2023年6月2日金曜日

6/2 発寒の家Ⅲ

 明日、屋根の防水を行う「発寒の家Ⅲ」の現場の様子です。上から順に通気垂木(45×105/通気加工済)+防風透湿シート+ボード状断熱材200mm(GW340mm相当)+防湿シート+厚物合板+梁の順の断熱構成です。北側と西側で付加断熱(壁)の厚みを変えて隣地間距離を確保するために新築のように東西南北の軒の出は同じになりません。壁の厚みが北、西と南、東で異なるので矩計図もそれぞれ必要になります。性能向上改修ならではです。
この上から厚物合板を留め付けます。

通気加工済みの屋根の通気垂木です。

こんな感じに通気の欠き込みを入れてX、Y方向に自由に空気が流れるようにします。

右手の隣地側は薄い付加断熱、左側は厚い付加断熱。壁の厚みは変わっても性能は同じになるように調整します。



雨が気になるので・・本当は下屋も同時に明日、防水してしまいたいところですが・・壁の面材を桁の腹に打ちたいので、割り切って主屋の屋根先行で行きます。









2023年5月31日水曜日

5/31 発寒の家Ⅲ

 捻じれていた二階の梁(105×270L:3640)を素早く架け替え、根太受けと梁成補強のために45×105を両側からサンドイッチした「発寒の家Ⅲ」です。屋根断熱は最近お気に入りのミラフォームΛ・・EPSでありながらフェノールフォームに迫る性能とコストパフォーマンスが魅力で最近よく使います。基礎断熱に土と接して使える汎用性の高さも魅力。屋根にはこのラムダを200mm(約GW340mm相当)を使います。ちなみに屋根は構造体の外側で断熱する外張り断熱。従いまして今見えている梁等の構造材は全て室内側に存在することになります。こうすることで、いつでも点検が容易になります。

梁を架け替え根太受けと補強を兼ねて両側より45×105で挟みました。

梁と柱の接合は全て羽子板ボルトやパネリードXを用いて補強します。

コストパフォーマンスとどこにでも使い易い性格が気に入って最近よく使うミラフォームラムダ。写真は100mm厚です。

当時の羽子板ボルト(Z金物)今にして思えばガタモ大きいですし、ボルトもスプリングワッシャを使っていなかったりで、手で回ります。

やっと手に入るようになった構造用パネルOSB9mm(3×10版)

屋根には1層目の断熱材を敷き詰めて、ブルーシートを掛けて雨養生。

なぜ・・和室の長押や廻り縁はこんな風に大きく欠くんでしょう・・柱断面が乏しいものはこの際思い切って交換します。


5/30 発寒の家Ⅲ

 屋根から取り掛かった「発寒の家Ⅲ」屋根は構造体の外側に外張り断熱。なので防湿シートは梁の外気側。壁は充填を主体に付加断熱を外張りするので防湿シートは柱の室内側。切り替え部分のシートの仕込みが完了。

雨の多い季節を見越して屋根断熱はGWではなくてボード状断熱材を選択しました。丁寧に小屋梁のレベルを取り直し大垂木下には矢を打って天端のレベルはキッチリ。今後2階梁の交換やクリープの矯正なんかもあるので現場にはジャッキを用意。補強に使う羽子板ボルトはカナイならメルト、カネシンならレスビー。

好みなんです/笑

この上から厚物合板を敷いて防湿シートを折り返します。

垂木の高さも矢(関西)又はパッキン(北海道)を打ってしっかりレベルを合わせます。

矢又はパッキンはこんな感じです。

新築だとまず使わないジャッキ。柱梁の交換やクリープした床の矯正等々・・リフォームには大活躍します。
こちらがお好みの羽子板ボルト。頭が小さいのが好みです。

納まったところもピタッときれいです!




2023年5月26日金曜日

5/26 発寒の家Ⅲ

  築深の建物は概ね、手刻みで加工されていることが多い。それに経年変化が加わって例外なく現在の水準で見ると狂いを生じている。そこで棟梁は桁行方向と妻方向の狂いを測って屋起こしをやり直している。建物の角を基準にすると傾きが反対側に集中するから建物巾のほぼ中央の柱を立ち(垂直)の基準に見立てて左右の偏りが均一になるようにしている。

 話は変わるが・・昨日から現場の電気が突然使えなくなった・・元々の配線を養生しながら仮設電気として使っていたが、今の時代現場に電気が来ないでは始まらない。考えても理由が分からない・・そんな時に棟梁が「ネズミだな」と一言・・探してみるとかじられたVVF線を発見、早速被覆が傷んだところを取り除いて絶縁。無事復旧できた。棟梁の他に若い大工さんが一人ついているが、私も含めて毎日が学びの宝石だ・・棟梁はなんて凄い。新築以外、自分は全然ものを知らないんだろうと思う。想えば・・ネズミの糞が見つかった時点で電気の線の確認はしておくべきだった。知らずに誰かがブレーカーを触るかもしれないんだから。棟梁、今日もありがとうございます。

建物巾のほぼ中央の柱が基準。この位置で最も各部の狂いが均一化する。

42年ぶりの再屋起こしの全体像はこんな感じ

ネズミに被覆がかじられた電気の線・・危ない


今日もこんな感じ・・現場は学びの宝石箱。面白くて興味深くて仕方がない。棟梁たちにとっては当たり前のことなんだろうけど・・・もっともっと勉強します!

