2020年12月10日木曜日

南円山の家Web見学会 その1 外構編

2009年の「銭函の家」から取り組み始めた300mm断熱プロジェクトも今回の「南円山の家」で36棟目となりました。

今年の冬に始まった新型コロナ感染症の大流行により、本来なら2020年12月5日(土)、6日(日)に予定されていた「南円山の家」の見学会は残念ながら中止とさせていただきました。

今年は北海道が30年以上に渡り改良を重ね、地域に相応しい住宅として多くの道民に親しまれている北方型住宅が「北方型住宅2020」としてリニューアルされた年でもあります。もちろん「南円山の家」もその基準を満たす住まいとして設計しました。ここではブログでその設計やデザインに関してお伝えしたいと思います。
「南円山の家」の敷地は道路側の間口が約7.8m、奥行き約18mあります。方位的には南側道路敷地ですが、前面道路幅は4mしかないために冬場の除雪対象とはならなかったり、対向車とすれ違うのも気を使います。

上の写真は夕暮れ時のものですが、近年特に増えている宅配等の車両を横付けできる空間を取りながら、雪になるべく影響されずに玄関まで動線を確保する様に考えました。

また縦格子は高い透過性(眺めの良さ)を確保しながら一転、昼間は優れた視線の遮蔽効果をもたらします。道路正面にあるお向かいの窓が全てこちらを向いていますから室内を明るくしつつも外からの視線はカットするように近年は縦格子を用い、その間隔や寸法を工夫して住まい手の感性にフィットさせています。


このくらいの角度だともう家の中は見えません。手前のお庭は冬囲いの終わったお隣さんのもの。近所は古くからある住宅街で高齢者の方も多い土地柄。住まい手さんのご要望もあって黒い外壁に赤い屋根、そして白の窓廻りで、ちょっと洋風で懐かしい雰囲気のカラーリングとしました。
写真は1950年代の洋風住宅。赤い屋根と黒い壁に白い窓


こちらが昼間の格子の効果。中はほぼ見えません。

エントランスの庇は本来の位置に跳ね出しましたが、壁を約1.8m道路からセットバックさせて車を横付けできる空間を敷地側に確保しています。

夏場は車をこの位置に移動してエントランス内でぜひ家族や友人とジンギスカンを楽しんでほしいと思います。(笑)
もちろん、エントランスに付属する物置は照明付きでウオークイン。炭やヒバサミ、コンロに、焼き網、文化焚きつけに、キャンプ用椅子、テーブル等々・・もちろん内部にコンセントもありますから冷凍ストッカーを内部に常設することも出来ます。秋から冬にかけてお魚も美味しいですし、釣りにも行きたい。そんな風に北海道の暮らしを楽しんでほしいと思います。

お勧めなのはお野菜の保存!ジャガイモや玉ねぎ、キャベツなんかは毎週スーパーで・・ちまちま買っちゃあいけません(笑)。郊外にドライブに出かけた時に10kg単位で買ってきて、古い毛布なんかで包んで保存します。食べきれない人はお友達とシェアしても良し!暖かいところしかない昨今の断熱気密住宅ですがこんな風に半屋外の物置は冬場冷温庫として大活躍します。北海道の冬の味覚、ニシン漬けも凄く美味しくできますよ~(笑)

冬は素敵な寒さを冷蔵庫に使う・・お金も掛からないし、寒さは野菜を甘く美味しく変えてくれますね。

この角度からだとエントランス廻りの様子がよく分かると思います。

ちなみに他の家は電線を直接家の壁から引き込みますが、私は敷地内に専用電柱を立ててそこに、電気メーターをはじめ電線や通信線(光ケーブル等)、BS,地デジアンテナ等をまとめます。こうすることで敷地の中に電線がなくなり空がきれいに見えるようになります。もちろん後々ケーブルTVや新たな通信線を増設する際も壁を傷めることなく簡単に工事ができます。
前面道路はこんな感じ。やはり積雪地域としては狭く、行き来の不便を想定して自らの敷地側に余裕を見込む必要があります。道が狭いと特に電柱と電線が目立ちませんか。EUのように地中埋設してくれるとよいのですが。
こちらが玄関廻り。北国の人間ならピンとくると思いますが、私は学校で習う雪の降らない地域の間取りではなく、北海道に暮らす人が笑顔になる間取り・・すなわち「こういうとこ・・わかってるねえ~」を作りたいと思っています。(笑)暖房と給湯、調理にはガス熱源を使うので不愛想なプロパンボンベを通りから隠しつつ、夏場は自転車置き場、冬場は除雪スコップやママさんダンプ、小型除雪機を格納できるスペースを玄関横に用意しました。
敷地周辺は都市ガス整備エリアですが、あえてプロパンガスを使っています。確かにガス単価は都市ガスに軍配が上がりますが、機器貸与の柔軟性や定期点検、また建物性能を上げることでガス単価の差を割り引いてもプロパンガスが優位になるなど、早くから自由化され灯油共々競争で鍛えられたプロパンガスはひと頃の電力のような供給側優位のエネルギーとは違って交渉のし甲斐のあるエネルギーです。

300mm断熱の家の場合、冬場の光熱費は概ね北海道の一般的な新築の約半分程度ですからどうぞご安心を。(笑)

建物左の砂利敷きの空地は堆雪スペース。前面道路が狭いと除雪車が来てくれませんから、生活道路の確保は基本的に沿線住民の仕事になります。

昔のように灯油が安ければ融雪槽?なんて時代もありましたが・・最近は灯油も高いですし、なにより雪を融かすためだけに貴重な化石燃料を温暖化ガスに変える??なんて時代は既に過去のこと。そこでこうしたスペースを設けて地面に降った雪を移動堆雪して置ける場所を見込んでおきます。

一般的な南側敷地の定番配置は右隣りのチラリと見える建物のように道路側に庭を取りその奥に建物を建てるというものですが・・建物が道路から離れ過ぎるためにそこまでの雪かきが重労働となります。まさに雪のない地域の配置ですね~。そこで私の事務所では建物と道路の間に屋根を掛けて雪は屋根に載せたまま下を通り抜けられるように考えています。

こんな風に玄関を出ると屋根が道まで連続していて雨や雪に当たり難くしています。これだけでも劇的に南側敷地の除雪労働は軽減されます。

冬の除雪を考えても夏のジンギスカンを考えてもこうした北国ならではの半屋外空間はとても大切。家の中は多少小さくしても豊かな半屋外空間で北海道の暮らしを存分に楽しんでほしいと思います。

第一回目は外構編。いきなり間取りを描く前に・・敷地の中に建物をどんな風に置くのか?を主に解説させていただきました。最後までお読みいただきましてありがとうございます。

今日はショパンのエチュードOP10-NO.1演奏者は誰がいいか悩みましたけど・・あえてアシュケナージ・・最高だよ!