2010年8月23日月曜日

もう一つの挑戦

今年は、南あいの里の家と同時期にもう一つの省エネ住宅を建設します。「菊水の家」と呼ぶことにしますが、こちらもなかなかに面白い試みになりそうです。クライアントさんはエネルギー関連の企業にお勤めのこともあり、たいへん住宅の環境性に興味をお持ちでした。計画を進める上でまず要望に上がったのが、空気を熱源とするヒートポンプの採用でした。北海道においては一般的に給湯エネルギーの倍の量を暖房で消費します。年間のエネルギー需要を見てみると実に70%以上が暖房と給湯で占められ、特に暖房エネルギーは全体の50%以上を占めています。みなさんご存知のように、今後の私たちの暮らしに欠かせない環境的な設備機器として、ヒートポンプの採用がよく話題に上がります。通常1Lの油を燃焼させると1L分の熱量しか得られませんが、ヒートポンプを併用すると投入したエネルギーの3~5倍のエネルギーを取り出すことが出来ます。15℃の地熱から40℃のお湯を作ることもヒートポンプならば可能なことなのです。では地熱はよいとしても空気熱の場合はどうでしょう?冬期には-10℃を下回る札幌で、給湯と暖房用のエネルギー全てをこの冷たい外気から熱を採ってまかなえるでしょうか?熱交換器の性能はずいぶんメーカーの努力で上がりましたが、残念ながら給湯と暖房全てを寒冷な外気からの採熱でまかなえる家は札幌でも非常に少ないのが現状です。しかしこうは考えられないでしょうか?建物の必要とするエネルギーを、寒冷な外気から採れる僅かな熱でも十分に足りるように設計できたならば.....ひょっとして..。たとえば暖房用のエネルギーと給湯用のエネルギーの比率が2:1だとして、暖房用に2kw、給湯用に1kw、占めて3kwだけで足りるような断熱構造の家を設計できれば、寒冷地で不利な空気熱源のヒートポンプでも全体をまかなえるのではないだろうか?
2010年現時、北海道では空気熱源のヒートポンプは実態的な効率の比較から地熱を熱源とするヒートポンプに比べて不利と評価されることが多い。ほとんどの専門家は発展途上の熱交換器の性能をその理由に挙げるが、本来必要な性能を決める支配的な要因はむしろ建物側にある。重たいボディーを軽量化せずにある速度まで加速させようとすれば、大きなエンジンが必要となり二次的に燃費は悪化しやすい。大きな燃焼室をもつエンジンを燃費よく作ることは非常に難しいからだ。しかしエンジンに注目する前にボディーの重量を今の半分や1/3に軽量化できるのなら、わざわざエンジンを新開発せずとも十分に早くて低燃費の車が作れるはずではないだろうか?

●ヒートポンプの原理