2012年11月12日月曜日

前田の家 内外装工事 その2

壁に貼られた松板。まだ押し縁は付いていません。完成すると、板と板の間の隙間は見えなくなります。さて今日は外壁と窓の見せ方です。壁に30cmもの断熱をすると当然ながら壁の総厚も大きくなります。ちなみに断熱も含んだ壁全部の厚さが「前田の家」では約36cmになります。窓を壁に取り付ける場合、従来なら窓を壁よりも2cm程度突き出して取り付けるのが一般的でしたが、最近は写真のように、壁の厚みの中にサッシを引っ込めて取り付けることが多くなりました
(詳しい理由に興味のある方は過去のブログも参照していただくとありがたいのですが http://ako-re.blogspot.jp/2011/04/20110304_09.html
外観から見ると陰影の深いスッキリとした窓廻りの印象になります。

完全に壁厚の中に納まった木製サッシ。

窓の上部の黒いラインは通気部材です。

サッシの下部は水切が設けられ、雨水が外壁を伝わないように工夫されています。

貼り方は大工の腕の見せ所。

壁の板の縦張りは垂直性が命。一枚おきに垂直な定規(目安)となるようにレーザーで垂直を出した板を割付け、その間に板をはめ込むように貼ってゆきます。二枚に一枚は垂直を計った板が来るので、貼り進むにつれて縦張りのはずが傾いてゆくといったことがおきません。小さな工夫といえばそれまでですが、足場を取った後に通りから見られることではじめて客観的に仕事の正確さが問われることを知っているからこそ、こうした配慮が浮かぶのです。

雨を避けるために養生した加工場で板を調整しながら貼ってゆきます。

こちらは、新居に取り付けるTVの大きさを仮に示したもの。周囲にはAV機器の棚板やスピーカー等が取り付けられ配線は極力隠蔽としスッキリ見せる予定です。

窓の枠は、タモの集成材ですが厚みを20mmに落とし、木口を太鼓面に取ることにしました。枠回りは直接手や体に触れるところですからいつも優しさを感じるように考えます。しかし必要以上に大きくはしません。さりげなく必要最低限の納まりで全体的に主張しすぎない頃合を考えます。

縦枠と上枠の取り合い等々もしっかりチェックしてゆきます。話は変わりますが、床材のアルダーが赤く血色が良い印象なのに対して枠、巾木に用いるタモ材は少し青みがかった印象なので、シンプルにWAXで拭くか?白を少々着色し壁の白味に馴染ましてしまうか?検討中です。

今日はレミオロメンなんていかが?http://www.youtube.com/watch?v=NaNFzYrnDSE

2012年11月8日木曜日

西野の家Ⅱ 基礎工事その2

連日の雨で、基礎工事には厳しい環境が続いています。しかしそこは工夫に継ぐ工夫!せっかく施工したコンクリートが雨で痛まないように打設した後に素早くビニールによる雨避け養生を行った「西野の家Ⅱ」の現場です。

風で飛ばぬように全て型枠にタッカーで固定し昨日の大雨を乗り切りました。ブログをお読みの方はもうお分かりと存じますが、建物の品質は、こうした地道な気遣いから生まれます。基礎屋さんや現場監督さんの機転に感謝したいと思います。特に北海道の晩秋の現場は天候を読みながら一歩先んじる意識がとても大切なのです。
昨年も悪天候の中様々な工夫がありましたよね~(笑)


発寒の家 板金工事

「発寒の家」の屋根はシート防水ですが、今日は板金屋さんが現場に入っています。その理由はスノコの下の腐れ止めや窓の下の水切等々のディティール(細部)をより完璧にするためです。

こうして梁の上に板金を貼って雨水が梁の頭を腐らせぬように工夫します。

写真は窓下の水切り。ここは厚物の0.8mmでシャープに折り曲げスッキリ仕上げます。「発寒の家」はシンプルな形状でモダンな印象を狙いますからこうした部分は強度に余裕を持たせながら必要最低限の厚さのイメージで仕上げてゆきます。

今日はヘンデルのサラバンドなんていかが?もともとはハープシコードの練習曲として書かれたそうですが、私のイメージではヘンデルというよりS.キューブリック監督の映画バリーリンドンのテーマ曲のイメージが強いです。貧民出身のバリーが当時の貴族社会の中で成り上がる様子を描き、照明から衣装まで全て18世紀当時のものを再現し撮影されたそうですが、重厚な調べに相応しい映像を得て名曲にさらに磨きがかかったように思います。ヘンデルも天国でうなずいているかも知れません。前書きが長くなりましたが映像付きでどうぞ!