2023年5月25日木曜日

5/25 発寒の家Ⅲ

 本日は小屋組みを取り去って主屋と下屋の梁が露わになった「発寒の家Ⅲ」です。小屋梁は主屋の屋根が3本、下屋が2本兜蟻で掛けてあります。この梁の天端を既存の桁天端+105mmに下げ揃えて、梁全てに補強を行います。その上で梁の腹に梁受け金物を打ち付けて□105の小梁を桁の上に載せ、上から厚物合板で水平な剛床ステージを作ろうと思います。断熱は外張りの屋根断熱とします。既存の小屋組みを解体した際に出た9~12尺の母屋材が多数ありますから捻じれの少ないものを選んで補強や小梁に再利用します。

主屋の小屋梁3本。梁Cは捻じれが大きくクリープが心配なので新しい梁に架け替えます。

こちらが交換予定の梁C・・かなり寝ています。

こちらが下屋の小屋梁2本。母屋は12尺のものもあるので再利用します。

ブロックの煙突は解体します。

1階掃き出し窓の際柱。土台と共に交換です。

久しぶりにバンアパなんていかがでしょう




2023年5月23日火曜日

5/23 発寒の家Ⅲ

 外部のバラ板も撤去し、骨組みが露わになった性能向上改修工事「発寒の家Ⅲ」の現場です。大きな構造の傷みは東側と南側にそれぞれ1か所。中でも南側は柱のみならず土台も一部交換が必要となります。これで傷みの状況がほぼ明らかになったので、今回の状況について建て主さまにご報告して修理の方法を話し合いたいと思います。こっから先は余談になりますが・・・築深の性能向上改修を行う場合は外装がきれいだからと油断せずに土台と胴差廻りくらいは最低限建物一周ぐるりと開口して確認すべきです。くれぐれも構造の傷みを放置したまま上からぺたっ!と断熱を貼るような・・てんぷら工事はNGです。

東側、玄関上の大梁の激しい痛みの様子。胴差、梁共い3割程度断面損失。柱頭もぼけて柱表面から深さ20mm程度は表面が手でめくれます。上下筋交いはきれいに接合部が消失していました。
1階の掃き出し窓の上に二階の窓があり、その窓際で漏水。水は胴差と2階梁を傷ませていいます。1階掃き出し窓の際でも漏水が生じたようで両側の柱脚と土台が傷んでいます。

外部より見た掃き出し窓の左側の柱脚。土台が傷み柱がめり込んでいます。


2023年5月20日土曜日

5/20 発寒の家Ⅲ

 5/20(土)の「発寒の家Ⅲ」。本日は外装の解体が終わったので・・構造体の傷みを確認しに行ってきました。その結果は・・まあ予想通りといいますか、今の工法は進化しているなあと感じた次第。さてなぜ外装を解体して構造材の傷みを確認することが大切なのかと言えば、こうした通気層(排水機能)も防湿層も持たない時代の建物は柱、梁の外気側に深刻な被害が集中し易いからです。平たく言えば壁の中で温度が最も下がり易い外装の裏側(柱の外気側)は結露に対しても、雨水等の漏水に対しても一番の弱点。注意点は・・室内からではまず分からない事。今日も一緒に点検にお付き合いください。

写真から得られる教訓は、たとえ軽微な部分断熱改修であっても、土台の下から上に45cm程度、中間胴差から上下に45cm程度はぐるりと開口して構造の傷みを点検し修理すべきということです。在来木造の傷みはこの部分に集中しやすいですから。

北側の柱(と)の(1)番。室内側からは何ら問題なく見えますが・・・

外から見ると要交換です。

窓の左側の柱が1/3くらい腐ってなくなっています。モルタルの裏が結露したか、サッシの際からの漏水か、はたまたその両方か?シージングボードと柱の間に水が溜まり柱を外側から腐らせています。

こちらは同じ場所を室内から見たところ。シージングボードこそ傷んでいますが柱は無傷のように見えます。


5/19 発寒の家Ⅲ

足場が掛かった「発寒の家Ⅲ」、工程としては二階の天井まで解体が完了し二階の小屋裏まで全て目視点検が可能となりました。印象に残ったのが・・1階と2階でモルタルの下地が異なること。最初の確認申請が出された1981年、モルタルの下地は12mmのバラ板の横貼。それから8年後の1989年に2階を増築した際に使われたのはなんと耐力面材のシージングボード。当時はまだ筋交いの代わりになるという意識は薄く筋交いと併用されています。このシージングボードが中々曲者で・・ラスを留め付ける又釘が室内側に飛び出しその先端が壁内結露して円形の染みを作っていました。外付けアルミサッシの端部も漏水か結露水でシージングボードはブヨブヨでした。多少濡れても腐敗限度内なら染みだけで持つ木材と少しでも水が入ると破綻する新建材・・製品差以上に壁内に水分が入らない断熱構造とデイテールは設計者の大切な仕事だとあらためて感じました。

