北海道で最大の建築系研究機関である北方建築総合研究所(北総研)。毎年、最新の研究成果が各研究員によって発表されるので、普段は実務ばかりの私なんかはたいへん勉強になります。今年もいろいろと使えそうなものから、将来性を感じる夢のあるものまでたくさん。充実した一日になりました。面白そうなものをいくつか紹介いたしましょう。
1:高性能遮音工法の開発(良質な木造共同住宅のための~)
建物を断熱してゆくと必ず音の問題が生じます。北海道のように高断熱建物が多い地域では断熱化による室内環境の改善の反作用として二階の足音なんかがよく問題になります。特に民間借家では従来からよく指摘されていました。そんなニーズに答えるローコストな床構造の研究でした。
2:木造躯体と各種断熱材を用いた防火設計の研究
断熱材の種類や施工方法によって燃焼時の躯体にどんな損傷の差が出るのか?これらを明らかにすることで断熱材の進化と建築基準法に定める防火構造、準耐火構造を満たす断熱外皮の完成を目指す研究。
3:全国自治体による東日本大震災への支援実態の研究
支援自治体と被災した自治体双方からヒアリングを行い、双方で生じた問題を分析し今後に生かすための研究。一例として、支援側は一日でも早く被災地に物資を届けようと思い込みがちだが、実際は被災側のニーズや優先順位に沿った輸送が欠かせない。被災地ごとに異なるニーズに応じて一端支援物資を仕分ける前哨基地が欠かせない等々...
4:地域型木造復興住宅.生産システムに関する研究
岩手県気仙地区における復興住宅支援の取り組みから極力、地域資源を用いて安価に復興住宅建設に移行するまでのプロセスを通して、さまざまな利害関係者との関係調整やメンタルなコミュニケーションの大切さを明らかにする研究。
5:北海道型ゼロエミッション住宅に関する研究
北海道で現在調達可能なノウハウやマテリアルを用いてエネルギー収支0を目指す住宅の研究。
6:呼吸型ダイナミックインシュレーションの壁構造と省エネ評価に関する研究。
通気性と蓄熱性を兼ね備えた躯体内を通して呼吸するように換気を行う技術の研究。暖房で暖められた室内空気は矩体内を通り抜ける際に熱を残して排気される。反対に冷涼な外気は蓄熱された躯体により熱交換され加温されて室内に給気される。要は外皮のみで断熱と換気を一度に行う技術。
7:パイプ内蓄熱体を用いた熱交換換気装置の評価に関する研究。
上記と関連してパイプ内に通気性と蓄熱性を兼ね備えた素子をおき、その両側でどのように熱交換が行われるのか?また従来型の熱交換換気の性能評価との換算に関する研究。
8:積雪寒冷地における鋼板一体型壁面太陽電池の有効性に関する研究
積雪寒冷地で困るのが太陽光パネルの置き場。屋根面の効率が高いのは分るが積雪や滑落等も心配。そこで各方位別による壁面設置の実態効率を明らかにするとともに、耐熱性の高い太陽光パネルの裏面を外気の予熱経路として利用し発電と熱交換換気を同時に行うモデルの実証実験のレポート。やり方によっては壁面設置でも屋根設置と5%程度しか効率が変わらない方法を
明らかにした。
9:モンゴルにおける高性能集合住宅の研究
経済発展著しいモンゴルではそうした影で深刻な大気汚染に直面している。特に都市部に押し寄せる人々が暮らす地域で暖房用の燃料として使われる石炭の煙が主因と考えられる。集合して住むことと断熱をはじめとする外皮の高性能化で削減できるCO2推定を目的に調査を実施。
写真は各年度ごとの調査研究レポートのバックナンバー。
うーん勉強になります。