前回も書きましたが「西野里山の家」の特徴の一つに、超高性能国産サッシの採用があります。従来の倍にも及ぶ高い断熱性能は冬のみならず夏の涼しさにもたいへん効果があります。もはや「断熱」という知恵は北国の単なる冬対策ではなく、その地域ごとのアレンジを加えると、場所を問わない建築の要件といってよいと思います。また3.11以降特に暮らしとエネルギーの関わりに関心が高まったことや、最近では地域経済学的な視点から、エネルギーを必要以上に使わないことは単なる家計の節約のみならず、製造業の競争力を高め、小さなまちの発展にさえ欠かせないことが明かになって来ました。考えてみればその通りなのですが、自らの工夫でエネルギーを作り出すことと同じくらい、使わなくて済むことは大切です。ほんの少ししか必要ないのなら、多少不安定な自然エネルギーでも不便は少ないでしょうし、太陽光パネルや、風力発電、燃料電池の容量さえも小さなもので足りるようになります。要は必用な設備の規模を圧縮することは建設時のコストを下げますし、結果として競争力の高いものづくりにつながります。小さなまちだって、エネルギーを自給できるようになれば生き残ることができるようになります。
硝子を入れた後、周りをシールするための下準備を行うガラス屋さん。
規格品のサッシとは異なり、ガラスは枠を取り付けた後に入れる。気密が十分に出るように飯田ウッドワークシステム㈱では、ガスケットを用いずに直接シーリングを打って、硝子と枠の間の気密を取る。
バックアップ材を入れているところ。
南側の巨大な開口部。
小さな硝子は国産のものだが、大判のものは、ハンガリー製。省エネ意識がEUに対してまだ低い日本では、大判のトリプルガラスは高価。国内での競争力強化と今後アジアでの積極的展開を狙う同社では、この問題に取り組み新たなガラス供給の商流も開拓している。こうしたところは新世代の窓メーカーとして木製サッシメーカーひしめく道内でも際立っている。従業員数10名程度の小さな地域のメーカーながら、世界を見据えた戦略をもち開発する製品はワールドレベル。私も見習いたいと思います。
南側に開く大開口部。
大判の硝子は、ハンガリーのジュリッヒ社製。
写真はガラスメーカーのジュリッヒ社のHP
飯田ウッドワークシステム㈱では、サッシの性能認定を国内規格のJISではなく、ドイツのパッシブハウス研究所の認定であるPHIを最初に取得している。ドイツの誇る、省エネ住宅の世界的なブランドである「パッシブハウス」は用いる各マテリアルが同研究所の試験をパスした認定品であることが求められる等、たいへん厳しい仕様で知られるが同社のサッシはその中でも最も高いランクとされるAランク(PHI-A)を取得しており、U値は最新の国産に多い1.3W/㎡kを大きく凌ぐ0.79W/㎡kというもの。こうなると一昔前の10cmのグラスウールとあまり変わらない。この窓を使えば年間に必要な暖房エネルギーの3割以上を日射でまかなうことが難しくなくなるし、窓の面積を増やして北海道らしからぬ、明るく開放的な家にすることもできる。