㈱山本亜耕建築設計事務所
札幌の建築設計事務所 環境建築家 山本亜耕の毎日と建築のブログ
2023年6月2日金曜日
6/2 発寒の家Ⅲ
2023年5月31日水曜日
5/31 発寒の家Ⅲ
捻じれていた二階の梁(105×270L:3640)を素早く架け替え、根太受けと梁成補強のために45×105を両側からサンドイッチした「発寒の家Ⅲ」です。屋根断熱は最近お気に入りのミラフォームΛ・・EPSでありながらフェノールフォームに迫る性能とコストパフォーマンスが魅力で最近よく使います。基礎断熱に土と接して使える汎用性の高さも魅力。屋根にはこのラムダを200mm(約GW340mm相当)を使います。ちなみに屋根は構造体の外側で断熱する外張り断熱。従いまして今見えている梁等の構造材は全て室内側に存在することになります。こうすることで、いつでも点検が容易になります。
5/30 発寒の家Ⅲ
屋根から取り掛かった「発寒の家Ⅲ」屋根は構造体の外側に外張り断熱。なので防湿シートは梁の外気側。壁は充填を主体に付加断熱を外張りするので防湿シートは柱の室内側。切り替え部分のシートの仕込みが完了。
雨の多い季節を見越して屋根断熱はGWではなくてボード状断熱材を選択しました。丁寧に小屋梁のレベルを取り直し大垂木下には矢を打って天端のレベルはキッチリ。今後2階梁の交換やクリープの矯正なんかもあるので現場にはジャッキを用意。補強に使う羽子板ボルトはカナイならメルト、カネシンならレスビー。
好みなんです/笑
2023年5月26日金曜日
5/26 発寒の家Ⅲ
築深の建物は概ね、手刻みで加工されていることが多い。それに経年変化が加わって例外なく現在の水準で見ると狂いを生じている。そこで棟梁は桁行方向と妻方向の狂いを測って屋起こしをやり直している。建物の角を基準にすると傾きが反対側に集中するから建物巾のほぼ中央の柱を立ち(垂直)の基準に見立てて左右の偏りが均一になるようにしている。
話は変わるが・・昨日から現場の電気が突然使えなくなった・・元々の配線を養生しながら仮設電気として使っていたが、今の時代現場に電気が来ないでは始まらない。考えても理由が分からない・・そんな時に棟梁が「ネズミだな」と一言・・探してみるとかじられたVVF線を発見、早速被覆が傷んだところを取り除いて絶縁。無事復旧できた。棟梁の他に若い大工さんが一人ついているが、私も含めて毎日が学びの宝石だ・・棟梁はなんて凄い。新築以外、自分は全然ものを知らないんだろうと思う。想えば・・ネズミの糞が見つかった時点で電気の線の確認はしておくべきだった。知らずに誰かがブレーカーを触るかもしれないんだから。棟梁、今日もありがとうございます。
2023年5月25日木曜日
5/25 発寒の家Ⅲ
本日は小屋組みを取り去って主屋と下屋の梁が露わになった「発寒の家Ⅲ」です。小屋梁は主屋の屋根が3本、下屋が2本兜蟻で掛けてあります。この梁の天端を既存の桁天端+105mmに下げ揃えて、梁全てに補強を行います。その上で梁の腹に梁受け金物を打ち付けて□105の小梁を桁の上に載せ、上から厚物合板で水平な剛床ステージを作ろうと思います。断熱は外張りの屋根断熱とします。既存の小屋組みを解体した際に出た9~12尺の母屋材が多数ありますから捻じれの少ないものを選んで補強や小梁に再利用します。
2023年5月23日火曜日
5/23 発寒の家Ⅲ
外部のバラ板も撤去し、骨組みが露わになった性能向上改修工事「発寒の家Ⅲ」の現場です。大きな構造の傷みは東側と南側にそれぞれ1か所。中でも南側は柱のみならず土台も一部交換が必要となります。これで傷みの状況がほぼ明らかになったので、今回の状況について建て主さまにご報告して修理の方法を話し合いたいと思います。こっから先は余談になりますが・・・築深の性能向上改修を行う場合は外装がきれいだからと油断せずに土台と胴差廻りくらいは最低限建物一周ぐるりと開口して確認すべきです。くれぐれも構造の傷みを放置したまま上からぺたっ!と断熱を貼るような・・てんぷら工事はNGです。
2023年5月20日土曜日
5/20 発寒の家Ⅲ
