2024年11月30日土曜日

福井の家 2024.11.30の様子


本日の「福井の家」の現場は朝から雪。福井地区は地域的に雪の多い西区の中でも山側ですから、私の住む発寒地域に比べると積雪は多い。

何とか本格的な積雪の前に足場を解体すべく、大工さんたちが頑張ってくれたおかげで外壁の押縁まで完了。後は窓周りのシーリングや太陽光パネルの設置を待つばかりです。

外壁の押縁がきれいに施工されています。

こちらは24h換気の排気口。上にちらりと見える四角い方がパッシブ換気の排気口。用途的には同じ計画換気の排気口ですが、24hは機械による換気(3種換気)、パッシブ換気は断熱建物の特性を利用した自然換気となります。

ちなみに日本の法律では計画換気は機械動力を用いたものに限るという決まりがあるので、全国どの住宅現場でも1種~3種の内どれかは機械換気がついています。

なので・・わざわざパッシブ換気まで付ける必要はありません。じゃあなぜ??

理由は簡単で機械換気に対して圧倒的に優れた点があるからです。その一つが何といってもその静粛性。最近のモーターはかなり静かになりましたが、300mm断熱の室内で使うとその小さな音が気になる。高い気密性と超断熱化によって外の音は入ってこない。反面、室内の音は気になるようになります。

仮住まいのころは、エアコンが回っていてもお風呂やWCの換気扇が動きっぱなしでも全然音なんて気にならなかった人が、なぜか300mm断熱の家に越した途端、その静けさに驚く・・

モーターの駆動音がしないパッシブ換気は室内に、住まい手がこれまで経験したことのない静けさを簡単に実現可能というわけなんです。

もう一つの長所が壊れないこと・・どんな機械換気でもいつかは必ず壊れる。永遠に動くモーターや機械はありません。それに対してパッシブ換気は高断熱建物特有の優れた煙突効果がその動力。要は穴が詰まらない限り換気が止まることはありません。

でもね・・せっかくエネルギー(お金)を使って温めた室内の空気をそのまま外にどんどん捨てるなんて勿体ない。そんな風に考える人も多いと思う。要は北国の暖かな室内を満たす空気っていうのはお金が溶けてるのと同じことなんだから。

そこで室内側には湿度に応じて開閉するグリルを取り付けて、不在時(室内空気が乾燥時)は換気量を絞り(省エネ)、反対に在宅時(室内空気の湿度上昇)は換気量を増加させるデマンド制御を組み合わせてある。これにより通常の一種換気と省エネ性は変わらない。

その一方でパッシブ換気の設計には難しさもある。平地のように冬の風向きが一定の地域であればその方向(風下側)に排気口を設けるだけでよい。しかし「福井の家」の敷地は北と西から山が迫る傾斜地。つまりは谷あいに位置している。

その結果、冬場の風向きはかなり複雑で、けして一定ではない。場合によっては排気口から冷気の逆流も想定せざるを得ない。そこで仮に逆流してもストーブの上に冷気が落ちるようにパッシブ換気の排気口の位置を工夫してある。

小屋根の上の雪も原則落ちないように樹脂製の雪止めを取り付ける。

庇の下の水平連続窓の様子


こちらは、屋根に積もった積雪。本格的な降雪期に入ると屋根の上の積雪は軽く1mを超える福井地区。屋根の積雪荷重は概ね15~20tにも及びます。

冬場は正面に見える西側の山から降ろす風が多いが敷地周辺はかなり風向きが変わる難しいロケーション。

冬ですよね~



2024年11月26日火曜日

南幌みどり野0カーボンヴィレッジ2024.11.23


2階まで建ち上がった「南幌の家ZERO」今日は夜半から雪。大工さん5名で頑張っています。

中々の青空なんですが、空気はすでに冬の匂いがします。

ふと見ると・・懐かしい道具小屋が・・ヨシケンさんの土場を受け継いだ紺野建設さん。ヨシケンさんの道具小屋も有効活用している様子。現場経験のある人ならわかると思うけど窓がつくまでの間、構造金物や釘・ビス類をどこに置く?そんな時1帖でもいいから施錠できる場所があるとありがたい。

