2019年5月24日金曜日

野幌の家Ⅱ スパイラルダクト工事 その2

美しく配管されたスパイラルダクト125φ(125mm管)。設計に際しては梁の下端を極力揃え、そこから水平展開可能なダクトスペース高を25cm確保し、天井仕上、必要天井高の順番に設計高さを設定しました。
 
一番背の高い梁の下端でも25cmのクリアランスが確保されているので圧損抵抗の少ない100φ以上の管に防露や防振用のラッキングを施しても充分に天井裏に収めることができます。
 
安全にダクト換気を行おうとするならば計画当初から水平展開できるスペースを見込んで高さ方向の寸法決め(矩計)をするコツを意匠設計者が身に付けないと、そもそも管の通る余地のない断面計画しかできようがありません。
 
特に木造住宅において従来の矩計(高さ方向の寸法決め)の検討は階段寸法や設計者好みの階高、天井高を基に行われることがほとんどで、そこにダクトスペースという視点自体がありません。従来のように平面、立面、断面が概ね固まってから24h換気の種類を検討するのはけして良い方法とは言えないのです。
 
一般的に「建物の高さ」は各種の斜線や高さ制限、壁面の後退距離や計画可能な階段の水平距離等々と複雑に関連して決められます。一旦決めてしまうと、後から配管が通らないからといって25cm上げても支障なし!なーんてまずありません。(笑)
 
ですので計画の初期、建物の外郭を検討する時に織り込んでおかないと後でかなり悲惨なことになってしまいます。
 
そもそも配管スペースが検討されていない床下や天井裏に後付けで・・なんとか配管を収めようとすると・・・詰まり易い配管の小径化、圧損抵抗が高く、潰し易く曲げ易いアルミやビニールフレキの多用・・・等々 どんどん悪循環が重なり・・・
 
住まい手の居住後に清掃や維持管理が極端に困難なダクト配管が出来上がってしまいます。ダクト換気は管内部が汚れるのが当たり前。それが給気側なら将来的には室内空気の汚染につながりますし、たとえ排気であっても風量が落ちてモーターの負担は増えるばかりです。
 
要は本来あるべき換気用のダクト配管とはまず圧損抵抗が少なくて汚れにくいもの。もちろんそれでも経年で汚れてきますから、定期的な清掃が容易なものとなります。

ダクトによる換気はビルや住宅を問わず私たちの暮らしに欠かせないものですが住まいの断熱と同様、適切な設計手法や施工法が共有されているとは言えないのが、残念ながら実情です。 
換気機も設置スペースを間取りの計画段階から確保して、精度高く配管の位置決めを行います。国産では階間に設置して普段のフィルター交換こそなんとか行えるものの、本体の交換や整備の際には天井もしくは床を壊さないといけないものも少なくありません。
 
近年は性能的には外国製に負けないものも多いのですからこの際、階間設置という筋の良くない設計思想をスッパリ捨てて、目線の高さで簡単にフィルター交換や点検が可能な壁掛け型の機械を作ってほしいと思います。

そのためには設計に対して圧倒的な意思決定権を有する、意匠系設計者のスキル向上と意識改革が欠かせないと思います。
 
建築の現場にとっての悲劇は、そもそもの意思決定が無理筋の場合、後から修正が難しいところです。まさに配管スペースの無いところに配管せよ!と言った指示はその最たるものだと思いませんか?(笑)

意匠系設計者は普段から設備系設計者の意見をよく聞き、設計や施工の勘所を充分共有しておくこと。 くれぐれも裸の王様にだけはならないことだと思います。
 
話しは変わりますが、住まいに断熱を取り入れることで簡単に全室冷暖房が可能になった日本の住まいは今後、全国的に全館空調の方向に進むでしょう。その普及には家の各所に空気を運ぶダクト配管が欠かせません。その一方、住宅向けのダクト配管の専門職はたいへん少数なのが実情です。
 
地域によっては代理店さんや水道屋さん電気屋さんが本体の取付と一体で慣れない配管を行っているケースも少なくありません。安心できる配管のためにはルールの整備はもちろん新たな職種に対する教育の必要性が高まって行くと思います。
 
また今後は配管の清掃や修理を専門とする会社やサービスが生まれるかもしれません。そんな意味でも住まいの全館空調化には大きな可能性を感じます。
 
今日はM.W.Mなんていかが

新琴似の家Ⅱ 根掘工事

根掘りを終えた「新琴似の家Ⅱ」の敷地。地下水位が高く地盤のあまり良くない新琴似地区。断熱材を敷地一杯に敷き、その上にコンクリートで15cm厚の床(耐圧版)を作り地下水が床下に入らないようにします。

こちらが環境パイルと呼ばれる防蟻&防腐処理された木製杭。国産材の有効利用、コンクリートの削減、更には高いコストパフォーマンスの観点から最近使う機会が増えてきました。
 
敷き込まれた砂利は地下水の水圧を周囲に逃がすために耐圧版の下前面に敷き込みます。

道路側からアプローチ棟、住宅棟の順番で建設されます。

現場には耐圧版の下に敷き込まれるEPS断熱材が搬入されています。

耐圧板の下に断熱材と防湿ビニールを敷き込むことでコンクリートの床下が地盤の冷たさで結露し難いように、湿気が上がり難いように工夫します。
 
今日はフレンチポップなんていかが
https://www.youtube.com/watch?v=G5erDuKhr8Q&list=PL8qNI6-4hPDouEJDQW1A9T3841M5jHJqW&index=4