本日は銭函の家です。空は秋晴れです。
屋根に50cm、壁に35cm、窓は特製のトリプルガラスを用いた銭函の家では南面の3階は、外付けブラインドなしでは暑くてたいへんです。建て主さん曰く「必需品ですねぇ~。かなり使い方に慣れました。」とのことです。全国で最も寒い北海道において、長年の悩み事であった寒さを取り除くと、今度は日射に対する遮熱デザインが俄然大切になってきます。夏至の太陽高度に合わせた庇だけでは、室内に流入する日射量を抑えることはできません。なぜならば夏至以外の日(それが2月であっても)の日射量でさえ室内をオーバーヒートさせるのに十分な熱量になるからです。仮に室内にブラインドを設けると、そのブラインドが加熱して即席のパネルヒーターと化します。日光は遮っても暑さは防げなくなります。物理の時間に習ったように、熱は伝導、対流、放射のどれかで移動をする性質があります。放射熱を運ぶ長い波長の見えない光、すなわち赤外線をいかに室内の外で遮断しその量をコントロールするか。設計者には熱に対する興味と理解が欠かせません。こうした太陽光の入射制御のノウハウが向上すると、放射冷却現象でからりと晴れたすごく寒い朝から太陽光だけで暖かく過ごせる家ができるでしょう。これからの北海道の家には高断熱とともに可変性の高い日射コントロールの工夫を盛り込んでほしいと思います。そしてなにより家人の使いこなす知恵に期待したいと思います。
10月のお昼ごろの影。太陽高度の低い時期に合わせた横長の窓をもっている。北国の太陽は冬場低い高度をほぼ水平に動く。冬場の室内日射量を増やし夏場を減らすためのデザインがこの横長の窓。微調整を外付けブラインドで行う。