昨日は旭川近郊で美しく実りの季節を迎えた田園風景を横目に一日一杯お金のお話しでした。こんな事を書くと誤解されそうですけど、実は建築ってコストの設計(デザイン)が早い時期から欠かせません。見積もりっていうのは、言い換えれば「予算の設計図」で設計者の描く図面(建て主の要望)を具体的にどんな方法で作り、その結果いくら予算が掛かりそうなのかが詳細に書かれたものです。私はクライアントの代理人としてその予算計画書(見積もり)が妥当なものかを検証するとともに、性能や満足度を極力下げずに価格のみ下げるという技能を発揮せねばなりません。
建築の価格というのは研究すればするほど奥深いもので、同じものでも工務店によっては3倍も違うことがあります。その理由も実に様々で、経験のない工事の場合は積算担当者が工事を具体的にイメージできず結果として多すぎる数量を計上してしまう場合。建材店との力関係から他に安い商流の存在に気付きながらもほぼ仕入れの全数が一つの建材店に集中してしまう場合。普段扱わない材料の場合は建材店自体に仕入れ実績がなく、全くの新規取引(口座開設)となることを避けるために取引実績のある会社を複数経由させざるを得ない場合。立場上、安くできると言えない場合。はたまた工事を請け負う各工種に未経験の仕事を頼む場合。地域によって異なる商習慣や商常識の違い・・・etc たとえば札幌では同じ工事が¥○○が相場でも、旭川は違うとか、帯広はまたもっと違う、そんな絡まった価格の糸を根気強く丁寧にほぐしてゆきます。最終的には工務店の仕入れを見直して同じものが従来よりずっと安く仕入れられるようにお手伝いします。その上に設計変更を重ね合わせて費用対効果を最大化します。
例えば、コンクリートの単位価格が札幌より2000円も高く、おまけに凍結深度が20cmも深い旭川では、スカート断熱を用いて札幌と同価格になるまでコンクリート量と凍結深度を軽減します。同じように4回のコンクリートの打設が必要だった基礎の生産工程を2回の打設で終わるように基礎の設計自体を見直します。必要ならば他現場の担当者の意見も取り入れ、異なる視点から品質と価格を徹底的に研ぎ澄まして行きます。
そうして複数の現場協同で生み出した工法や価格調整法といった宝物は図面や資料といった形で保存して、次回の現場に備えてすぐさま実戦投入できるようにしておきます。こうした地道な作業を繰り返して1000万円以上あった価格差を埋めることも時に可能となります。
時にはクライアントさんの協力も凄く大切です。たとえばある建材が今回限りの特値の場合。売り手は納入先に価格を実績として残すことを嫌います。その価格はあくまで今回限りであり、次回から「またそれで」。とはいかないからです。そんな場合はクライアントさんとの直取引という形で特値価格をすっぽり見積もりから引いてしまいます。要は、建物完成後、銀行から融資が降りたらその時に現金でご決済下さい。という約束を売り手、買い手の間でしっかり結んでもらう代りに特値の建材を使えるようにするのです。 今までの300mm断熱の家はすべてこうした地道な工夫のもとに最適価格を原石から削り出すようにしてクライアントさんが買える価格まで調整しました。
まあ~ここまで読んだ人は「山本さんの仕事ってかなり暗いっすね!」と感じたことと思いますがまあ~設計って絵だけじゃないってことで一つよろしくお願いいたします。(笑)
ちなみにお話しがあんまり脂っこかったんで、美しい美瑛の風景写真で中和ってことでお許しください。
今日はベビーメタルでギミチョコ!なんていかが?
https://www.youtube.com/watch?v=WIKqgE4BwAY