2019年5月29日水曜日

桂岡の家 外壁断熱工事

全てのモルタルを剥がし、構造用合板を貼り付けて面剛性を確保しその上から防湿ビニールを貼った南側の壁面。壁面の奥行きが凹凸となり、1階と2階の出入りも異なるので防湿&気密ラインが単純な一直線とはならない。
 
例えば1階の下屋の上にバルコニーが置かれていたり(1階壁面に対して2階壁面が引っ込んでいる場合)、袖壁の左右で外壁の出入り寸法が異なったりといったところが要注意。
 
必ず防湿&気密ラインは連続させるように考えて作業を進めて行きます。
 
 
こちらは外壁のモルタルを残した北側壁面。土台と柱の状態を確認するために水平方向に切れ目を入れて構造を露出させます。
 
一目で見て分かるように壁の黄色のグラスウールと後から床下に詰め込まれたピンク色のグラスウールがつながっていないことが分かります。
 
壁にはきつく気流止めを詰め込んで内部で発生していた壁内気流を確実に止めた上で、新たな断熱層と気密層を既存のモルタル面の上に作って行きます。

写真を見ても分かるように断熱材本来の性能を引き出すためには、その理屈や仕組みを理解し、切れ目なく連続させることがとても大切です。
 
今だからこそ言える話しですが、断熱材単体の性能はそこそこ立派でも50年前の建物の多くはその能力をほとんど引き出せていません。もちろん施工者に悪気がある訳はなく、断熱に対する当時の無知がその原因です。
 
その後1988年から北海道は地域に相応しい仕様の住まいとして「北方型住宅」の建設と普及を始めますが、その時に最初に取り組んだのが断熱の仕組みを理解した設計&施工技術者(BIS)の養成でした。
 
当時の断熱施工の様子を見るとその理由がよく分かります。
 
 
また今までの様子を見ても明らかなように寒い家の断熱構造を入居後にそれも住みながら部分的に直すという発想がどれ程無理筋かもよく分かると思います。
 
実際、住まいにとって断熱構造とは家全体に係わる事柄であり、床だけ、居間と水廻りだけ、窓だけといった部分的に解決することがそもそも難しいものです。
 
古い北海道の家の多くが新築時に断熱工事をしているにも関わらず、後に様々な部分断熱改修を繰り返すケースが多いのも、新築時の断熱がいかに頼りないものであったかを示していますし、それは同時に当初の断熱性能がいかに重要かも今に伝えています。

このまま壁を閉じると壁内が空気の通り道になってしまいます。そこで壁内にぎゅっとグラスウールを詰め込んで空気の通り道を塞ぎます。

壁から上がっていった防湿&気密シートは軒天で水平に折れて屋根の防湿&気密シートと連続させます。
 
今日は80sで行きましょう!