2010年8月30日月曜日

地盤改質杭工事

現在菊水の家の現場では、根堀直前の状況です。敷地は安定支持層が地表面の2m下と浅く周囲も40年以上前から宅地開発が行われ地盤も安定しています。このような場合、杭を選択すると高止まり(予想深度よりも杭が打ち込めず杭の無駄が多くなること。)の危険性が大きくなります。より簡便で敷地に合った工法の選択が重要になります。そこでセメントと地質を混合し地盤を部分的に改良する工法を採用しました。
直径約50cmで穴の底に人工的に柱状安定地盤を生成します。その上に建物の基礎を置くことで安定地盤まで建物の重さを伝えます。

穴の大きさは直径約50cmです。


建てこんだ住宅街であることと前面道路が小中のスクールゾーンのために安全を見て敷地内の立ち入りをネットで規制します。左に立っているのが仮設用電気の引き込みポールです。

前面道路には並木があり、そのままでは資材を搬入することが出来ません。並木を移動し前面道路を切り下げる等の必要性が発生してしまいます。古い住宅街は地盤に関しては安定しているところが多い反面、インフラが整備されているのでそれらの移動や撤去に労力が必用となる場合も多いのです。

2010年8月29日日曜日

長沼へ

美しい空の下、一路長沼へ、尊敬する荒谷先生の農場を見学に行きました。北海道の建築における断熱の権威として、学生時代に読んだ論文に感動したことを今も忘れません。断熱は人工的なものではなく命が生きてゆくために自然が用意したもの。地球は大気により外断熱された惑星である。その断熱がなければ太陽熱も宇宙の寒気も一切遮断することができない死の星になる。みなさんは断熱をこんな風に考えられますか?そんな先生が今夢中になっているのが農業とのこと。北海道の基幹産業である農業に建築で培った断熱の知識を応用しながら暮らしの中で仲間とたくさんの実践を行っている。


こじんまりとした農場の看板

離農した農家の母屋を断熱改修してある。壁には30cmの断熱とのこと。
自らセルフビルドで作られた断熱貯蔵庫を説明していただいた。

ビニールハウスでは寒暖の差が激しすぎて、苗作りには必ずしも適さない。断熱することで環境を穏やかにするとさまざまな可能性が見えてくる。

暖房ボイラーも給湯ボイラーも手作り。

2010年8月28日土曜日

根堀工事

本日から根堀(基礎を作るための溝を掘る作業)開始です。札幌の凍結深度は60cm。基礎を作る場合はこれ以上掘り下げねばなりません。


土質はやはり泥炭混じりです。しかし地下水位が思った以上に高くなくてホッとしました。水位が高く基礎が水中にある場合は、おなじみの基礎断熱工法が効きません。また床下の湿気等々いろいろと難しい問題が出てきます。対策はいろいろと考えてありましたが、少し気が楽になりました。砕石を用いた杭も結果として、敷地内の水抜きに貢献してくれているようです。


基礎完成後、掘り返した土は埋め戻しにも使いますが、全てを再利用できるわけではありません。かなりの量をダンプで運び出さねばなりません。

2010年8月26日木曜日

砕石杭工事

本日は杭工事です。あいの里地区は全般的に地盤の弱い地域ですが、中でも造成されてからまだ日の浅い敷地周辺は、特に地盤に対する配慮が必要です。一般的に10mを超える深さに支持地盤(建物の全重量を支えられる固く安定した地盤)がある場合、木造等の比較的重量の軽い建物の場合でもRC杭を打ち込む工法が一般的でしょう。しかし10m以上となるとコストも掛かる上に、杭打ち機の中では最も軽い部類に入るものでも敷地内の移動に神経質になったり(敷地内の地盤が杭打ち機の重さに耐えきれずに陥没し杭打ち機が横転したり)といったようにいろいろと難しい問題も出てきてしまいます。そこで今回はよりリーズナブルで、重たい重機を極力使わない工法で杭地盤をつくります。上の写真は一般的な住宅用杭打ち機がマストを立てた状態です。遠くから見るとそうでもありませんが、近くによると...

かなりごついです。また杭打ち機が横転しないように厚い鉄板を敷きながら杭を打ち込む孔を掘削しているのがお分かりでしょうか?このように重機を用いればそれに応じてさまざまな養生や工夫が付帯的に発生して現場の予算を圧迫してしまいます。もちろんRC杭の良さは分かりますがなかなか費用対効果のバランスは難しいものです。

そこで今回は.....