シンプルな片流れの屋根に厚出の合板を貼って火打ち梁を省略します。

柱脚金物は全数チェックです。

今日はFIVE NEW OLDなんていかが





2024年11月20日水曜日

福井の家 2024.11.20の様子

 

外装の松材が概ね貼り終わった「福井の家」です。

室内では電気配線工事が完了しました。

壁のGWは原設計よりグレードUP。100mm厚(20kg/m3)から106mm厚(32kg/m3)と高性能化しています。

写真は53mm(1層目)をはぐり2層目を確認しているところ。


キッチンの換気扇はおなじみの同時給排タイプ

南東側に迫る隣家の緩衝帯となりつつ、夏はプール遊びやブランコ、もちろんBBQもできちゃうテラス。本来なら隣家と十分離して配置ができるといいのかもしれませんが、札幌市内に、そんな広い宅地は・・もう、なかなかありません。

人によってはテラスをやめればその分、少しでも離れが取れる・・なんて人もいますが実態は逆。わずか2m離したくらいじゃあ状況なんて何ら変わらない。

そこで縦格子で覆って逆に近づけます。

隣家に近づかざるを得ない配置計画の場合は、特にお互いがストレスにならないように何らかのクッションを工夫してあげることがすごく大切。隣家にとっては2階の寝室を覗かれる位置にダイレクトに窓を作られるのと、格子で見え難くカバーしてもらうのでは、たとえ同じ位置に窓が来ても全然、感じる圧は違う。反対に敷地を少しでも有効活用したい建て主側にとっても、先方と摩擦を減らしながら楽しい空間が増えることは一挙両得。

設計って基本は建て主さんの立場に立って事を進めますが、この見る&見られる問題を十分想定して解決策を用意しておくのって実はキモ中のキモなんです。

今日はバンアパなんていかが





2024年11月19日火曜日

南幌みどり野0カーボンヴィレッジ2024.11.19

 

「(仮称)南幌の家ZERO」の本日の様子です。すっかり雪に覆われた現場で本日より大工さん5名で土台敷きを開始しました。

プレカットは(株)ニッショウさん。赤平の工場で加工し現場に運んでいただきました。

玄関ポーチ周りの熱橋対策。基礎断熱で床下を室内とする設計なので、外部の寒さが伝わらぬよう細心の注意を払います。

現場はこんな感じでかなり雪が積もっています。
現場では、建て方を指揮するS棟梁さんより、床を支える鋼製束を濡れた土間にどうやって接着させましょうか?と質問をいただきました。濡れていると接着の力は落ちますから、土間をドライヤーで軽く乾かした後に、ビスも併用して留めつけて頂くようお願いしました。

冬季の施工になりますので建て方が完了し次第、床下が湿気ってしまわぬよう扇風機で空気を通して十分乾燥させます。

今日はアカサカトリオなんていかがでしょう



2024年11月17日日曜日

福井の家 2024.11.17の様子

 

外壁を貼り始めた「福井の家」です。

外装に使うのは地場産の貫材。寸法は幅105mm×厚み18mmの松材になります。全道の材木屋さんで100年以上前より使われてきた寸法と材料なのです。

要は・・そもそもカタログ落ち?モデルチェンジ?とは無縁の材料。きっと材木屋さんという業種が続く限り100年後でも同じ貫材は手に入ります。

何が言いたいのかといえば・・メンテナンスフリーで壊れない外装は?・・というべき終わりなき疑問への当事務所なりの回答なのです。

よく同様の回答に高耐候性鋼板(ガルバリュウム鋼板のような板金外装)を推す人もいますが、色一つとっても100年後に同じものは手に入りません。塗装で比べると建築に対して遥かに手間のかかる車で考えても10年前の車は経年で退色しています。

仮に100年後に新築時と同じ色品番が選べたとしても、既に100年間の色変わりに合う色ではないはずです。

当然ながら新築後に修理が必要になれば、節約も含め部分的に行います。たとえ同じ色でも直した部分は新しく、そうでないところは以前のままですから、必然的に修理痕は目立ちます。状況によっては外装が・・まだら模様になることも考えられます。

