本日も現場めぐりと、細部の打ち合わせで一日が過ぎてゆきます。決めねばならぬことはたくさんありますが、今の時間帯で大切なことは可能性をぎりぎりまで追求しながら優先順位を誤らないことです。納期や製作限界、価格といったある意味支配的な要因といかにうまく付き合い質の高いデザインにできるか否か?設計者にとっては力量が問われる時期でもあります。今回はドアの枠やルーバー、すのこ板、階段に手摺、上がり框にカウンター等々インテリアのあちこちにエコシラ合板(いままでほとんどパルプ材にしか使われなかった道内産の白樺から作った美しい積層合板。オイルで素人でも簡単に塗装仕上げができて、特にその断面の縞模様が美しい。)を使います。近年ではこうした部分はほとんどがナラやニレの集成材で作るのことが多いのですが、南あいの里ではこの美しい材料をどうやって料理するか?を地場の生産者である滝澤ベニヤさんと建具屋さん、武田建設さんと話し合いながら進めます。
滝澤ベニアHP http://www.takizawaveneer.co.jp/
3本引きの建具の鴨居と引き違いの押入れの鴨居。下に見えるのがタモの無垢板。木口側が欠点(あくまで美的な)とならないために、かなり大胆にデザインできる。
拡大した木口部分。材長方向と木口方向がまったく同じ断面模様となるために、これまで必ず必要だった木口処理(隠し)が本質的に必要ない。
建具の枠ばかりではなく、カウンター断面や扉の引き手部分等々色々と使い道を考えると楽しくてアイディアが尽きない。食材の影響か、北海道というとどうしても素材勝負的な印象が強いけれどこうしたエンジニアリングウッドも繊細で美しいと思いませんか?なによりいままでほとんど廃棄物程度にしか思われなかった白樺の新たな価値を私たちに再認識させてはくれないだろうか?このブログの目的は、建築の素人のみなさんにものづくりの面白さや社会とのつながりに少しだけ関心を向けてもらうことだけれど、その一環として素敵な地場の材料を発見し紹介し実際に現場で使ってみる精神を大切にしたいと思います。ブログをお読みの同業のみなさんは私なんかよりずっと上手にデザインしてほしいし、これからマイホームをお考えの方なら、ぜひこうした地元の材料のファンになって応援してほしいと思います。「予算は厳しいけど、人と同じはやだな~。」このせりふは、ユーザーの皆さんにしか言えない。(笑い)みなさんが難しい要望をすることで、私たち作り手側は工夫する頭を維持できるのだから。ものの分かる良いお客がいる地域の作り手は、ほんとうに幸せなのだと思います。ちなみにエコシラ合板のペーパーウッドは2010年グッドデザイン賞を受賞しています。
中:24mmの材料を4層重ね合わせ、太鼓面を取ったカウンター断面。
キッチンの扉も斜め木口+ライン引き手で美しい収まり。