私のブログをご覧の方なら、建築にとって断熱がいかに重要であるか。断熱を軽視した建築が戸建てであれそれ以外のものであれ、いかに住まい手にとって残念な結果しかもたらさないかをよく知っていると思います。もちろんここ最近では北国のみならず断熱が暑さに対しても有効な点に注目が集まってもいますが、今日は戸建て同様ここ数年力を入れているマンションの外断熱改修について書きます。
みなさんの中にはコンクリート造のマンションに住む人も多いと思います。購入した人も借家の人 も様々だと思いますが、共通してよく聞くのが「寒い」、「結露する」、「カビが酷い」といった断熱不足に起因するもの。
意外に思われるかもしれませんが、日本の建築士教育ではほとんど断熱の大切さを教えて来ませんでした。ですのでほとんどの建築士がその分野をよく知りません。その結果マンションに限らず住まいが寒く、結露でカビるのは・・なにも北海道に限った話ではないのです。その一方、耐震性や防火性は建築士の試験でもよく出題されます。結果的に日常よりも非常時が優先される・・いえいえ非常時であっても無断熱の避難所は役に立ちませんから、ある意味、断熱は非常時、平時を問わない大切なものなのですが・・・
それでも道内においては、最も建設戸数の多い木造住宅に関して断熱とその関連技術を教えるBIS(断熱施工技術者資格)がありますが、いわゆる箱モノと称される鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨造(S造)の設計者や施工者はこの資格の存在さえ知る人は少ないです。まして厳しい予算の中で計画せざるを得ないRC造の集合住宅はそれが分譲であれ賃貸であれ前述のような問題を体質的に抱えながら延々と建てられ続けてきたのです。
BIS:(日本の建築士では教えない熱環境を専門に扱い、建築士を再教育する北海道独自の資格制度)
いわゆる、内断熱マンションは寒い!(今やほぼ日本だけとなった効果の薄い断熱法)と言われるのはこうした理由です。そもそも今の時代、RC造の断熱を連続させることが難しい室内側から行うものではないのですから・・
その一方でどのマンションでも概ね15年毎に必要となる定期修繕をあえて外断熱改修で行ったマンションはその後の状況が一変します。まず耐久性が飛躍的に向上します。一般にコンクリートは頑丈だと信じられていますが、意外に脆く、特に凍結融解が避けられない寒冷地においては紫外線劣化と相まってコンクリート外壁は概ね15年毎に必ず補修を繰り返さねばなりません。反対に外断熱でその躯体を丸ごと覆ってしまえばそうした問題はそもそも生じません。15年程度で壊れなくなるのであれば、15年サイクルの修繕積立金もまた不要になります。築深のマンションにとってお金の掛かる3大要素は躯体、給排水設備、エレベーター。中でも壁や屋根といった躯体が傷むと修理は最も高価になり易い。築深になれば建物も人も老化が進みます。退職者が増えどんどん住まいに掛けられるお金が減って行くのに15年毎にお金が掛かり続ける。そんな一般改修では苦しさは増すばかり・・外断熱改修はまさにゲームチェンジャーなんです。
今や世界の常識「コンクリート造は外断熱」対して日本は悲しいかな未だに「内断熱」。悩ましいのはほとんどの専門家も内断熱しか設計や施工経験のない人が圧倒的多数という事実。端的に言えば外断熱の有用さを経験をもとに語れる人は少数でその反対の立場をとる専門家が大多数という不幸。この状況では、仮に一般の住まい手が悩みを打ち明けたとしても的を得た回答のできる専門家はほぼいないのです・・・
中には・・北海道は断熱先進地域!のように語る人もいますがそれは木造に限ったことであり、それ以外の構造の断熱は古い方法論が未だに当たり前。北海道で買う価値があるのは木造の高断熱建物でRC造に関しては外断熱以外はほぼ寒いよ・・と言われるのもこうした背景があります。
先日・・とある、マンションの管理組合より「外断熱改修を見送る」旨の連絡がありました。役員一丸となって将来を見据え、外断熱改修を推したのだが、いかんせん、意見を求めた専門家の多くが前述のように経験もなく実践もしないままに外断熱改修に対する反対を述べたとのことでした。電話口の向こうからは悔しさが伝わってきます・・「精一杯やったんだから胸を張ってください。残念なのは肝心の専門家が不甲斐ないからですよ」自分にはそう伝えるのが精一杯でした。
今日は大好きなHSCCなんていかがでしょう。上手いです・・