結局、物理的な耐久性ばかり高くても外見の印象や質感が既存と大きく違えば、こと修理に関しては使い難い外装とならざるを得ないのです。

まだ部分的にしか傷んでいないのに、全ての壁面を張り替えたり塗り替えたりするのは、個人的にたいへん勿体ないと思います。

写真は現在の外壁の様子です。保護材にどぶ漬けした貫材が白っぽく見えます。意外にもこの状態から数年で大きく色変わりするものの、その後は非常にゆっくりと色変わりするようになるので、数十年経っても外観の印象は変わりません。
上の写真は「西野里山の家2013」の完成直後のものです。

たった1年で、こんな風に変化します。自然にエージングして行くので、一番新しく建った家なのにすぐに周囲に馴染んでしまいます。仮に部分的に外装を貼り直したとしても、数年で馴染んでしまうので修理痕を気にする必要はありません。

そんな風に考えると・・地場産の木材ってすごく良いと思いませんか/笑 もちろん木が嫌いな人にはお薦めしませんし木以外にも良い外装はたくさんあります。その一方で、傷まないものばかり探すのではなく、いつの時代であっても簡単に修理できるものを選ぶという発想もぜひ取り入れてみてはいかがでしょう。

北東側の壁面です。

通りを見渡す北東側の水平連続窓の上には庇が掛かります。

庇に開けられた穴は大屋根の縦樋が貫通する部分。

こちらは薪ストーブの煙突が貫通する眼鏡石の部分です。

今日は葛飾トリオなんていかがでしょう






2024年11月4日月曜日

家具の聖地へ

 
11/3(日)はクライアントさん一家と旭川家具の老舗、匠工芸さんへ、この季節の道北の風景は日本っぽくない。北欧や北米からの観光客の多くが親しみを込めてリピーターとなるのもそんな理由が多いと聞くし、より温暖なアジア地域の人達にとっては明確な四季が楽しめて雪も降る道北圏はきっと楽しみが尽きないのだろうと思う。

自分と匠工芸さんのお付き合いも30年近くになる。旭川での勤め人時代、1件目の勤め先から2件目のアトリエ系事務所に転職した。その時にその事務所で取り組んでいたのが工場と当時の社長のご自宅。

酷寒の冬、高い品質の家具を作るために、工場内は全て床暖房として計画された。

サッシが結露するのを防ぐために、暖かで伸び伸びとした吹き抜けのエントランスを計画するために開口部は全て木製サッシと複層ガラス。

当時、久保木工の木製サッシNTシーザーシリーズは道内最大の生産量を誇っていた。枠材は今は貴重品となったエゾヤマザクラ。小樽のような海沿いの街では磯船にも用いられた水に強い広葉樹。

カラマツ林の中に佇む、当時の社長(現会長)の自宅。家具の作り手は自身の工房の前に住むことが大切という考え。30年を経てただただ美しい。

美しい、籐の背もたれを使った新作。座面は皮革。

抜群の耐久性を誇るペパーコード(紙製テープ)による座面と軽さにこだわった新作。極限まで肉抜きされシンプルな架構とされたフォルムが美しい。

背の快適さのみならず肘置きを重視するのも”匠工芸”のダイニングチェアの愛すべき特色。

匠工芸とは?

今日はモーツァルトですね~素敵な風景に!!





打ち合わせは楽し&我が商店街はグルメタウン/笑

 

11/2(土)はお打ち合わせの後にクライアントさん一家とランチへ・・実は私の事務所のある商店街、地域屈指のグルメタウンでございまして。

すっごい美味しいラーメン屋さん、同じくピザ屋さん、中華屋さん、ケーキ屋さん、焼肉屋さんに食堂&洋食にスープカレーと何でも揃っております。いうまでもなく”まちの巨匠”たちが日々腕を振るう「食のまち」。
自分も、ものづくりの端くれとしていつも刺激を頂いてます。

