物を傾けて配置せざるを得ないことも少なくありません。地価の高い都心部だと狭い敷地内に合理的に物置や車庫と言った付属建物も主屋の他に配置しないといけませんから、敷地内に三角や台形の余白が残るような主屋の配置は中々難しいのです。
 
そこで活躍するのが300mm断熱のような超断熱化。一般に高断熱化は室温を安定させる効果があります。さらに窓を南面させると入る日光によって室温が上昇します。この時断熱をどんどん厚くして行くと必ずしも真南からの日射にこだわらなくとも計画上充分な室温(自然温度差Δtn)が得られるようになります。
 
超断熱化によって真南という日射熱取得上最も効率の良い方位への縛りが緩んだ結果、日射取得上は不利になる北側敷地や建て込んだ敷地でも配置計画の自由度が広がります。
 
超断熱化した建物では日射熱取得上は必ずしも有利とはいえない北側の窓も充分に使いこなす余裕が生まれることで日本では一般にタブー視されがちな北側の居間も容易に計画可能になります。
 
 

基礎断熱はEPSの160mm。熱伝導率(λ)は0.033W/mK。
地元の岩倉化学工業製のセルボード。
岩倉化学工業㈱HP https://iwakura-chem.co.jp/

止水板はやっぱりこのタイプが今のところ一番使い易くて信頼性も高いです。
 
今日はDaft Punkなんていかが・・かなりファンキーです!
 

2019年3月21日木曜日

野幌の家Ⅱプレカット打ち合わせ

昨日は「野幌の家Ⅱ」のプレカット打ち合わせ。今まで当事務所の仕事を多く手掛けてくれている㈱ニッショウさん。CADオペのMさん営業のAさん。そして飛栄建設のM所長とU棟梁そして私。

数年前から各プレカット工場の加工能力を研究し、手刻みでは難しい構造デザインをCADオペさん棟梁さんと協働しながら作り上げてきました。

私:ここは赤みの強いカラマツ材の柱を20cm間隔で建てて透過性のある壁柱みたいに見せたいんですよ。 

Mさん:金物は見せられませんよね~?

U棟梁:Mさんのお手並み拝見だね~(笑)

Mさん:はい。実は考えがあるんです。クレーンは建て方の時にあるんでしたよね(笑)

みたいな感じで、私が描いた二次元な図面に現場感覚というリアルを与えてくれます。この時に指摘されたことを大切にしてすぐに詳細図や標準納まりに反映させて現場ごとに絶えず図面を改良し続けます。こうした決定事項や共有事項を打ち合わせの時だけのことにせず川上に位置する設計者の図面品質の向上に使うことで工事中の打ち合わせは大きく減り、建物の出来上がりも飛躍的に良くなります。絵だけ描いて解決は現場に丸投げという設計者もいますが、現場を始める前の時間の使い方を少しだけ工夫すると設計者、施工者、生産者、全員にとってよりよい現場となります。

今日はダフトパンクなんていかが?
https://www.youtube.com/watch?v=QOngRDVtEQI&start_radio=1&list=RDQOngRDVtEQI

2019年3月18日月曜日

桂岡の家 断熱改修工事



木立の中に佇む築50年の「桂岡の家」。
 
現地調査をしていると当時の住まい手の雪や寒さに対する気持ちや恐れまで感じることができます。断熱を除き、当時手に入る様々な工夫をほぼ全て投入してこの北国の住まいはできている。最初に伺った際に感じたことです。
 
居間の主暖房はなんとペチカ。高温の煙を煙道に導くことで蓄熱性の高いレンガの躯体をやんわりと暖め穏やかな輻射熱を得るロシア生まれの暖房方式。燃料は基本的に薪。もちろん煙突共々建築の一部ですからこのペチカを中心に周りを田形に部屋が取り囲む間取り。
 
かつて西欧列強と競い大陸に侵出した旧日本陸軍により持ち帰られた朝鮮半島のオンドルと同様に当時の第七師団が駐留していた道北旭川の将校用官舎の暖房としても同種のものが用いられた記録があります。
 
今一つは居間と浴室に採用したセントラルヒーティングの床暖房。特に浴室は脱衣室も含め暖かかったおかげで非常に痛みが少なく当時の内装がきれいなまま残っています。
                                
ペチカは「横島ペチカ製」

 
 

屋根の形状は当時から「招き屋根」と呼ばれる形式で東西に落雪を振り分け南側のエントランスと北側の勝手口を確保する設計思想が感じられます。屋根の落雪から大切な暖房用灯油タンクを守るために十分な離隔が取られています。

当時流行した外壁に大谷石を貼ったエントランス。1階には冬場の除雪用具や薪、車両等を収納しつつ積雪から逃れるために建物は高基礎により持ち上げられています。実質的に玄関は中二階の高さとなり、降り積もる雪を見下ろす恰好の居間や主室群となります。こうした垂直方向のゾーニングは今で言うなら二階リビングのようなスタイルに姿を変えて比較的多く北海道内で見られます。
 
断熱は基本的に外側からスッポリ建物を外張り断熱しようと考えています。
 
今日はリリリップスなんていかがだろう?
 
 

2019年3月11日月曜日

野幌の家Ⅱ着工しました

今年は極端に雪が少ないですね~。予定通り3月から着工した「野幌の家Ⅱ」の現場写真。平屋なので排土量が多く、基礎屋さんには頑張っていただいています。
 
担当していただくのはおなじみ飛栄建設のM所長さんです。
飛栄建設㈱HP http://www.hiei.co.jp/

こちらは敷地内に残された古い集水桝。区画割が古い地区では過去のインフラが敷地内に残されていることが少なくありません。おそらく水はけのあまり良くない敷地の水位を下げる目的で以前の持ち主が設置したのかもしれません。設備屋さんに調べていただいた結果まだ道路に向かって管が伸びている様子。他からの接続があるのかもしれないのでこのまま残すことにいたしました。

土壌は粘土質。70cm程度も掘ると黄色く固い粘土層に当たります。

こちらがその固い粘土層。案の定水はけがあまり良くありません。

面積がそこそこ広いのでユンボを二台投入して掘削を進めます。
 
今月は3人の息子たちの卒業式!みんな卒業おめでとう!
それぞれの道で頑張ってね(笑)素敵な歌を贈ります。 父より