2011年2月15日火曜日

3/4市民セミナーのご案内

本日は、市民セミナーのご案内です。今までブログを読んでいただいた方なら既にご存知と思いますが、北海道の将来に対して住宅の果たすべき役割はたいへん大きいといえるでしょう。人口が急激に減少する中、暮らし部門のCO2排出量が全国平均の1.6倍にも及ぶ北海道。冬場の暖房エネルギーの問題を先送りし続けてきたつけが今来ています。排出権取引の拡大や環境税の導入が本格的に叫ばれる中、ついに札幌市も独自の省エネ基準の策定に乗り出しました。環境的で持続可能な暮らしのために必要な住宅とは?産業と環境の両立は可能か?大胆に暖房エネルギーを削減する暮らしとは?昨年よりブログでおなじみのチーム南あいの里と菊水のメンバーを交え、市民の方、建築関係者、学識者、行政、みんなでこれからの自分の役割を考える集まりにしたいと思っています。ぜひたくさんのみなさんのご来場をお待ちしています。

「ここまでできる!! 北海道の今の家」市民セミナー

『北海道型高性能住宅の方向性
       ~札幌市の取り組み、北方型住宅ECOから読み解く』

■開催日時:3月4日(金)18:00〜20:00

■開催会場:札幌エルプラザ(大ホール)
 札幌市北区北8条西3丁目(JR札幌駅北口より徒歩5分)

■参加対象:市民の方、建築業界関係者

■参加費 :無料

■開催内容:□第一部 「増え続ける北海道のCO2と未来」
               基調講演:「札幌版省エネ住宅基準」について
               検討委員会 繪内正道座長

        □第二部  「行政と民間の取り組み」
               事 例①:札幌・エネルギーecoプロジェクトについて
               札幌市環境局環境都市推進部

               事 例②:北方型住宅ECO
                       「南あいの里プロジェクトの実情」

                ・検証①「目標50万円台」は実現したか?
                ・検証② 地域材活用に光は見えたか?
                ・検証③ 300㎜相当断熱のプロトタイプ化は?
                ・検証④ 超高性能にマッチする暖房機器の選定は?
                ・検証⑤「プロジェクト型」のメリットは?

               事 例③:「菊水プロジェクト」から見えた
                                環境配慮住宅のあり方

■登壇者 :○山本亜耕 氏(山本亜耕建築設計事務所 代表)

        ○サデギアン・モハマッド・タギ 氏
                (タギ建築環境コンサルタント 代表取締役)

        ○武田司 氏(丸稲武田建設 代表取締役)

        ○繪内正道 氏(北海道大学 名誉教授)

      コーディネーター:野島宏利 氏(北海道住宅通信社 代表取締役社長)

■主 催 :北海道環境住宅普及委員会 (ローカルにつくる高性能住宅プロジェクト)

■問い合わせ先(受付窓口):北海道住宅通信社 TEL 011-864-8580






2011年2月14日月曜日

屋根

北海道の屋根は味気ない。
無落雪の平たい陸屋根ばかりだから。
確かに最近は多いかも。しかし30年前はむしろ積極的に屋根を傾けて雪を落とそうとした時代もあった。陸屋根自体が珍しかったこの時代。果たしてなぜ勾配屋根は絶滅の道をたどったのか?聞くも涙、その影には氷柱(つらら)との壮絶な戦いがありました。

写真は有名な小樽運河沿いの軟石倉庫。現在は飲食テナントが多数入っている。当然ながら調理と客が発する熱はこんな風に外部に氷柱として現れる。

写真は南側、日当たりの良い南側よりも北側のほうが圧倒的に氷柱は大きく育ちやすい。

北海道で古い建物が残りづらいのは、寒くて住めない場合が圧倒的に多い。けして古い家の暖房器具が小さく性能も劣るからではない。暖房熱のほとんどは室内を暖めずに屋根を暖めてしまい屋根に積もった雪をゆっくり溶かす。それは氷柱となりトタンとの間で氷の板となり、屋根の上で丈夫な雪の厚い板が出来上がる。氷のそりに乗った雪の板は、昼間の暖気でゆっくり屋根の上を滑る。丈夫なものだから軒先からはねだしても簡単には折れない。ゆっくり巻き込むように折れ曲がりながら二階の窓を簡単に押し破る。果たして屋根を傾けて雨水のごとく粉雪をさらさらと落とすことなど実は至難の業であることが判明する。当初はトタンの材質や勾配の緩さが原因と考えられたが実はまったく見当はずれだった。屋根の勾配を45度以上(オリンピックのスキーコースでも最大斜度は36度程度)にしても、室内の熱が屋根にさえ伝わればまったく雪が落ちないことを目にしてみな唖然とする。人によっては室内の暖房熱が屋根の雪を溶かし雪を落とすことがむしろ建物にとって良いと信じる人も多く。あろうことか屋根を断熱することは当初大いに疑問視された。今でこそ北海道でも勾配屋根の無落雪が可能であるが、その影には断熱の研究と知識が欠かせない。

氷堤と巨大に成長した氷柱。断熱を行わなければ45度以上の屋根勾配でもまったく雪は落ちない。屋根も簡単に傷んでしまう。安心していると暖気で緩んだ拍子に数百キロの氷塊とともに屋根の雪が滑り落ちて壁に深刻なダメージを及ぼす。