1:これ(砕石投入機)と


2:これ発電機(砕石を締め固めるため)と

3:そしてこれドリルオーガ(2トントラック)で地中に安定した杭を作ります。

非常に軽量で簡単なのがお分かりでしょうか?またこの工法は、砕石(砂利)しか使わないので、セメントを土に混ぜて固めるような土壌汚染や建物解体時にそうした大きな異物が地中に残ると言った心配も少ない工法です。
詳しくは ハイスピード工法 http://www.endou-gumi.co.jp/index.html


2010年8月24日火曜日

杭芯出しとレベル設定

今日は杭芯出しと遣り方のレベル出しを行いました。杭芯??、遣り方??、レベル出し??と言う方は必見です。



ところで地球は水平ではありませんよね~?一見平らに見えてもでこぼこしているのが普通です。中には一見分からない緩い傾斜が付いている場合がほとんどです。この敷地も新興住宅街の一角として造成されていますが東から西に向かって約15cm下がっています。ではみなさんどうやって1階の床の高さを決めたらよいでしょう?東の高い地面からでしょうか?それとも西側の低い方でしょうか?普段何気なく毎日家に入りますが、何気なく普通に出入りができるということはたいへん自然な設計と工事が行なわれていることの証明です。これが不自然だと妙に階段の一段目が高かったり、低すぎて地面に降りる最後の段で腰がカクッ!となったりします。

そう!このレベル(高さの決定は)工事の第一歩として実に大切なのです。

コツは玄関出入口の高さを大切にすること。ここに注目した結果BM(ベンチマーク/観測点)より-32cm下がりが基礎の天端(テンバ/仕上がり高さの意)と決まりました。
A,B,CはみなBMから一定の高さとなる。即ち3点を結ぶと仮想の水平面が出来上がる。でこぼこの地面の上に平らな仮想面をイメージしそこからの追い下げで基礎の天端を決めている。写真のようにA(B,Cも同じ)点より等しく-32cmを基礎の仕上がりとしました。
あいの里地区は札幌でも地盤の良くない地区です。建築の中でも最も軽量な木造住宅でも杭や地盤改質が必要となります。次回はこの杭工事です。

2010年8月23日月曜日

もう一つの挑戦

今年は、南あいの里の家と同時期にもう一つの省エネ住宅を建設します。「菊水の家」と呼ぶことにしますが、こちらもなかなかに面白い試みになりそうです。クライアントさんはエネルギー関連の企業にお勤めのこともあり、たいへん住宅の環境性に興味をお持ちでした。計画を進める上でまず要望に上がったのが、空気を熱源とするヒートポンプの採用でした。北海道においては一般的に給湯エネルギーの倍の量を暖房で消費します。年間のエネルギー需要を見てみると実に70%以上が暖房と給湯で占められ、特に暖房エネルギーは全体の50%以上を占めています。みなさんご存知のように、今後の私たちの暮らしに欠かせない環境的な設備機器として、ヒートポンプの採用がよく話題に上がります。通常1Lの油を燃焼させると1L分の熱量しか得られませんが、ヒートポンプを併用すると投入したエネルギーの3~5倍のエネルギーを取り出すことが出来ます。15℃の地熱から40℃のお湯を作ることもヒートポンプならば可能なことなのです。では地熱はよいとしても空気熱の場合はどうでしょう?冬期には-10℃を下回る札幌で、給湯と暖房用のエネルギー全てをこの冷たい外気から熱を採ってまかなえるでしょうか?熱交換器の性能はずいぶんメーカーの努力で上がりましたが、残念ながら給湯と暖房全てを寒冷な外気からの採熱でまかなえる家は札幌でも非常に少ないのが現状です。しかしこうは考えられないでしょうか?建物の必要とするエネルギーを、寒冷な外気から採れる僅かな熱でも十分に足りるように設計できたならば.....ひょっとして..。たとえば暖房用のエネルギーと給湯用のエネルギーの比率が2:1だとして、暖房用に2kw、給湯用に1kw、占めて3kwだけで足りるような断熱構造の家を設計できれば、寒冷地で不利な空気熱源のヒートポンプでも全体をまかなえるのではないだろうか?
2010年現時、北海道では空気熱源のヒートポンプは実態的な効率の比較から地熱を熱源とするヒートポンプに比べて不利と評価されることが多い。ほとんどの専門家は発展途上の熱交換器の性能をその理由に挙げるが、本来必要な性能を決める支配的な要因はむしろ建物側にある。重たいボディーを軽量化せずにある速度まで加速させようとすれば、大きなエンジンが必要となり二次的に燃費は悪化しやすい。大きな燃焼室をもつエンジンを燃費よく作ることは非常に難しいからだ。しかしエンジンに注目する前にボディーの重量を今の半分や1/3に軽量化できるのなら、わざわざエンジンを新開発せずとも十分に早くて低燃費の車が作れるはずではないだろうか?

