2013年9月30日月曜日

「採光と照明のアイディア」

2013年 10月21日 
 
北海道の11月~12月は一年間で最も日を短く感じる季節です。午後3時ともなると、あたりは夕方の風景となり4時を過ぎる頃には暗くなります。ほぼ北海道と似た気候の北欧の国々と比べ一日中夜が続く極夜こそないものの、夜は約14時間にも及び、日の光が恋しくなります。同じ時期に午後5時半を回ってもまだ日没までに余裕のある沖縄と比べると体感的には二時間以上も夜を長く感じます。長い夜は一方で寒さの裏返しでもあり、冬の訪れは暮らしの中で照明と暖房が心と体の癒しとして欠かせなくなる、最も北海道らしい季節でもあります。前回、自然エネルギーを暮らしに生かすために、従来の冬に縛られたものの見方(作り方)から今後は踏み出すことの大切さを、断熱や開口部の工夫を例にお話ししましたがそれらはまさに長い夜と貴重な昼を楽しむことにもつながっています。長い冬の夜を楽しむ照明としてリクエストが多くよく提案するのが、光源を直接見せない間接型の照明計画です。光を壁や天井に反射させ物に輪郭を与えることで、吹き抜けや構造体の存在が認識できるようになると、昼間のように家を広々と感じることができるようになります。特に冬の備えを背景に発達してきた北海道の住いではLDK空間(居間+食堂+台所)を一まとめの空間として南側に設ける場合が多く、そんな家族の大切な空間を長い夜と共に楽しむ提案に潜在的な憧れがあります。さらに降雪期を迎えると、夜の長さは同じでも雪明りで夜を明るく感じるようになります。雪の白さと寒さが産み出す結晶の輝きは、昼夜を問わず光を楽しむ最高の舞台になります。
 
 

屋根を外貼り断熱とし力強い梁を隠すことなく見せることで印象的な街並みの夜景とした。 (2005星置の家)


貴重な太陽光を明るさと熱として生かすために断熱性に優れた大窓は欠かせない。一方夜間はどんなに性能の良い窓も壁にはかなわない。そこで太陽光よろしく照明器具も光と熱を両方使おうと考えた。
 
 
昼間は豊かな日射を取り入れ、夜間は窓辺に発生する下降気流(ダウンドラフト)の緩和を狙った照明計画。冬型の家から一歩踏み出し新たな観点で断熱を増すことで採光をはじめ自然エネルギー利用のポテンシャルも増すが、設計者には従来の設備機器任せとは異なる設計センスが要求される。(2007ニセコの家)
 
 
 
一日中安定した北側の光は最高の自然照明。画家や写真家のなかには良い光を求めて敷地を探す人さえいる。窓の外に陽光で明るく浮かび上がる街並みは生きた風景画として楽しみたい。寒さが気になる北側の大窓も断熱サッシの進化で従来に比べ難しくはない。(2009銭函の家)
 

 
一方、熱取得に優れ、時間により室内の影が刻々と変化し表情豊かな南側の大開口は、明るさと暑さの調整が可能な工夫を加えて楽しみたい。窓の外に間隔や高さを違えて取り付けた縦格子が外部の視線の遮断や積極的な採光を両立させている。  (2012発寒の家)
 
 

 

2013年9月28日土曜日

「自然エネルギーを生かす」

10/7と10/21に北海道新聞に寄稿させていただいた文章が掲載されることになりました。実際に紙面に掲載されるのは文字数を圧縮したものですが、せっかく文章を書いたのでブログには原文を載せておきます。(笑) 
 
3.11以降急速に再生可能な「自然エネルギー」を社会に取り入れる動きに注目が集まるようになりました。太陽光パネルや風車による発電等はその好例といってもよいでしょう。確かに、様々な自然の力を簡単に電気に換える設備と技術は明解で便利という点で、その趣旨を満たすものかもしれません。しかし私たちの周りにはもっと身近で遥かに豊かな自然エネルギーが存在することは意外に知られていません。またそれらを利用するコツや家づくりは冒頭の設備と技術の持つ華々しさに比べると残念ながら地味な存在です。今日はそんな地味な自然エネルギーをご紹介します。(笑) 

