2010年12月23日木曜日

無料相談のウソ?ホント?

はじめて家を建てようとするときまず不安に思うのは、最終的にいったいどのくらいの予算がかかるのか?ということではないだろうか?建築家に頼みたいがいきなり契約を求められるのは困るし、気に入った図面ができたとしても工事費をはじくととんでもない金額が出て全体予算が大きく狂い...といった事も現実には聞く話である。そこで皆さんがよく利用するのは○○無料相談コーナー等々という建築家の登場するwebページだったりする。最近はあちこちで見かけるでしょ?私も数社の登録建築家ということになっている?いるようだ????...

なぜこんな曖昧な言い方をするかというと、私の知らない間にweb上にそんなページができていたりするからだ。「えっ?」と驚くことが実に多い今日この頃である。(笑)
まあ~っ...職業建築家として開業している身分なのである程度仕方がないと割り切っている。


話をもとに戻すがこの無料相談というものは基本的に一般論を目的にしていることをぜひ理解していただきたい。たとえば弁護士会や税理士会が社会啓発の目的で行うものは基本的に個々の問題を解決することを目的にしていない。「法定金利に対する正しい知識なしに契約を結ぶのは控えましょう。」とか、「税に対する意識と正しい知識を身に付けましょう。」といった、個々の問題に対する解決の前段に本来の目的がある。しかし困っていれば「無料」の響きにつられて期待したのにがっかり~なんていう人もいるのでご注意願いたい。

内覧会に一度でも来ていただいた方ならば、ブログで読む内容と現場の印象がずいぶん違うことに気がつくはずである。「建築は足を運んで体感しないとわかんないモンですね~。いい意味で(笑)」こんなありがたいお言葉を最近いただいたのだが、これは建築を表す真理である。

最近では予算や要望に土地の形状をweb上のフォームに打ち込むだけで建築家から飛び切りのプランやデザイン画が送られてきそうな怪しげなものも見受けられるが、基本的にまともな建築家が見ず知らずの人の間取りを現地調査や下調べもなくいきなりタダで書くことなどあり得ないのでご注意を願いたい。無料だから~!!な~んて喜んでいると、実は裏がある場合も少なくはないのだから。また総合的な予算の判定には通常下記の資料が必要となることも覚えておくとよいと思う。
敷地の地盤調査データー(ない場合は近隣のデーター)、建てたい建物の規模及び構造の概略、できれば特に譲れない要望がわかるもの(例:二階建は不可、平屋等)、外構工事の概略が分かるもの(車庫の有無、庭や畑の有無)、傾斜地か平地か?傾斜地の場合は前面道路までの土地の高さ。(概ねの高低測量図)そして最後にというかもっとも大切なのがローンの仮審査に合格している事。(最近は民間の住宅ローンが多くそもそも審査に通らない場合もある。)、また勤め人の場合、最近では借りられる最大額は年収の概ね5倍程度が原則。原則というのはたとえば財形貯蓄が貯まっていたり、公務員のように返済上有利な身分と評価されるような場合は例外もあるという意味。最終的には現在の家計的に見て無理なく払える額を総予算に据えると困らない場合が多い。借家に住んでいる人は現在の家賃を毎月の返済に置き換える発想も現実的で賢い方法でお勧めです。


また建築家の中には予算の管理や運用は本来クライアントの責任範疇と割り切っている人もいるので(この考えは原理主義的には正しい。建築家はクライアントの建築的な要望にこたえる事が仕事であって、ファイナンシャルプランナーではない。たとえば医師が医療費を心配して治療に手を抜くことはあり得ないのと同じように建築家が建設費を抑えるために耐震性を犠牲にすることはあってはならない。原理的に言えば士業の仕事は概ねこのパターンが多い。まあ生命と財産に関係ない部分ではクライアントさんとかなり話し合いますけどね...笑)そんな場合、まずは「総予算の相談もできますか?」とざっくばらんに質問してみるのもよいと思う。困るのが駆け引き型、「山本さんはプロだから僕の話で総予算がいくらかくらい見当がつくでしょ?」といったケース。今までの坪単価の平均なら答えられるが、ほとんど初対面で要望や構造、規模もあやふや、土地を見るのも許されず、「あなたの理想の家は○○万円です!」って答えられるほど悪い人にはなりきれない。要は何らかの処方箋は欲しいが診断は後が面倒なので受けたくない。というタイプ。誤解がないように言うが、建築家の家づくりは「求められた分を大切にお作りする。」そこに特徴がある。基本的に在庫を持たないので、いつまでに売らねば。という必要性自体がない。けして上から目線で言っているのではなく、求めに対して真摯にお答えするところが、既に出来合いの製品をさばくスタイルとは基本的に違う点に気付かねば、ありがちなA社VS B社比較スタイルに陥ってしまう。バイクも車も同じガソリンで走る乗り物だが、どちらか選択するには比較するよりも理解することのほうが早道である。そうしないと車は4人乗れるけどバイクは2人しか乗れないから負け。なんて恥ずかしいレベルの迷信ばかりが深まる。バイク乗りの一人として言うが、バイクはその軽快感が魅力そのものである。人数を重視するなら車同士をお勧めする。しかしそうは言っても建築家をどうやって選ぶかも大切だよね~。そこで提案は、少々勇気がいるが会いに行くことだと思う。ASJのイベントや内覧会を見つけてはぜひ出かけていって話しかけてはどうだろう?ほとんどの人が実際に会うと意外や気さくな人が多い。まあ中には例外もいるんだろうけどね...(笑)。しかしそうは言っても一生に一度の家づくり。話しかけるくらいの勇気はもっても損はないのじゃないかとも思うのですが?

最近は無料プランニングの他に土地の高低測量や地盤調査も無料で行います。といったサービス?(実は営業)も多い。敷居を下げる目的のみえみえ営業トークだが、基本的に間取りは設計者の知的な所有物であるし、人を使って測量や調査をさせてすべて無料な訳がない。特に地盤調査は敷地のどの位置に建物を建てるのか概ね決めて、その下を重点的に行わねば意味がない。調査目的が基礎や杭の強度設計だからである。庭や畑の強度を調べてもあまり意味があるとは思えないのだがいかがだろうか?(笑)、こうした本来ならば必要事項の説明後でなければ得られない成果品を安易に受け取ることは消費者として危険だし、知らないうちに断れない立場に陥ることにも注意が必要だ。そもそも人が働いてなぜタダなのか?素朴な疑問をどうかお忘れなきように。