●ヒートポンプの原理


2010年8月22日日曜日

夏と秋の間に

今日は久しぶりの小樽の街歩きでした。銭箱まで自転車でそこから電車で小樽築港まで。暑さは相変わらずですが、少し秋の気配がしませんか。


秋の空を感じませんか?
雲は夏と秋の真ん中ですね。

旧手宮船沿いの長屋。荒れてはいても絵(写真)になります。

そういえば最近路地がなくなりました。

2010年8月21日土曜日

地鎮祭

南あいの里の家の地鎮祭を行ないました。スタッフを連れてお酒を買って30分前に現地に到着。クライアントさんの親族にご挨拶をして、祭壇作りを工務店さんと一緒に手伝います。しめ縄に御幣(ごへい)を飾って、祭壇にはお供え物とお酒を置いて、神社の宮司さんと打合せをします。私の事務所の地鎮祭にはなるべく多くの生産者さんや協力業者さんといったこれから現場を共にする仲間たちを呼ぶことにしています。慶事は大人数で祝った方が嬉しいことはもちろんですが、建築という素適なものづくりを建て主さんをはじめご家族の方々に分ってもらうよい機会だと思うからです。ほとんどの方々が小さな住宅一軒にこれほどの人が関わっているのか!と驚きます。たくさんの人々が関わり額に汗して一生懸命に作るからこそ、建築は皆の喜びになるのだと思います。
生まれて初めて御幣を付けるM君。オープンデスクに来ている。

祭壇が出来上がってゆきます。
式が開始されました。建て主さんは最前列で宮司さんの祝詞(のりと)を聞きます。
この日は工事関係者合わせて16名ほどにもなりました。

2010年8月16日月曜日

みなさんお盆はどう過ごしましたか、毎年私の家は午前中にお墓参りに出かけて、帰りには20年以上家族で通っているお蕎麦屋さんに寄ることにしています。今年は弟の家に新しい家族が一人増えたので、大人7人、子供7人の大家族で団体扱いでした。

ただでさえ摘期(収穫できる期間)の長いトマトが気温のせいでいつまでも果てしなく実を付ける感じです。

お墓の草を刈って、お掃除をして、お花とお菓子を供えて合掌。おばあちゃんまた来年ね。

2010年8月11日水曜日

2010年の北方型ECO+

今年の北方型ECO+プロジェクト(北方型住宅のハイエンド仕様。同時に国で定める長期優良住宅にも適合する補助対象住宅。北海道で生まれた革新的技術で作られる新築の地域ブランド。当然ながら全国一の住宅性能を有している。)がもう直ぐ着工します。(ところで北方型住宅とは? http://www.kita-sumai.com/)今年の弊社の目標はずばり「普及させること!」です。昨年始めての挑戦として取り組んだ「銭函の家」。建物からの熱損失を限りなく抑えることで、飛躍的に冬期の暖房コストを圧縮することが出来ました。反面坪単価的には60万円/坪を超えてしまい、普及を前提とした建設費としてはまだ改善の余地があることが分かりました。そこで今回は普及型の仕様を開発してリーズナブルに壁:30cm断熱仕様が供給できるように、各方面の専門家を集め課題に取り組むことにいたしました。目標は50万円代/坪程度です。今年の北方型ECO+の基準は昨年よりも更に厳しく、1種熱交換換気装置の使用が禁止されました。要は自然換気(外気温に等しい空気で24時間換気を行う条件)で建物の熱損失を示すQ値が1.3W/㎡Kを下回るように設計せねばなりません。機械頼みがきかない為に最低でも15~20cmの断熱が壁には必要となります。しかし考えようによってはぎりぎり基準クリア(ホッ!)では面白くありませんので、最高のコストパフォーマンスを維持しつつどこまでこのQ値を下げられるのかに私と仲間は挑戦することにしました。それは日本経済全体が淀む中、驚異的な燃費を誇るハイブリッド車が世界的に大きな評価を受けていることに元気をもらう感じに似ています。ブログで何度も訴えてきたように、今日本が次世代省エネ基準として掲げているものは、今後社会にとって必要とされる省エネの水準としはあまりに低すぎます。名前も大仰で誤解が多く単に99年度省エネ基準と呼ぶべきものです。この基準に沿って家を建ててもCO2は減るどころか逆に増え続けてしまうのが残念ながら現実です。特に冬期間の暖房用エネルギーが全国平均の3倍近くに昇る北海道ではそれに応じた基準の明確化と周知そしてなにより実際に建設できる体制が必要なのです。

