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2016年12月29日木曜日

「箱の家」をお手伝いする その4

12/10(土)久しぶりに難波和彦さんよりメールが届く。江別の「157S邸」の基本計画を煮つめる上でのアドバイスの依頼。クライアントに指摘されたことにはじまり、初めての北海道プロジェクトとあってかたくさんの質問をいただいた。

実はこの12/10から12/26(月)までに実に11回のメールでのやり取りが続いている。不思議なことにご本人の口から「やり取りを深めてみてますます「箱の家」らしくなってきた。」との言葉をいただいた時には安堵が半分少し意外な気もした。

私の勝手な印象で恐縮だが難波和彦さんは自らの作風を振り回すタイプの建築家ではない。静かに建築の成り立ちを観察しその振る舞いや仕組みを読み解くことを信条としているように見える。自らの建築に注ぐに等しい興味を周囲の建築に注ぐスタンスは巷でいうデザイナーズ建築家像とは全く異質なものだった。

具体的には難波さん側で作成した計画図を挟んでまずは、北海道目線での問題の抽出や双方の設計常識の差を埋めるべく合意の共有を行う。雪の話し、屋根型の話し、雨水と落雪の話し、換気や断熱構造の話し、構造やコストの話し・・・・・対話の中で生まれた興味はブログを更新する動機ともなった。

お互いにやり取りをして気付いたのは、私自身、普段何気なく行っていることの理由を説明するために多くの時間を必要とした。という笑えない事実だった。設計というのは不思議なもので、結果と解決の方法論さえ覚えてしまえば、その問題がそもそもなぜ生じたのか?とか、なぜそれ以外の方法では難しかったのか?と言ったそもそもの動機?は急速に忘れ去られてしまう。あまり良くない方法とその訳を憶えておくより、確実な方法を一つ覚える方が作り手にとって遥かに楽だからだ。

以前の投稿でも述べたように、私の役割は現地の技術アシスタントとして北海道で最初の「箱の家」を無事完成に導くお手伝いである。北国のレンズを通った箱の家がどんな風に出来上がるのか、今から楽しみである。

今日はリシッツアのワルトシュタインで
https://www.youtube.com/watch?v=wSs-2NDG4Ao

2016年7月23日土曜日

「箱の家」をお手伝いする その3

昨日、難波和彦さんよりメールが入る。内容は建て主さんがプロパンの燃料単価の高さを気にしている点と断熱は暖房負荷の低減には有効でも給湯には無関係なのではないか?との疑問に対するものだった。

まずプロパンガスの単価については昨年完成した家の実績データー(検針レシート)を送る。夫婦と小さな子供たちの4人家族くらいであれば、暖房(温水セントラル)+給湯+調理を合計し、最も寒い1月、2月であっても約2万円程度/月で済むこと。北海道は昔から灯油、電気、ガス(LPG、都市ガス)のエネルギー事業者が凌ぎを削ってきた地域であり、建て主さんがプロパンに対して前向きな印象が持てないようなら別の熱源でも同じことが可能なことをお伝えする。


断熱と給湯負荷の関係性については、そもそも本州地域で断熱なし、暖房なしの寒い浴室を使用する際にヒートショックを起こさぬために入浴前に床や壁を温水で温めるよう地元の保健所や行政が指導している事実から、断熱による室温の上昇が給湯負荷の増減には影響しないという指摘は当たらない旨お伝えする。事実、断熱性に乏しい浴室は使用前に床や壁を温水で予熱する必要があるし、浴槽のお湯も冷めやすいので頻繁に足し湯や追い焚きも必用になる。要するに本来、断熱されていれば生じない暖房負荷を無意識に給湯負荷を増やして補わざるを得ない構造が一般に多い。話は変わるが、住まいに断熱を浸透させ、浴室環境を暖かなものに改善したなら、冬場の給水温度の高さ(冬場の水道水の温度が北海道と本州ではぜんぜん違う)と合わせて本州の住まいの給湯負荷はもう少し下げることが可能なのかもしれない。もちろんこの際、給湯器を屋外設置する設計も改められるとよいと思う。一方、既に断熱済みの北海道は冬場、一桁台まで下がる水道水の温度を何らかの工夫で予熱するか、機器の更なる効率向上に期待するしかない。今まで圧倒的な暖房負荷の影に隠れてきたが考えてみるとなかなか悩ましい。