当事務所もこうした商店街のはずれにございまして、元はご近所の奥さまたちに愛された旧美容室の二階・・

いえづくりを目指すみなさまに、北海道に相応しい住まいを提供することを目的に日々活動をしています。

ご夫婦とお子さま二人で隣町から事務所にお越しいただいたクライアントさん。家づくりに向けた夢や不安に始まり・・今まで渡り歩いてきたハウスメーカーさんや工務店さんのお話し、私がなぜ設計屋を始めたか等々・・よいお話しがたくさんできました。

実は家づくりを目指す人の多くが経験するマリッジブルーならぬ新築ブルー・・

クライアントさんの中には、家づくりを”自分ごと”として受け入れられる人の方が実は少ない。間取りを描いても、資金計画の話しを聞いても今一、しっくり腹落ちしない。まさに雲間から光がさしたり曇ったり・・その心は秋の空。

その理由の多くが・・自身が建築するっていうことに対する基礎知識の乏しさ&不安

よく家づくりは車を買うのと同じ~なーんて人がいるけどそれは違う。
そもそも工業製品である車の基本設計なんて勝手に変更なんてできないし、出来るのはせいぜい表層的なオプションの選択とその価格くらい。それを家づくりと結び付けるのはハウスメーカーの営業さん特有の発想。

実際の家づくりは、今の自身の好みを満たしつつも・・普遍的な必要性に気付けるかどうか?

仮に建て主が30代の価値観で大満足の家を作ったとしても・・住宅ローンを完済するのは70代や80代が当たり前の現在・・普段30~40代の働き盛りとして毎日を精一杯生きるクライアントさんに30年後の自分がリアルに想像できるのか?と問えばそれも無理なお話し・・たまに実家に帰れば無駄な空間ばかりが目立つ親の家なんて、まさに若気の至りそのもの・・

特に、北海道の場合、地元生まれでも雪や寒さを前提とした間取りをよく知らない・・というのが残念ながら衝撃の事実。自分も一級建築士だけど雪と寒さに対する建築は習っていないし試験にも出なかった。

よく、書店で”間取り百貨”や”住まいづくりのコツ”等々の書籍を購入するクライアントさんも多いけど、その多くが雪も降らず氷点下にもなり難い地域で書かれている。すごく賢い人ならその矛盾に気付くかもしれないけど、ほとんどの人は気付くはずもない。

北海道の人って私たちのようなプロも含めて・・その多くが生まれてからこの方・・雪と寒さと共に暮らして来たはずなのに、雪の降らない地域の教科書で新築のイロハを学ぶのは最新のSNSも同じ。そもそも身の回りにある情報が地域に合っていない。これじゃあいつまで経っても北海道に相応しい家なんて難しいよねつーことなんです。

要は家って移動できないからこそ、立地する地域性との向き合い方が大切なのにそこは極端に弱い・・

自分の存在意義ってそんなところに感じてます。少なくとも自分は雪と寒さの専門家でいよう。その貴重な知見を活かして地域の暮らしをより豊かで楽しいものにしよう。都会のみならず田舎に住んでもどこに住んでも北海道に生きることを肯定できる家を作りたい・・・

ZOOMも悪くないけど・・実際の打ち合わせっていいんですよね/笑 あっ!!中華はもち美味しかったです/笑

今日はFive New Oldいいですよね~





南幌みどり野0カーボンヴィレッジ2024.11.04

 

紅葉が深まる中、来年4月の完成に向けて「(仮称)南幌の家ZERO」の工事が始まりました。

地下水位がそこそこ高く、地盤自体の強度にも幅のある南幌の特性から、RC杭による地盤補強を行い。凍結深度GL-600を守って、あえてベーシックな布基礎方式で基礎工事を進めます。

テープによる縦筋ピッチの確認です。

ベース底には水捌けを考えて必要な厚さの砂利層を充填しています。

床下の土間はGL+50mmとして床下への浸水を防止し暖房熱源を納めることで床下のカビや結露をなくします。床下に暖房熱源を持って行くことで床上に暖房器具を置く必要がなくなり、より広い室内が可能となります。