Dr.タギ氏による省エネシュミレーションより。自然換気による場合は建物全体のおよそ36%が換気による熱損失となります。この状態でQ値は1.1W/㎡Kをマークします。実際の冬の生活ではシュミレーションで想定しているように家中の空気を2時間で全て外気と入れ替えるといった過剰な換気はしませんので、自然換気ながらQ値は1W/㎡Kを下回ることになります。



次のシュミレーションでは建物に必要な暖房器具の容量や年間の燃料消費量を予測しています。たとえば外気温度が-13℃で室内を+22℃で全館暖房する場合には、家全体で3.7kw程度の暖房装置が必要です。同規模で99年度省エネ基準の平均的な住宅の蓄熱暖房機の容量は約30kw程度ですから約1/8程度で済むことになります。

2010年8月10日火曜日

大切に使っていただいてありがとうございます。

本日は東札幌まで、今日も相変わらず暑い.....(笑)
壁のニッチをオーナーさん、ほんとうに上手に使ってくれて嬉しくなりました。
絵や写真、時計や電話にオーディオ、TV、旅先のお土産にCDやDVD.....ほんとうに日本の居間は賑やかですよね~。このたくさんの居場所をどうやって狭いマンションの中に工夫しようか?当初からこんなことを考えていました。簡単に自由に飾ることができて、散らかった感じがしないインテリアってけっこう工夫が必要です。扉の枚数だけ増やして隠すことばかり考えると、お金も掛かるし、どこに入れたのかわからなくもなります。飾りながら、乱雑に見せない居間の見せ方、収納でもなく、ディスプレイでもない感覚は大いに研究する価値大だと思いました。

2010年8月9日月曜日

バラ窓で涼みませんか

最近暑いので、昔撮ったステンドグラスの写真を引っ張り出しました。日本人はなんでも明るくすることが好きですが、本当に大切なのは闇をどう作り出すのかだと思います。


暑くて駄目である!

毛皮の脱げない私等にとって今年は酷である。できることと言えば冷たい床にごろりである。ちなみに同時に鳴けば・・・ごろにゃん・となる。悲しいのは主人の家は、仕事で彼が作るものとは比べ物にならぬほど、夏暑く冬寒いことである。そんな床にごろりとしても心は一向に晴れぬのである。
                          20100809 山本みい 猫6歳


2004年より住宅の1階の床をコンクリートで作ることが多くなりました。冬暖かく夏は涼しくを考えてです。きっとオーナーのみなさまはこの一文を読んで「にやり」としていることでしょう。ぜひ1階の床をコンクリートで作りましょう。夏は特にすっごく涼しいです。これお勧めです。


そうしないとまあ、私の家のように、暑くて猫も万歳です。(笑)まあ~それもほほえましくて嫌いじゃないんですが~。

2010年8月7日土曜日

畑でもしませんか?

みなさん暑中お見舞い申し上げます。
しっかし~暑いでっすね~。特に今年はなんだか北海道じゃないみたい。反面、家庭菜園のお野菜はとても豊作です。クライアントさんにお勧めしているのが家庭菜園。ほんとうに小さくてもいいし、なんならアパートのベランダでも立派に育ちます。私の事務所の夏のお土産として事務所に来られるクライアントの方はもうおなじみですよね。今年は特にトマトが好調です。バジルも林のように茂りますし、きゅうりもいっぱい採れます。ハーブ類は越冬するものも多いので一度植えるとほんとうにらくちんです。若いクライアントさんの中には庭はいらないとおっしゃる方も多い反面、食の安全や安心にはとても関心が高いですよね。そんな時、簡単にできるのがお家の野菜作り。お子さんと毎日観察しながら作るのはとても楽しいし。実がなって採る時はちょっぴり感動しますよ~。




お皿の 上の細長い大きなトマトが、トマトソースでお馴染みサンマルツアーノ種、真ん中の黄色い長粒種もその親戚にあたる中玉のフルーツトマト。左下が特にお勧め中玉トマト、糖度が高くてミニトマトとはまったく味が異なります。一般にトマトは大玉になればなるほど上手に育てるのが難しくなりますけどこれなら簡単。手間はミニトマトと変わりません。私は甘くて一回り大きいこちらをお勧めします。最後は右下のミニトマトのキャロルです。

左上がバジルの株、イタリアの市場ではこんな感じで売っています。きゅうりも大きくて美味しそう。暮らしにもう一度、畑を取り入れてみませんか?きっと楽しい家作りになると思うんですが。