 北海道は北緯43°~44°に位置し冬の厳しさはあるものの、似た気候の国々と比べて遥かに日照に恵まれています。驚くべきことに建物の熱ロスを抑え窓廻りを適切に設計(工夫)すると、年間に必要な暖房エネルギーの3割以上は日射でまかなえるほどです。要は残り7割弱をいかに融通すればよいかで、本来必要な断熱を施せば、家電や調理、人体や照明さえ無視できない暖房熱源に変わります。実は本当に必要な暖房エネルギーとは日射とそれらを差し引いた残りでよく、40坪程度の家なら、厳寒期の全館暖房に要する熱量は余裕を見ても2~3kw/h(カセットコンロ1台程度)で十分です。
        
南側の大開口を夏の強い日射から守る外付けブラインド高断熱建物を日射遮蔽すると、真夏に窓を閉めていたほうが涼しくなる。                   (2010年菊水の家)

太陽光は光と熱が混ざりあった高度なエネルギーですがそれをわざわざ一度電気に変換するのではなく、手っ取り早くそのまま「明るさ」と「暖かさ」として使います。日光の特徴はものに当たると熱に変わることですから設計者の役割はせっかく室内に取り込んだ熱を逃がさぬよう断熱や蓄熱性の高い素材を選んだり、逆に暑くなり過ぎぬよう窓廻りを工夫することです。特にこうした開口部の工夫は日射遮蔽と呼ばれ主に温暖地域で発達してきましたが最近はこれらに冬を背景にした断熱を加え、1年を通じ穏やかでヒートショックの少ない省(小?)エネな家ができるようになりました。温暖地と寒冷地の考え方を上手に融合することで、最大の自然エネルギーである太陽光を発電とは違なる視点でより簡単に暮らしに生かすことができます。
 
 暖房シーズンの室内と屋外には大きな「内外温度差」ができますがこれも有効な自然エネルギーです。断熱気密した建物で冬、同時に1.2階の窓を開けると煙突効果で一気に屋外の空気に入れ替わります。暖かい空気が上階の窓から逃げる分、下階に冷気を引き込むのですが、これを少しずつゆっくりと、引き込む冷気を暖めながら行うと、「パッシブ換気」と呼ばれる優れた換気暖房になります。特徴は暖房と換気を一度に行えることと従来はそれぞれに必用だった専用設備がほぼ必用なくなること、なんと言っても年間を通して換気用に連続運転していたモーターファンとその電源が煙突効果と引き換えに必用なくなることです。
      
しっかり断熱された床下に少量ずつ引き込まれた新鮮外気はこれまた小さなヒーターで予熱され軽くなります。暖かく軽くなった新鮮外気は家中に暖房熱を届けると同時に換気も行い最後は排気口から外部に排出されます。

 「冬の寒さ」もたいへん素晴らしい自然エネルギーです。しっかり断熱材と断熱扉で区画された冷温庫を家の一角に作るとこの素晴らしさを自在に生かすことができます。特に冬場、凍らない程度の低温と湿度は野菜の甘みを増し葉物野菜は驚くほど長くその鮮度を保ちます。お肉やお魚はもちろんお父さんのビールやお母さんのワインもいつだって美味しく冷えていますし、結果的に今までの電気冷蔵庫の役割は冷凍と製氷くらいになってしまいます。夏季こそ必須な冷蔵庫も冬場は自然の寒さにお任せすればその必要性事態が薄れます。しかしこの冷温庫の素晴らしさは実は保存だけではありません。寒さを生かすことは、発酵や醸造といった高度な調理を手軽に行える環境が身近になることを意味します。従来の家中暖かい家では不可能だった様々なお漬物も簡単に作ることができるようになります。保存と熟成、乳酸発酵による調理まで可能にする寒さとはなんと素晴らしいものだと思います。
 

断熱され屋内、屋外から使える冷温庫。冬場は冷蔵庫の必要性が極端に薄れる。(2012年発寒の家)

 現在、高断熱高気密と呼ばれ広く普及している北海道の建物の多くは残念ながら、身近な自然エネルギーを暮らしに使い楽しむためには不十分です。一般的にこうした建物の断熱コストは総工費の2%程度で比較的良いものでさえ厚さ約15~20cmのグラスウールを壁に用いるくらいです。これは依然、寒さの対処療法として消極的に断熱を捉える意識だと思いますが、今や断熱は季節を問わず自然エネルギーを生かす暮らしに欠かせない設え(しつらえ)と捉え直すべきでしょう。せめて倍の厚さの断熱材を使うことが早く、当たり前になってほしいと思います。