今日はKPOP・・仁美ちゃん頑張ってほしい/笑
でもライブなのに、ここまで歌えるなんてすごい・・





2024年10月30日水曜日

福井の家 上棟式




2024年10月26日(土)快晴の空の下、「福井の家」の上棟式でした。

最近めっきり減ったこの催し、要は期限付きの「建築現場」という臨時会社の株主である建て主が自社の安全とそこで働く人々を労うことを目的に行われる催事。多くの場合、近隣の神社から神官を招き執り行われる神式が多い。

巷では働き方改革が叫ばれ職場環境の改善や子育てに対する理解、復職支援等が盛んに話題になるようになりました。その一方でどんどん減る上棟式。みなさんは自身の家を建ててくれた大工さんの名前を言えますか? 棟梁が誰だか知っていますか?/笑

もちろん、契約上は住宅メーカーや工務店さんに頼むことが多いと思うのですが、実際に現場で働く職人さんにもぜひ目を向けていただきたいです。

みなさんは工務店といえば会社に社員の大工さんがいるのが当たり前だと思っている人も多いですが、実はそうではありません。大手住宅メーカーや工務店さんは主に2種類に分けられます。派遣職員型と正社員型です。前者は現場ごとに大工さんを探して、その都度契約を行います。対する後者は自社で教育した大工職が職員ですから、大工さんの顔触れは毎回決まっています。

私のように毎年数棟、建設をお願いする立場だと、毎回大工さんが入れ替わりやすい派遣職員型の会社か、顔なじみが自然に意図を理解してくれる正社員型かは非常に重要です。

大工さんが居つき難い会社だと社長さんこそ毎度さまでーす・・で始まっても・・現場では昨年と同じ話をまた一から、別の棟梁に話すところから始めねばなりません。

技術というのは直訳すれば「蓄積」で、普段から社内の引継ぎや申し送りが徹底してこそ、その品質やそれを守り続けることのできる再現性が生まれます。

毎年、様々な工務店さんに建設工事をお願いすることが私の仕事ですが、正社員型をお薦めするのはそんな理由からです。

もちろん飛栄建設さんは正社員型の工務店さん。私を担当してくださる棟梁は宇野さん。もう早10年のお付き合いになります。

今日はミサモでnewlook・・安室ちゃんもいいんですけど/笑



2024年10月16日水曜日

福井の家 2024.10.16の様子

 昨日の夜は生憎の雨だったんですけど、今日は暖かな快晴。抜けるような秋空の下、外壁の付加断熱1層目、フェノールフォーム60mmを貼り込みました。実はこの製品、最初に使ったのは2002年ですからもう22年も前になります。初期のものは少々脆くて神経質な印象がありましたが、現在は圧縮強度も上がり木下地で挟み付けても潰れない強度が気に入っています。明日からは二層目の付加断熱として更に60mmを横桟で1層目を抑えながら重ね貼りします。周囲の山が急速に紅葉してきました。こっから先は余談ですが・・屋根の防水はバッチリですね~助かってます。

柱外の耐力面材の外に1層目のフェノールフォーム60mmを貼ったところ。

窓上の下地の奥行きが60mm出ている様子。明日はこの下地と二層目の断熱材が同面となります。

昨日の雨が谷部で薄く溜まっている様子。

シート防水の端部の防水補強です。

今日はFive new oldなんていかがでしょう。




2024年10月14日月曜日

今・・なぜ北方型住宅なのか?

北海道に限らず大人気の南側敷地(南側に道路がある条件の敷地)。ここ数年、宅地価格の上昇が著しい都市圏でも、まだそこまでではない郊外の宅地でも、宅地としての人気度は根強いものがあります。

端的に言えば・・日本人の多くは「南側敷地」が大好きといってよいでしょう。
その理由は意外にもシンプルで上のような配置案が容易に浮かぶからだと思います。

1:建物を北側に寄せることで明るい南側の土地が最大化できる。
  加えてその前面が道路なのでさらにその幅員分も日当たりボーナスとして使える。

2:建物が道路から離れるので道路と家の間に緩衝空間として庭を取ればプライバシーが
  守られ易い。

3:前面通りから見て「庭」、「家」の順に見えるので、住まいに対する日本人の
  伝統的価値観にフィットし易い。

4:角地に次いで土地の評価(主に取引価格)が高い。
確かにその気落ちは分からなくもありませんが・・・道路から建物が奥に配置され易い南側敷地は、日当たりの良さもさることながら同時に駐車場やアプローチの除雪面積が最大化し易い敷地でもあります。

