2015年1月12日月曜日

宮ノ丘の家Ⅱ 板金工事

風が止むのを待って現在は板金屋さんたちが外壁を納めています。「宮ノ丘の家Ⅱ」の壁は傾斜地側から見ると12mを越えるので板金一枚の長さも同じという事になります。途中でつなぐ事も考えましたがやはり一枚ものは格好が良いですよね~(笑)しかしそれは同時にその長さの鉄板を山上の現場に運び込めるのか?という課題をクリアせねばなりません。先日の積雪で道幅が狭まり、トラックの荷台には積めるものの、肝心のトラックが現場までたどり着けない事が判明。I所長、散々悩んだ末に斜面の下から、雪の上に材料を置き人力で橇(そり)よろしく引っ張り上げることを思いつきました。かくして加工済みの板金のパーツは全て崖下から引き上げられ本日の状態まで来ました。板金を屋根以外の各部に用いるのは北海道の伝統ですが冬場はいろいろと苦労します。

既に東側は完了。難関は北側と南側です。

足場の上からだと吸い込まれそうになります。吊子の巾を狭めて鉄板のぼこぼこ感が最小になるようにしています。従来は厚手の防水紙を板金の下地に使いましたが現在は下地が出にくい薄いものを使います。
 
今日はコルトレーンなんていかが https://www.youtube.com/watch?v=F6bshxncSNw

日経新聞 「日本の住宅なぜ寒い」

この記事を読んで少しづつではありますけど、日本もここまで来たなと感じました。
ブログでも長年お話ししてきたように、断熱は地域を問わず家づくりの大切な柱の一つであって、寒冷地限定のものではありません。地域によってより相応しい方法はありますが、そもそも考えなくてよいというものではありません。インターネットの普及によって手軽に情報に触れる機会は増えましたが、問題なのは、経験不足や誤解、無知などから来る「思い込み」。この「思い込み」は素朴な疑問を封印し素直な「なぜ?」を頭から奪ってしまいます。挙句の果てに自分にとって都合の良い真実ばかりをつなぎ合わせて物事を見る癖がついてしまいます。

たとえば「日本の多くは温暖地であって寒冷地は東北の一部と北海道である。」と日本人の多くは思い込んでいます。 当然、厚い断熱や全室暖房のような特殊な家の造りや設備はそうした厳しく稀な自然環境に対応するもので、それ以外の地域ではそもそも必要がない。こんな落ちが付くことがほとんどです。(笑)

残念ながらこうした不幸な思い込みはまだまだ根強く、断熱のない家では大きな家の一部をあたためることがやっとなのに、この思い込みに囚われていると「使わない部屋の暖房を切っているだけ。」となります。一般に暖房といえば家全体を暖めることであり、当然ながらそれは十分経済的に成されなければ家計の大きな負担になります。しかし思い込みは「そもそも使わない部屋も含めて暖房する事自体おかしい!」となってしまいます。この他にも、「家中を暖かにすると軟弱な人間に育つ」、「そもそも子供は風の子」、「暑さや寒さに耐えることこそ大切な学び」、「寒い部屋で慎ましく生きるのは個人の自由」・・・作り手でさえ「断熱が日本の伝統文化を破壊する」や「断熱が家の寿命を縮める」、おまけに「表現の自由の侵害」や「断熱は憲法違反」なんていうのまであります。

家を作る目的は決してひとつではありませんが、その大切な事柄の一つに、暑さや寒さ風雨や湿度から身を守るものであることは最早、議論の余地がありません。当然ながら外の寒さや暑さから身を守れる空間が居間しかないとか、廊下やホールは通行にしか使わないから寒くて良いといった考え方が正しいものとは言えません。

北海道ではなかなか信じられないことですが、日本の多くの温暖地域で断熱に乏しい家の作りが原因で多くの人が本人もよくその理由を知らぬまま亡くなるのはたいへん残念なことです。反対に北海道の人はなかなか気付きませんが、断熱することが身近にある環境はとても幸せな事ではないでしょうか?ぜひ紙面を読んで感じていただけたら幸いです。

日本経済新聞「日本の住宅なぜ寒い」http://www.nikkei.com/article/DGXKZO81592170W5A100C1TJP001/

実は九州は寒い!北海道人には目からウロコのブログ紹介します。
建築YA「髭」のCOLUMN http://archstudioten.jugem.jp/?eid=6774