中学校の学校祭

昨日は、次男の学校祭。中学校ともなるとなかなか気合の入った展示を見せるようになる。写真は部屋の照明をブラックライトとし蛍光のシールが輝く効果を狙った展示。一時期、クラブ↓(お姉ちゃんのほうじゃなくてダンスのほう/笑)や流行のショットバーなんかで使った時代があるけどこんな風に星空や地球に使うのもまた新鮮!なかなかにかっこよかったです!

ブラックライトは、白いシャツなんかも青白く映し出す。

こちらは海を題材にした展示スペース。手前に見えるのは巨大なジンベエザメ。

ものづくりの街、発寒の子供たちらしく作りものが多くて楽しい。ちなみにこの巨大なジンベイザメは発泡スチロールを根性で削り出したもの(笑)。きっと全身、真っ白になりながらの大奮闘、作った人はほんとうにごくろうさま!(笑)

炊事遠足のときの心境を詠った次男の句、他の子達が定番のカレーとシチューと豚汁で攻める中最後まで「俺はギョーザが食べたい!」と貫いた根性はまあ今日の所は褒めておこう!しかし「おいしくてかたずけがはかどる」とはいかがな意味か?すぐになくなり皿が空の状態を指しているのか?まあいづれにせよ、「かたずけ」ではなく「かたづけ」が正解なことも本人に伝えておこう。(笑)

会場で貴重な戦力になると同時に今回はメイド風のいでたちで登場のお母さま(お姉さま)たち。小学校ともども、学校イベントには一緒に参加する保護者の協力が欠かせません。
心よりごくろうさまです。

屯田の家 内覧会を終えて

お忙しいスケジュールの中、内覧会にお越しいただきましたみなさま、また快く現場をお貸しいただいた建て主さまにもこの場をお借りして御礼申し上げます。なんとかブラインドが間に合い無事お引渡しできました。今は充実感一杯、みなさまほんとうにごくろうさまです。まだ外構が残っていますが、これからがとても楽しみです。

もうすぐ、お引越し。ご家族のお役に立って愛される家になりますように。
心よりお祈り申し上げます。
 
今日は心を込めてみなさんに大好きなキーシンをお贈りします。
もちろんレパートリーはショパンで!(笑)
 
 

2013年9月24日火曜日

西野里山の家 基礎散水養生

今年の北海道はほんとうに異常な気象が続いています。8月の中旬からは、毎度のゲリラ豪雨と蒸し蒸しした日が続き、9月の中旬に入り、雨は減りましたが日中30℃になる日なんていうのもありました。こんな時は少しコンクリートに気を使ってあげたいものです。剛建築工房のI所長自ら散水をしてコンクリートが天日で急激に乾燥しないように養生をします。(住宅の基礎部分は従来からコンクリート造でありながら、コンクリート造用の仕様書が適用されない等、素朴な疑問もありました。(笑) したがって「うちはそんなもんしてないよ!っていう作り手がいても、それは仕方のないことでもあるのです。)
 

この日も薄曇りながら、けっこうじりじり。

基礎は今後のことも考えて、かなりオーバースペックな防蟻処理を行っています。現在はまだ北海道の住宅にシロアリ対策は求められていませんが、今後はどうなるのでしょう?

2013年9月23日月曜日

屯田の家 気密測定二回目

内覧会の前日に行われた、最後の気密測定。登場したのはお馴染みのDr.タギ氏。
超高気密建物(C値で0.5cm2/㎡以下)専用の小さなラッパ(吸出し口)を取り付けた愛用の測定機器で計測した結果は、現場に立ち会った全員を満足させるものでした。

右上の数字が、家全体の隙間量を示しています。数値は21cm2/㎡つまり、家全体の隙間を集めると4.5cm角の大きさしかないということ。C値に直すと0.1cm2/㎡。一般的に、標準的な機材と測定技量の持ち主で、正確に計測できる限界が概ね0.5近辺。それを下回るような領域の測定は前述のような工夫が必要とされています。そんな意味でも漏気によるエネルギーのロスは極端に少ない結果となりました。

