2009年10月21日水曜日

銭函の家 ガラス工事

本日はガラス工事です。サッシ工事とどこが違うのか?サッシは枠でガラスは枠の後ということになります。(笑)このガラス工事もたいへんです。北側に広がる美しい石狩湾の眺めを取り込みながら、高い断熱性能も両立せねばならず設計者としても実に頭の痛いところです。そこで最小限の部品でガラスを柱間に貼り付ける方法をとります。前回もお話した通り、サッシの枠はそのままだと大きな熱の逃げ道になります。ガラスをどんどん大きくしてゆくとむしろ熱の逃げ道となる枠自体がないほうが性能上は合理的になりますが、当然それには窓の専門家の高いスキルが要求されます。まさに地元の窓メーカー飯田さんの力の見せ所。特に担当者のWさんは、現場経験も豊富でキュートな女性です。数十枚に渡る、施工図を描き、私の無理な性能要求に答える開口部をデザインしていただきました。

トリプルガラスを柱の間にはめ込もうとしているところ。手前がWさん。3層ガラスともなると、この大きさで重量は125kgにもなります。運搬は当然人力。2階と3階まで男6人で運び上げます。

壁に立てかけたガラス。車のショールームなんかに比べたらたいしたことないけれど作業は見ていてかなり緊張感あります。
2枚のLOW-E(熱反射)ガラスに2層のアルゴンガス+普通ガラスで極限まで窓ガラスの断熱性能を高めます。この状態でK値は0.9W/㎡kくらい、厚さは4cmを超えます。


吹抜け部分にガラスを持ち上げているところ、大の男6人がかりです。

完成寸前の2階のガラススクリーン部分。
学生の頃、寒地住居論という授業で、「北国の住宅の開口部は熱の逃げ道だ」と教わりました。先生によっては、そんな土地柄なのだから窓などは極力小さくするのがよいとおっしゃる方もいました。しかしここ数年は、毎年窓のサイズが大きくなるばかりです。大きな開口部の気持ちよさに慣れるともう小さな窓には戻れません。「小さくすれば悩みもしないのに、大きくするから難しくなる。」なんていう人もいますが、まず性能が大切なのではなくて気持のよい自然さがあって、それを安全に実現させるために技術や性能が必要なのだと思います。カッコだけではかっこよくなく、性能のみでは味気ない。芸術でも科学でもないところに建築の奥深さと難しさを感じます。