このお話しをすると例外なく驚かれるのですが・・そもそも北海道の内外を問わず、建築士の勉強では「氷点下の環境の建築」は学びません。降雪?積雪?除雪?堆雪?といった単語は氷点下の環境、すなわち寒冷地特有の単語ですから、基本となる建築設計の範疇には含まれません。

当の私も学生時代、製図室の外に深々と降り積もる雪景色を眺めながら、雪のない地域で書かれた教科書や巨匠たちの図面を眺めながら必死にトレース(模写)し模型化していました。意外にも雪を想定した計画ができないと道内では十分な設計などできないことを知ったのは勤め人になってからでした。


恥ずかしながら・・地域で設計者として働きながら・・その地域に相応しい設計が建築士の学びだけでは全く不十分なことを知りました。

当然ながら北海道は寒冷地ですからいくら建築士であっても再教育が必要です。北方型住宅の設計者としてこうした再教育を建築士に求めている理由はこんなところにあります。
何十年と・・雪国に住む私たちは除雪の大変さに悩まされてきました。多雪区域では戸建て住宅に住み続けられない理由の一つに除雪の大変さが上がります。

上の図のように駐車場&アプローチを確保するためにはせっかく南側に取った居間の窓の前にまで雪を積み上げねばいけません。道路の除雪の雪は道路境界上にうずたかく積み上げられ庭木を圧迫し1階の居間の窓から通りを見通すことはどんどん難しくなります。

冬こそ明るく暖かく過ごすことを意図して居間を南に配置したのに・・・
ここで少し視点を変えましょう。

現在は無落雪屋根が一般的になりました。理由は簡単で落雪型の屋根だと大量の重たい雪が落下して危険ですし、隣地に被害を及ぼす可能性も高いからです。親と同様、お隣さんは選べませんから屋根雪が隣地に飛ぶような家づくりをしてしまうと健全な近隣関係が築けません。そこで屋根に積もった雪はそっと触らず載せたままにする無落雪屋根が求められるようになったのです。

上の図は小さな二階の問題を指摘するために作りました。雪のある地域にもかかわらず雪のない地域の視点で考えられることの多かった時代の建物は・・1階の部屋を多めに取りがちなのです。繰り返しになりますが・・積雪がありますから1階の部屋を増やしても、窓は埋もれがちになります。

その結果・・2階に持って行ってもよいとされる部屋は子供部屋や納戸、押し入れのようなものになります。

結果的に1階は広く、2階が狭いアンバランスな面積案分の二階建てが増えるのです。当然ながら、1階の上に2階の壁が載るとは限りません。悪くすれば上の図のように二階の壁の下にはそれを支える柱も壁もほとんど取れない家が多くなります。

これでは地震に対して非常に脆い構造にしかなりませんし、二階の屋根雪の重みも充分に基礎に伝えることはできません。

1階の部屋数を減らし1階壁の上に2階壁が載るように総二階の間取りを目指して、雪の重さにも、地震にも強い家を作るべきです。
長年の刷り込みで・・何となく”いいな”という人が多い南側敷地ですが、実際には冬目線でしっかり検討し設計しないと、長所だと思っていたものの多くが・・実はそうではなかったということになります。

地域に相応しい住まいとして1988年から改良が重ねられてきた北方型住宅を推す理由がここにあります。

道路の雪を除雪車が積み上げれば通りは見えず、雪のない季節は通りからの視線が気になって広間からカーテンは閉めっぱなしになる。あれれ・・庭を楽しむとか居間に光を入れて明るく・・のはずじゃあなかったでしたっけ/笑

駐車場は道路に接続して設けるしかないので、玄関前に置けない場合は除雪箇所が増えてしまう。もちろん駐車場の雪も南側の居室の前に積み上げるしか雪の置き場所がない。

南側敷地が人気の理由が恐らくこれ・・明治期の庭と一体となった間取り。さすがに北海道の家に縁側は既にないが、縁側を取るとほぼ似た考え方の間取りとなる。余談ですが、サザエさんの家も非常に似た間取りです。

様々な家相学や主に当時の衛生上の観点から、南側の居室からトイレや浴室、台所は北側に離して配置される。当然ながら高齢者にとっては寝室からトイレもお風呂も遠い間取りで暮らすこととなる。

日本人の住宅取得年齢は35年ローンが支払える年齢から逆算して概ね30代半ば~40代半ばが多い。要はローン完済時で70~80歳。2020年代の平均寿命は85歳程度と考えれば、余命は概ね5年から15年程度。必ず準備必要です!