2016年7月18日月曜日

「箱の家」をお手伝いする その2

7/16(土)、7/18(月)と難波和彦さんからメールが入る。土曜はここ最近の札幌の建設物価について、また「箱の家」に使っているという水の蓄熱性を利用した床暖房について。月曜は札幌近郊で一般的な冷暖房方式とその詳細について。

建設物価に関しては東京ほどではなくともけして安くはなっていないこと、東京とは安さ(ローコスト設計)の勘所がかなり異なる地域であること、また床下に大量の水パックを設置するシステムに対しては難波さんご自身が心配されるように「たとえ基礎断熱が前提であっても凍結の心配が皆無とは言い切れないでしょう。」とお伝えする。もちろん現地アシスタントとしてあれもこれも不可のような言動は作り手のモチベーションを下げるばかりで建設的とは言い難い。「代替案を提案します。」と付け加える。床までの大きな開口部が魅力的な「箱の家」に野暮ったい窓下の放熱器など論外だろうし、寒さや暖房負荷を理由に部屋を細かく間仕切るなどすれば既にそれを「箱の家」とは呼べないだろう。延べ面積はコンパクトながら、あの広々とした一室空間、光と景色を取り込む大きな開口部・・・といった「箱の家」の普遍的な長所をさらに引き出すために北海道の蓄積を使いたいと思う。さてどうしたものか(笑)

難波和彦+界工作舎 神宮前日記 http://www.kai-workshop.com/index.html

いろいろと考えていてチェロが聞きたくなりました。
https://www.youtube.com/watch?v=mGQLXRTl3Z0


2016年7月7日木曜日

「箱の家」をお手伝いする その1


ひょんなことから、東京の建築家のお手伝いをすることになった。難波和彦さんである。
難波さんといえば「箱の家」シリーズの設計者であると同時にそのコンセプトでもある「建築の4層構造」の提唱者として知られる。また戦後日本の住宅研究を牽引した池辺陽(イケベキヨシ)を師に持ちその成果は放送大学の講義やMUJIハウス(箱の家のシステムをもとに無印良品/㈱良品計画が供給する規格住宅)、建築雑誌等で広く知られている。特に若い世代の北海道の建築家の中にはきっとたくさん「箱の家」のファンがいると思う。

難波和彦+界工作舎HP http://www.kai-workshop.com/

ことの始まりはフェイスブックを通して懇意にさせていただいている秋田の建築家、西方里見さんの紹介である。 先日7/2(土)に難波さんと建て主さんにお会いし、お話しを聞く機会をいただく。その後、江別市の敷地も見せていただくことができた。建て主の父上から、杭が必要なこと、冬場の気温が-20℃を下回ること、石狩平野の中央に位置することから卓越風の影響が大きく冬場は東方向に巨大な雪庇(セッピ)を生じること、川に近いため過去には水害も経験していること等を聞く。

今回の私の役割は現地の技術アシスタントとして北海道で最初の「箱の家」を無事完成に導くお手伝いである。建築家同士の協働は意外に少ない。ぜひ貴重な学びの場としたい。

早速、7/4(月)より難波さんからメールが入る。「なにか北海道の家づくりに関する資料を」とのリクエストにBISの最新版テキスト「北の住まいの熱熱環境計画2015 年」をはじめ北総研(北方建築総合研究所)の実務資料、その他北海道で一般的な住宅各部の仕様をお伝えした。

BIS:(ビルディング.インシュレーション.スペシャリストの略) 断熱気密施工技術者として北海道が作った資格制度。3年に一度の試験による資格更新義務や取得者は社)北海道建築技術協会のHPで名簿が公開される。また国の定める住宅補助事業等への参加要件となっており、北海道の設計者は建築士の他にこのBIS資格を取得するケースが多い。

まだやり取りは浅いが、北海道がやはり東京的一般に比べ、かなりかけ離れた外国であることをあらためて実感する。協働を通して少しでも両者の相互理解が深まれば嬉しい。またこの件に関しては今後、北海道の住宅雑誌リプランの三木編集長のブログも合わせてお読みいただければ幸いです。

性能といい家大研究 http://blog.goo.ne.jp/replankeigo/e/67cb6f393650615d3995c17ec6431143



今日はTony Williamsなんていかがでしょう。
https://www.youtube.com/watch?v=Pdtb08ihndU