5/20(土)の「発寒の家Ⅲ」。本日は外装の解体が終わったので・・構造体の傷みを確認しに行ってきました。その結果は・・まあ予想通りといいますか、今の工法は進化しているなあと感じた次第。さてなぜ外装を解体して構造材の傷みを確認することが大切なのかと言えば、こうした通気層(排水機能)も防湿層も持たない時代の建物は柱、梁の外気側に深刻な被害が集中し易いからです。平たく言えば壁の中で温度が最も下がり易い外装の裏側(柱の外気側)は結露に対しても、雨水等の漏水に対しても一番の弱点。注意点は・・室内からではまず分からない事。今日も一緒に点検にお付き合いください。
写真から得られる教訓は、たとえ軽微な部分断熱改修であっても、土台の下から上に45cm程度、中間胴差から上下に45cm程度はぐるりと開口して構造の傷みを点検し修理すべきということです。在来木造の傷みはこの部分に集中しやすいですから。
窓の左側の柱が1/3くらい腐ってなくなっています。モルタルの裏が結露したか、サッシの際からの漏水か、はたまたその両方か?シージングボードと柱の間に水が溜まり柱を外側から腐らせています。
5/19 発寒の家Ⅲ
足場が掛かった「発寒の家Ⅲ」、工程としては二階の天井まで解体が完了し二階の小屋裏まで全て目視点検が可能となりました。印象に残ったのが・・1階と2階でモルタルの下地が異なること。最初の確認申請が出された1981年、モルタルの下地は12mmのバラ板の横貼。それから8年後の1989年に2階を増築した際に使われたのはなんと耐力面材のシージングボード。当時はまだ筋交いの代わりになるという意識は薄く筋交いと併用されています。このシージングボードが中々曲者で・・ラスを留め付ける又釘が室内側に飛び出しその先端が壁内結露して円形の染みを作っていました。外付けアルミサッシの端部も漏水か結露水でシージングボードはブヨブヨでした。多少濡れても腐敗限度内なら染みだけで持つ木材と少しでも水が入ると破綻する新建材・・製品差以上に壁内に水分が入らない断熱構造とデイテールは設計者の大切な仕事だとあらためて感じました。
こちらが当時の新建材であるシージングボード。キャッチフレーズは「省エネで耐震だそうな・・」
最近の製図のお供はFIVE NEW OLDですねえ~
5/17 発寒の家Ⅲ
5/17(水)の「発寒の家Ⅲ」は水廻りの壁と天井の解体がほぼ完了したので躯体の傷み具合を確認します。防湿シートのない壁内がいかに木材にとって過酷な環境だったかがよく分かりました。お風呂場は0.75坪の初期のユニットバスが使われており土台や柱脚も全く問題なし。作り風呂は大好きですが腰下だけでもハーフユニットにする大切さを実感しました。その一方で室内干しや給湯器置き場だった脱衣所の外壁廻りの痛み方が激しく湿気を壁内に日常的に入れることの怖さを再認識しました。
2023年5月17日水曜日
発寒の家Ⅲ 構造確認
5/15(月)は二階の床組みを見上げながら飛栄建設さんと問題点の整理を行った「発寒の家Ⅲ」。一般的に昭和の家は現在から見れば構造的には決して強くありません。理由は手抜き云々とは関係なく当時はそれが技術的な標準だったからです。よく昔の仕事を指して現在の観点で批判ばかりする人がいますが当時の実情を充分理解しておらず的外れな場合も多いです。事実、今回は壁や天井の断熱も充分な量がありましたし、羽子板ボルトや梁受け金物等々金物も積極的に使われています。その一方で性能向上を目的とした改修ですから当時の標準を現在のものに引き上げることが目的です。そんな視点で現在の改修ポイントを探って行くと・・
1本の梁に過大な負担が掛かっている。柱が大梁を受けていないために結果的に下に梁を追加して構造が成立。既存の根太が邪魔で室内側から防湿シートが通せない。外部から合板を張りたいが既存の間柱幅が狭すぎる等々・・・もうお分かりと思いますが、2階の床梁の上には二階の柱が、その上には小屋梁がその上には束&母屋&屋根垂木が載っている。安易に2階梁を撤去すればそれが支えていた上部構造も崩れるために撤去自体が難しく、構造に関しては補強法と歪み矯正が主な論点となります。もちろん断熱気密と矛盾することなく構造系を解決しないと後から非常に困るので頭をフル回転させて考えます。
注:今回は隣地が近すぎて外張り断熱&外張り防湿シートが使えません。なので防湿は室内から・・
あらためて在来工法は間取り≒構造だなと感じます。それに配置・・隣地間距離が後の性能向上改修には特に大切。