寝室と水廻りは隣り合ってないと苦労する。私の設計では寝室の隣に水廻りを設けることが多いのはそうした理由です。

北方型住宅では特定寝室(住まい手が使う主な寝室用途の部屋)と同じ階にトイレの設置を求めています。従来のように2階には寝室だけ、トイレは1階に下りないと使えない。という間取りは基本NGです。

最近採用例が増えている総二階型の間取りの一例。南側に設けたカーポート兼アプローチの中をトンネルのように潜って玄関に至る外部動線としています。

堆雪スペースは庭木が傷まないように宿根草のような草花を増やし植栽の上に堆雪可能な庭として場所を想定しておきます。

LDKは除雪&堆雪で視界と日当たりが奪われぬように二階に配置すします。そこに至る階段に関しては十分緩いものとして、普段の生活に負担にならない程度に階段の上り下りを日常に取り入れます。

2階が居間だと高齢化したら大変という・・意見をよく聞きますが、仮に14~15段の階段の上がり降りさえ難しくなったとしたら・・もう戸建てに住み続けること自体を考え直す時期に来ていると思います。
「発寒の家Ⅳ2023」

各部の動線や設置階、堆雪場所はこんな感じ。

1階のカーポート兼アプローチは北海道人にとって欠かせないBBQ&ジンギスカンスペースとしてもぜひご利用いただきたい。

高木を減らし降雪期には堆雪場所に変わる前庭。「新琴似の家2018」

道内で要望の多い、共働き&車二台分のカーポートを設けて、北海道の住まいのスタンダードを目指した「南幌まちなかの家2018」

外から見ると格子の中から室内はほとんど見えないが、室内から屋外は非常に良く見える。ここまでしないと、カーテンを開けて明るく伸び伸びと、住まい手は住んでくれない。

その一方で、室内の必要はないが、しっかり置き場所を作って上げないと景観や美観を損なうものにも十分な配慮が必要となります。

格子の奥は通りに対して見せたくないプロパンガスの置き場所。夏なら自転車置き場、冬なら除雪道具を仕舞う場所として大活躍します。

調理はガスで暖房給湯は灯油で・・そんな場合はボンベとタンクを道路(サービス動線)に近接させつつ見え難い工夫が大切です。

接地階同士で、一般的な南側間取りと北方型住宅を比較してみました。みなさんならどちらが北海道に適していると思いますか?

無落雪屋根(半年間重たい雪を載せっぱなしにする屋根)その状態で地震が起きた場合、構造的に合理的な設計ができていますか?

今までブログを読んで・・北方型住宅のルールを家づくりに取り入れてみたいと思うけど・・どうやって工務店さんや設計者さんに伝えればいいの? という方は上の技術解説書をお使いください。下記よりフリーダウンロードが可能です。

北方型住宅2020技術解説書

2018年にオープンした「南幌みどり野きた住まいるヴィレッジ」

札幌のベッドタウンとして今や人気の住宅街である南幌町では北方型住宅のルールを守って建てることを条件に様々なメリットが受けられるヴィレッジに多くの人が移住しています。

もちろん、ルールを適用せずに自由に建てられる街区もありますがみなさんはどちらがお好みですか?

こちらは、北方型住宅の最新仕様であるZERO(北方型住宅2020に総エネ設備等更なる環境性能を盛り込んだもの)です。

当事務所も紺野建設さんとコラボしてゼロカーボンヴィレッジに参加しています。

北方型住宅ZEROは全国一の性能を有する住宅仕様です。

今日はアカペラでマイケル・・いいすよ