こちらが二階のシージングボードを室内から見たところ。黒色の染みが一面に・・

犯人はラスを留め付けるための又釘が室内に露出しその先端が結露したから。もちろん又釘は錆びて真っ赤です。

二階の外付けアルミサッシの端部は盛大に漏水痕がありました。窓は壁厚内に引っ込めるべきですね~・・・

冬場、暖房で暖まった高温高湿の室内空気が天井裏に逃げて、陸屋根の雪でキンキンに冷やされた野地板の裏面で結露します。その繰り返しがこの結露痕。でも12mmの野地板は腐りもせずに屋根上の歩行が可能です。

こちらが当時の新建材であるシージングボード。キャッチフレーズは「省エネで耐震だそうな・・」

最近の製図のお供はFIVE NEW OLDですねえ~



5/17 発寒の家Ⅲ

 5/17(水)の「発寒の家Ⅲ」は水廻りの壁と天井の解体がほぼ完了したので躯体の傷み具合を確認します。防湿シートのない壁内がいかに木材にとって過酷な環境だったかがよく分かりました。お風呂場は0.75坪の初期のユニットバスが使われており土台や柱脚も全く問題なし。作り風呂は大好きですが腰下だけでもハーフユニットにする大切さを実感しました。その一方で室内干しや給湯器置き場だった脱衣所の外壁廻りの痛み方が激しく湿気を壁内に日常的に入れることの怖さを再認識しました。

こちらは居間の外壁ですがモルタル下地のバラ板は湿気でボケてボロボロでした。当時の羽柄材は乾燥が不十分なグリーン材も多かったようで、すぐ下のバラ板は何でもないことから、施工時の含水率を下げることの大切さ(乾燥材使用)をあらためて痛感します。

当時のメガネ石に比較的新しいFF式の排気トップを通して使っていました。給湯器の寿命は約10年くらいなので何度か交換するうちにこうなったのだと思います。このメガネ石はコンクリート製なので断熱はありません。壁の中で結露し周囲の木材を腐らせていたことが分かります。こうした状況を見るとあらためて設備管の外壁貫通部分に気密ガスケットが必要なことが分かります。
壁内の湿気によってモルタルの下地である12mmのバラ板が腐ってなくなっていました。





2023年5月17日水曜日

発寒の家Ⅲ 構造確認

 5/15(月)は二階の床組みを見上げながら飛栄建設さんと問題点の整理を行った「発寒の家Ⅲ」。一般的に昭和の家は現在から見れば構造的には決して強くありません。理由は手抜き云々とは関係なく当時はそれが技術的な標準だったからです。よく昔の仕事を指して現在の観点で批判ばかりする人がいますが当時の実情を充分理解しておらず的外れな場合も多いです。事実、今回は壁や天井の断熱も充分な量がありましたし、羽子板ボルトや梁受け金物等々金物も積極的に使われています。その一方で性能向上を目的とした改修ですから当時の標準を現在のものに引き上げることが目的です。そんな視点で現在の改修ポイントを探って行くと・・

1本の梁に過大な負担が掛かっている。柱が大梁を受けていないために結果的に下に梁を追加して構造が成立。既存の根太が邪魔で室内側から防湿シートが通せない。外部から合板を張りたいが既存の間柱幅が狭すぎる等々・・・もうお分かりと思いますが、2階の床梁の上には二階の柱が、その上には小屋梁がその上には束&母屋&屋根垂木が載っている。安易に2階梁を撤去すればそれが支えていた上部構造も崩れるために撤去自体が難しく、構造に関しては補強法と歪み矯正が主な論点となります。もちろん断熱気密と矛盾することなく構造系を解決しないと後から非常に困るので頭をフル回転させて考えます。

注:今回は隣地が近すぎて外張り断熱&外張り防湿シートが使えません。なので防湿は室内から・・

あらためて在来工法は間取り≒構造だなと感じます。それに配置・・隣地間距離が後の性能向上改修には特に大切。

元々、梁成270mmの梁に下から□105を追加補強している風に見えるが、お互いしっかり一体接合されていないのでほぼ効いていない状態。そこにスパン2.7mと3.6mの大梁が東西から掛かっている。本当は梁を全て架け替えたいところだが・・二階が落ちてしまうので補強法を考えます。
手刻みの際に明らかに梁長さを短く誤ってしまった。その結果下の梁でなんとか構造的に成立させている。
構造補強と断熱化をいかに矛盾なく解決するかが論点。隣地間距離に余裕がなく、隣地側に壁厚が増す外張り断熱気密は限定的にしか使えない。