ふと気付けば14棟目の300mm断熱の家となる「澄川の家」。また今年も着工のシーズンを迎えることができたことを建て主のみなさまには心より感謝申し上げます。2006年に来道した北欧の建築家のお話を聞いたことがきっかけで、当時の北海道の技術標準で同じ家が出来ると直感し本格的に取り組み始めた「超断熱化住宅」のコンセプト。いざ始めたはよかったが、当初は笑われましたね~北海道でも...(笑)。特に窓と換気は難問で...そんな中、「北欧と同じ窓作ってやるよ!」っていう窓屋さんが現れたり、地熱による給気予熱を研究している先生との出会いから問題が解決したりほんとうに出会いとは不思議なものです。さて今年も現場レポートをはじめましょう!
いよいよ「澄川の家」のアースチューブの埋設工事が始まりました。地盤面から約1mに塩ビ管を埋め、地熱で暖めた外気を導入して計画換気を行います。冬の寒さが厳しい北海道では各地域別に凍結深度が定められていて、比較的温暖な札幌圏でも60cm以上基礎の深さを求められます。実際には基礎底の砕石や何かで80cm以上は根掘りしますから、こうした埋設もあまり苦になりません。冬場は零下の日が続きますが積もった雪は零度以下では最高の断熱材です。雪の深い地域ほど地熱は安定し、外気温にもよりますが札幌近郊だと概ね10~14℃程度で室内に給気されます。一方、外気を直接通すことになる管内は結露時の排水を考えておかねばなりません。模式図通りのアースチューブでは結露水の逃げ場がなく多くの場合水没して空気を遮断してしまいます。
外気をエネルギーを使わず地熱で暖めて換気負荷(冷たい外気を直接入れることで暖房エネルギーが増えること)を下げようという考えは名案ですが、冒頭にも書きました外気の「潜熱(湿り気)対策」と「基礎断熱による床下の室内化」はアースチューブを成功させる上で欠かせない附帯技術です。冷たい床下に湿った生暖かい外気を入れても結露するだけなので、床下に引き込んだ直後に素早く加熱して外気から湿り気(潜熱)を取り除きます。要は床下で外気を温めるために暖房を行うわけですから、床下は外壁に当たる基礎を断熱した暖房空間(屋内)であることが欠かせないのです。
話は変わりますが、近年は公的な仕様書でも床下の防湿が求められコンクリートが全面に打設されますが、床下に適切な換気と熱源を考えておかないと今度はコンクリートの湿気により基礎断熱の床下にカビが発生し易くなります。人がすむ部屋を想像していただければ分るように適切な換気と暖房が室内を結露やカビから守るというのは、床下もまったく同じです。単に基礎に断熱しただけでは、ほんとうの基礎断熱の良さを十分理解し使いこなしているとは言えないのです。
基礎の鉄筋の中に頭を出すアースチューブ。泥や異物が管の中に入らぬようにしっかり養生も完璧です。
今日は「外気の湿り気対策」、「基礎断熱」がアースチューブを成功させる二点セットであるというお話しでしたが今後はこれに「防蟻対策」が加わるでしょう。温暖化により北海道の気候もどんどん変わり、最近では白蟻の被害も増えています。
今日は暑いのでラテンねラテン!松岡直也グループなんていかがでしょう?