この度、おかげさまをもちまして無事に「釧路の家」が竣工しお引渡しを終えることができました。工事に係わったすべてのみなさん、職人のみなさん、はじめてのお付き合いにも関わらず立派に仕事を成し遂げていただいた㈱八百坂建設さん、八百坂社長さん、K部長、W所長、KMさん、そして遠く釧路よりご指名をいただきました建て主さまにこの場をお借りして一言御礼申し上げます。たいへん貴重な挑戦の機会をお与えいただき、私にとっても記念すべき釧路で第一棟目の300mm断熱の家になりました。
断熱性を示すUA値は0.21W/㎡K、一次エネルギー(化石エネルギー)の削減率は35%となり5つ星の評価をいただきました。
北海道産の樺(丸太の見た目は白樺/笑)のフロアー。瀧澤ベニヤさんにお願いして作っていただいたバランスの良い床材。製品精度、貼り易さ、形状安定性、堅牢性、価格・・・けして豪華ではないけれどある意味、地元で見慣れた白樺(目白樺、真樺等)という広葉樹を見直すのに十分な品質と意匠性。これを作っていただいたおかげで「昔は地元産のナラやタモなんて捨てるほどあったけど最近は(いいもの)ないねえ~」なーんて渋い顔をされることが少なくなりました。
白樺の木目が美しい「釧路の家」のキッチンはクリナップ㈱直需事業部、石川氏の作品。ご存知同社は全国屈指の水廻りの大メーカー。SSやクリンレディーといったブランド名は誰でも聞いたことがありますよね~。
一方、東京と札幌には規格品ではなく直需事業部と呼ばれるオーダー専門の部隊が存在する。そしてまさにメーカー純正カスタムとも呼べるこうした製品を細部にまでこだわって制作してくれる。
特にLDKの大きな一室空間を好む傾向が強い北海道の住まい手にとって、家族が集まる居間のキッチンはその家の印象を決める大切な舞台装置とも言えるし、主婦(夫)にとっては毎日立つ仕事場でもある。
潜在的に様々な機能やデザインを盛り込みたいという要望は高かったが、石川氏と知り合う前はなかなか繊細に対応することが難しかった。
一方、石川氏との協働を始めた2010年から、すぐに奥様たちの間で大人気となり(笑)今では当事務所のクライアントさんの約8割が石川さんのキッチンの愛用者となっています。
写真のバージョンは中でも人気の高い「シンク対面、ガス背面型」のレイアウトに地元の白樺積層合板(瀧澤ベニヤ)の仕上げ材を貼ったもの。塗装は白樺材の風合いを損なわぬように艶を抑えたウレタン塗装となっている。右側に見えるハンドルを引けば食洗機が使え、左側のシンク前のハンドルを引くと内部は包丁入れに、足元の空間にはごみ箱が格納可能です。
片流れの大屋根はツーバイ材の大垂木工法。平たく言えば、北海道で在来軸組み工法と並んで盛んな枠組み壁工法の床を傾けた作りである。
開拓期に輸入されたバルーン工法(現在のツーバイ工法のご先祖さま)、和風の伝統工法、戦後の住宅不足から生まれた在来軸組工法、補強コンクリートブロック造・・・そのエッセンスを混合して発達してきた北海道らしい小屋組み。もちろん積雪荷重を考慮し通常より25%強度を増した長期優良住宅である。
階段からの見上は規則的に並ぶ大垂木と、これまた地元産のカラマツ材によるインテリア。北海道には白身の強いトドマツの合板や構造材もありますが、個人的には照明に映える赤身の強いものが大好きです。
これから住まい手さんの暮らしの中で味わい深く色変わりして行く様子が楽しみです。冬の前には一度パッシブ換気と暖房の調整に伺おうと思います。それまで少しのお別れ、しっかり住まい手さんを助けてほしいと思いました。
今日はやっぱりモーツァルトが聞きたくなりました。