結果を眺めながら、満足そうなDr.タギ氏。「チーム屯田」全員の経験値がよい成果を生むようになって私もほんとうに嬉しく思います。客観的に毎回気密を計るってとても大切でなんですよね。(笑)



2013年9月18日水曜日

屯田の家 内覧会について


かねてより、チーム一丸となって取り組んでまいりました「屯田の家」(平成24年度地域型住宅ブランド化事業)がおかげさまを持ちまして竣工を迎えます。事業の趣旨を踏まえ見学会は行わせていただきますが、諸般の理由により今回は9/22(日)、ご来場は事前にお申し込みをいただいた方に限らせていただきますので予めご了承下さい。

■見学をご希望の方(北方型住宅ECO推進協議会HP、北方型住宅HPをご覧の方々も同じ)

1:住所、2:氏名、3:ご連絡先(携帯でも可)を記入いただき下記のアドレスまでお送り下さい。
確認の後、ご案内と地図を返信させていただきます。

連絡先 teste-ako.ao@dream.com(誤送信防止のためteste-以降のアドレスをお使い下さい。)

*:いただいた個人情報はご本人様確認以外には使用いたしません。

■おねがい

おかげさまで、最近の内覧会には100名を超えるご来場をいただくようになりました。これもひとえにチーム全員の活躍を楽しみにしていただいているみなさんのおかげと心より感謝する次第です。しかしその一方で近隣とのトラブル(違法駐車、ゴミ、タバコ等)もちらほら見られるようになりました。残念!(もちろん少数の心ない人の仕業ですが/笑) 私たち地域の作り手に興味をもっていただき、貴重なお時間を割いてまでご来場いただくことは嬉しい限りですし、事業趣旨を尊重することももちろんですが、今回はぜひこうした現状を踏まえご理解をいただければ幸いです。ハードルを上げることはけして本意ではありませんが、たとえ人数は減っても実りのある楽しい見学会を目指してまいりますのでどうぞよろしくおねがいいたします。 ぺこり

                          「チーム屯田」プロジェクトマネージャー  山本亜耕




2013年9月16日月曜日

ありがとう!そして ごくろうさま!(笑)

以前、小学校のPTAの役員をしていることを書きました。運動会や社会見学等々...毎年、お約束のイベントの数々は学生時代の楽しい想い出ですよね~。今日はもうすぐそこまで近づいた「ふれあい祭り」のお話し。 以前は、学芸会とか文化祭なんて言われた時代もありましたけど、最近は「ふれあい祭り」と呼ぶのが小学校では多いようです。各学校で色々な特色があり、なんといっても保護者も参加して会場を設営するさまざまな出し物(アトラクション)、食事やおやつのメニュー、ゲームの景品...等々、この時期は保護者と教職員のみなさん一帯となって準備に勤しむのが例年の風景です。

男の子たちに大人気のちゃんばら用の剣や、女の子の目が輝くかわいいビーズの飾りものの数々。昼間からお母さんたちが学校に通い、一品一品全て手作りします。子供たちの意見を取り入れて長年にわたり改良されてきたその品々は、身のまわりのペットボトルやビニールテープ、マジックペンや折り紙で出来てはいても、その精巧さと細やかさはそう簡単に真似出来るものではありません。たとえば剣の鍔(つば)の縁にまかれたビニールテープは、ちゃんばらに夢中になった子供たちが剣を強く握ったときに縁で手を切らないような配慮ですし、らせん状に巻かれたテープは色違いの楽しいデザインでありながら剣の芯に適度な強度と柔軟性を与え、ぽきりと折れるのを防ぎます。代々PTAの会員から少しづつ改良され継承されてきた手業(てわざ)の数々が実はお祭りの土台を支えています。

必用となる景品や学校中の飾りつけの数は毎年膨大! えーっ!こんなに~!!
 
この場をお借りして、お手伝いいただいたみなさんに、心より御礼申し上げます。子供たちの笑顔のために毎年、お手伝いいただく皆さんなくして本校の「ふれあい祭り」はありません。僅か数時間のお祭りとはいえ、手間隙を惜しまず打ち込む姿は、まさにものづくりの街、発寒っぽさ満載ですよね~(笑)。 みなさん凄い!