2011年2月6日日曜日

菊水の家 温度測定

本日は、菊水の家に温度測定に来ました。各部に自動記録式の温湿度計を置き、北海道の厳寒期に当たる二月の各室の温度と湿度を調べようというものです。なんだか小学校の自由研究のようでもありますが(笑)、こうすることで自らの設計が熱的にうまくいっているのかを検証することが大切なのです。「え~っ!それじゃ山本さん上手くいくかどうかも分からなかったの~??」なんて驚く声も聞こえてきそうですが(笑)...いえいえけして分からないのに設計なんてしません。誤解を解くために言いますが、本来、建物はその敷地の条件によって室内の環境が大きく影響を受けます。日当たりが良い悪い≒冬暖かい寒い等々は北海道の人間ならばおなじみの事柄ですよね。日当たりのよい敷地で当然のようににできたことが、北向き敷地だと支障をきたす。風の穏やかな旭川なら許される作り方も強風地域の岩内なら注意が必要。こんな風にさまざまな設計上の優先順位が絡み合って、その地域ごとに多様な工夫が求められるのです。同じ札幌市内でも風の強い南あいの里地区と周囲に既にたくさんの建物が立ち並び比較的風が穏やかな菊水地区では雪の積もり方や雪庇のでき方が大きく違います。反面、私たちが住まいに求める快適性や健康性は方位や風速に左右されるようでは困ってしまいます。そこで実証検分を通して設計の勘所を絶えず鋭敏に保つ必要があるのです。こんな理由で私が行うことは科学で言うところの基礎研究、「未知なる危険な液体同士を混ぜてみよう。」といった趣旨ではなくむしろ「改良の余地を探す」ことが目的なのです。今後は自然エネルギーのように不安定な熱源や使いすぎると再生不可能になりやすいもの、また従来の電気やガス、灯油を使うにしても以前では考えられなかったほど低燃費が求められます。これは一見するとハイテク技術が主役のように感じられますが、そうした技術を進歩させるためには、牽引力として消費者の高い環境意識が必要です。建築も似ていて、建物全体に大きな影響を及ぼす設計者の意識が新しくないと、大きなエンジンばかりが目立つ設計からなかなか卒業することができません。実に簡単なことなのですが、北海道の建築を進化させるためには消費者の意識に加えて設計者の意識改革も同時に進めなければならないのです。

外部につけた温度計。直射日光を避けて取り付けられている。

腕のように飛び出た部分が温湿度センサー。

熱交換換気装置のある一階にも設置。

2011年2月2日水曜日

現地調査

毎年のことですがこの時期、計画のためにあちこちの敷地通いが日課になります。設計をする上で大切なことに、「敷地をよく知る」ということがあります。当然ながらよい住宅を建てるためには敷地の特性を理解しなくてはなりません。でもどうして何回も通うの??と思う方もきっと中には多いでしょう。その理由は、その敷地の季節ごとの顔を知りたい(知る必要がある)からです。今年は、昨年暮れからの少ない雪に一旦は安心していたところに、想定外の大雪となりました。そこで雪もおさまりからりと晴れた今日の調査の目的は、雪の量、敷地への太陽光の差し方、風向き、雪庇の向きと大きさ、敷地中を歩き回ってどこを居間にしたら気持ちが良いか?、良い風景と悪い風景、一階が居間か?それとも二階か?等々を考えたり確認したりしに行こうと思います。

こんな時のために新年初売りで手に入れた、スノーシューが本領発揮。気持ちよく敷地内を歩き回れます。そうそうぜひみなさんにお勧めしたいのが冬の運動。とはいってもおなじみのスノーボードやゲレンデスキーではなく、このスノーシューを使った冬の野山のトレッキングです。クロスカントリースキーもよいのですが、スノーシューは扱いが簡単なので老若男女だれでも冬の美しい自然や風景を満喫できます。価格もリーズナブルなものだと数千円で手に入るのでほんとうに手軽に始められます。埋まらずどこにでも行けるので楽しくなってついつい30分も歩き回れば全身汗だく。ほんと爽快ですよ~(笑)。


室内に取り込みたい風景。これからずっと向き合ってゆきたい景色がどこにあるのか?そんなことを考えながら、居間の向きや形をあれこれ想像します。

スノーシューを履くと降りたての深雪でもこの通り。靴裏にはアイゼンが装備されていて上りや下りもカンジキより圧倒的に楽ちんです。

本日の現地調査のアシスタントは妻。彼女が履くのはよりヘビーな深雪用。一回り大きなタイプです。なんだかスキーを担いでニセコの山を登りたくなりますね~。(笑)


本日二回目の現場の様子。14:00頃はこんな感じで山の後ろに日が沈みます。

2011年2月1日火曜日

北海道の家は暖かいのだが...

2007年度における北海道の温室効果ガスの排出実態は、13トン/人となり、全国平均に比べ20%以上多い結果となっている。

温室効果ガスの中で最大のものはCO2だが、2003年までは増加傾向にあり、それ以降は横ばいの状態である。

CO2の排出元として主なものは、上から順に産業部門、民生(家庭)部門、運輸部門、民生(業務)部門となっていてこれら4部門で総排出量の90%を占めている。

各部門別のCO2排出量を全国平均と構成比により比較すると、北海道におけるCO2排出元の第二位を占める民生(家庭)部門が大きく、およそ全国の1.6倍のCO2を排出している。

さてみなさんいかがでしたでしょうか?前回は、家全体が暖かく各室の温度差の穏やかな北海道の住宅は、脳疾患による突然死が全国平均を大きく下回る事実を取り上げました。本日はそうした一見暖かく安全な住宅が実は大きな暖房エネルギーに依存していることを述べたいと思います。私たちの身近な省エネの基準としては1999年にできた「次世代省エネ基準」がありますが、残念ながら統計を見る限り、目に見える成果をあげるにはいたらなかったようです。確かに安全であることは最優先されるべき事柄ですが、反面ほとんどの住宅が室内環境は近代的でも燃費に関しては一世代以上前か、オール電化への過度の依存のためにむしろ悪くなっているのが実情です。