まさに昔、社会で習った家内制手工業よろしく、お手本を見ながら皆で分業します。

剣作りの様子。丸いペットボトルと四角いペットボトルで鍔の形状が違うんですよ~。
 
今日はそんなみなさまに、ユーミンを贈ります。 心よりありがとう!(笑)
 
 

2013年9月15日日曜日

屯田の家 内外装工事 追い込み

住宅街に個性的なシルエットを現した「屯田の家」。外壁は道南産の杉材を安全に防腐処理したもの。経年で美しいグレー色に変色します。一枚一枚の板がとても個性的であることが分かります。近年の工業化された規格性や均質性とは正反対の美学ですよね~。(笑)

不思議なことに、昔はありふれていたはずの、こうした方法が僅かの間にすっかり廃れてしまい。それが逆に住宅街では新鮮な存在感を感じます。

最近は、外壁を全て大工さんが仕上げることは稀になりました。しかし「屯田の家」の現場では最後まで大工さんが花形! 棟梁、いまひとつよろしくお願いいたします。

外壁の板のつなぎ目に使う、杉材の押し縁(おしぶち)。

今回は障子の格子は和風の組子。上下に結露止めのスリットが入るお馴染みのディテール。

寸高の天井までの引き戸が通常の高さの引き戸にかぶさる部分。

頭が重く見えぬようにレールを極力、天井に埋め込みます。
 
今日は手嶌葵さんなんていかが(笑)

2013年9月11日水曜日

屯田の家 内装工事 什器搬入

現在、「屯田の家」ではクロス屋さん、塗装屋さん、タイル屋さん、流し屋さん、電気屋さんが入れ替わり立ち代り見事なチームワーク。もう少しするとガス屋さんも入ってきます。設計者の頭の中にしかなかった風景が一気に目に見えるようになる時期です。この時間帯は各部の取り合いや先読みをきかせた交通整理が特に大切になります。

写真はタイルを貼り付けた壁ですが、仮に壁付けの照明を変更しようとする場合は、新たに移す位置の下地の追加、そこまでの配線の引き回し、スイッチ回路の使える使えない、タイル補修といった事柄を同時に処理しないと完成度の高い仕上がりにはなりません。以前の経験ですが、普段からめったに現場に現れず、来たと思ったらその場の雰囲気で変更を次々に指示する売れっ子のデザイナーの仕事を見たことがありました。 パッと見! たいへんセンスよく納まっているように見えますがよく各部分の取り合いを見てゆくと雑な感じが否めません。きっと主な仕上げや仕様を急遽変更したために廻りの関連部分が追いつかず、やっつけ仕事にならざるを得なかったのが一目で分かります。彼に後から恐る恐るそのことを質すと、にやりと笑いながら「店に来る人にとって僕が用意しなきゃいけないのは非日常性だからね~」とあっさり返されました。確かに店舗という非日常性を売り物にする空間においては彼の言う通りだな~と妙に納得してしまったのを想い出します。流行の店にとって奇抜さやモードのもたらす新しさに背を向けることは逆に作り手にとって自らの責任からの逃避につながるのではないか?当事はそんな風に思いました。 後になって、住宅のように毎日使う空間は同じ内装でも基本的なアプローチからして違うのだと、また別の建築家から学びました。彼曰く「ご飯やパンみたいに美味しいけど毎日食べられるものとそうじゃないものがあるよね?住宅なら間違いなく前者のデザインだよね。奇抜さはいらないけど、さりげなさやアクのなさ、一見あっさりしていてもよくよく目を凝らすとしっかり作り込んでるよね~みたいな丁寧さが家には大切なのよ~」またまた妙に納得してしまったのですがさて皆さんならどっちのデザインアプローチが好きですか~? ちなみに両巨匠とも私は大好きです。(笑)

 
天井の中に壁が吸い込まれるように見せる目透かし納め。照明を付けると壁と天井の存在感が際立ちます。建築家によっては目透かしナシで納める人もいて好みが分かれるところです。
 
 

美しく並んだ二階の根太と梁、通常ならば天井に隠れてしまう構造部分を先にデザインしておいて部分的に、ちら見せする手法です。

玄関ドアを空けると正面に見える風景。右が玄関収納なのですが白く塗ることで壁に化けさせ存在感を消しています。反対にある壁はアルダー材を貼り存在感を際立たせながら足元と天井際を空けて空気の流れと空間の連続性を狙っています。白く広い天井面が視線を板壁の左側に引き込んで行くのがおわかりでしょうか、こんな手がかりを残すと玄関が単なる狭い空間にはなりません。

ボイラーのリモコンやスイッチ、インターホン等は居間からは見えない位置に取り付けます。

キッチン側から見た食器棚。ビシッと建築と溶け合っていい感じです。


こちらは長さ3.6mのステンレスの一枚天板の取り付けの様子、重くて高価な部分なので現場には瞬時に緊張感が漂います。
 
 
こちらは塔屋の杉板貼の様子。もう少しですね~(笑)
 
今日は、布袋さんとCharさんのギターバトル!
このV見て思うのは...やっぱりセンスとテクニックがないといけませんよね~(笑)
自戒を込めて!

西野里山の家 基礎工事

一気にコンクリート打設まで工程を進めた、「西野里山の家」。それにしてもなんだか早いな~とお思いの方も多いことでしょう。そう西野地区は地盤のたいへんよい敷地が多く、杭や地盤改質工事の心配がほとんどありません。そんなこともあって基礎工事がたいへん早く進みます。
 

川沿いなので工事の様子がよく見えます。
 
今日は郷ひろみ(笑)!でも今までのバージョンじゃなくて雅(MIYABI)のギターとのコラボ。
 

屯田の家 内装工事

チーム全員の努力のおかげで、快調に進む「屯田の家」の内装工事。特徴的な天井廻りや開放的な階段の様子がだんだん分かるようになってきました。1階に20畳という大きなLDKを持つ「屯田の家」。L(居間)とD+K(食堂、台所)は写真の壁でやんわりと仕切られています。大きな部屋を作る際に大切なのが面積と天井高さの関係。簡単に言えば大きな部屋ほど、天井高さも高くしないと、なんだかちんちくりんの印象に見えてしまいます。反面、むやみに高すぎる天井は、暖房エネルギーが増大したり、対流が起きて落ち着かなかったりと、いろいろと困り事も生じます。「屯田の家」ではこの天井高を落ち着き感のある2.2mから、広々感を感じる2.7mまで適材適所に割り振り、空間に変化を持たせつつ、暖房エネルギーの削減やパッシブ換気に取り組んでいます。

パッシブ換気を採用しつつも、間取り的には各部屋が建具と壁で区画される、オーソドックスな部屋割りが特徴の「屯田の家」、パッシブ換気がその特性上、一体的空間で効果を発揮しやすいのに対し、対照的な間取りとなってしまいます。そこでパッシブ換気の効果がスポイル(阻害)されないように、欄間(間仕切壁と天井の間に隙間を設けること)を適宜行って、空気の流れと視覚的な連続感をさりげなく両立させるようにしています。まあ~いろいろ考え方はあるのでしょうが、私の場合はこうした矛盾する要件を両立することが求められた場合は協力、自然に見せながら解決するように意識しています。ぱっと見!目立つデザインの方が褒められることが多いこの世界ですけど、言われないと分からないように作ることも実は大切なのです。

外壁の杉板の様子。昨年の「前田の家」から気に入っている木材用保護剤で処理した杉材を貼り込んでゆきます。印象は年を経るごとに美しいグレーに味わい深く変色する木肌が楽しめるもの。どうしても着色だと塗りたてが一番でだんだんに色抜けしますけど、この保護材は逆。日本人好みかもしれません。

パッシブ換気の排気経路も兼ねる2階のWCの天井。空気の動きを邪魔しないように、またスノコの上に乗って排気口のメンテナンスに困らないようにこんな風にスノコ天井としています。

2階の洗面所からは塔屋に登れるように、また自然光を階下に落とすように考えています。壁に十分な窓がとりにくい間取りや、外壁に面して部屋がとりにくい場合は重宝する工夫です。

本棚の足元を空けて空気のリターン(回収)経路とします。
 

2階の建具は基本的に天井と同じ高さ。開放すると空間が一体になります。

壁内に納まる3枚引き込み戸。

西側の杉板貼りはずいぶんと進行いたしました。さてあともう一息!
みなさん頑張りましょう!(笑)