2012年11月7日水曜日

前田の家 内外装工事

毎日、毎日雨ですね~...。みなさまいかがお過ごしですか。写真は無事に葺き終った「前田の家」の屋根です。一見普通の横葺き屋根に見えますが、実は無落雪タイプのものです。以前にもお話したようにここ最近は落雪する屋根は作っていません。三角屋根の無落雪がなぜ良いかというとひとつには、雪が落ちないために「建物のどの面にも玄関を計画できる。」ということが言えます。当然のように雪が落ちる三角屋根だと雪の落ちる勾配方向の面には窓や出入り口は配置し難くなります。要は三角形のかたちが正面に見える方向にしか玄関は計画し難くなってしまうことが、結果として間取りの自由度を狭めてしまうのです。

たとえば道路が北側の敷地の場合、通常だと玄関は道路に近く、反対に居間は南側といったように離れがちになります。両者が離れると双方を結ぶために長い廊下やホールが出来やすいのは想像がつきますよね~?(笑)しかし無落雪の屋根を使うことで、玄関を落雪を気にせず居間の近くに取ることが出来るのです。面積条件が厳しい事が多い住宅はこの長い廊下が必要か否か?は、実に大きな問題です。さらに敷地内に雪が落ちないならば、駐車や敷地内の通路も自由に計画することが可能になります。車の依存度が高い地方都市で、自家用車の置き場を敷地内に取れるか否か?これまた大きな違いですよね~?(笑)。

結局、屋根のかたちは三角が良い、間取りは極力自由に、面積は無駄なく使いたい。車は複数台敷地内に停めたい。といったような、建て主ならば皆当たり前に思う事柄が「雪を落とさなくてよい!」三角屋根ならば比較的楽に実現できます。

四角い陸屋根は形が要求(無落雪)を満たすという意味で素直なデザインと言えますが、シンプルな三角屋根の街並みや屋根裏の斜め天井の心地よさもなかなか捨てがたいと私は思うのです。そんな理由で「雪の落ちない三角屋根?」といった、一見矛盾するようなスタイルも私的には「あり!」と思います。もちろん世の中にはかたちが素直に機能や要求を満たすものこそ本物である!といった考え方や美学もあるとは思いますが、私はむしろ色々なかたちがあったほうが四角い屋根一辺倒よりも街並みが楽しい気がします。(笑)さてみなさんはどう思いますか?

窓を雨や雪から守る役目の雨切り屋根こちらは雪が少量落ちます。

さてこちらは内部の様子。アルダー材の床が貼りあがってゆきます。

厚みは19mm、巾は120mmという見事なアルダー材(ギターなんかの材料)のフロア。もちろん無垢材です。

今日はポリスなんていかが?

2012年11月5日月曜日

発寒の家 気密測定第一回目

さて、先週の「前田の家」に引き続き今週は「発寒の家」の気密測定です。こちらもU棟梁渾身の仕事で万事抜かりなし!Dr.タギの計測開始です。

結果は実にあっけなく...いえいえけして悪い方にではなく、良いほうにあっけなく0.1cm2/㎡が出ました。流石!武田社長にU棟梁、何もいえません。ほんの最近までは在来工法で高い気密化は構造上難しいと言われてきましたがそんな言葉が色あせて聞こえるほど大工さんや現場管理者の水準は向上しほんとうに感心してしまいます。不思議なもので最初は全員で苦労しながら、時には1時間以上にも渡り漏気部分を探しながら性能を出していたものがいつの間にかそのコツが身体化し、いとも簡単に達成できる様子はなんだか不思議な気持ちになります。(笑)
そう言えば、二年前の「南あいの里の家」では漏気部分がなかなか見つからず苦労しましたっけ?(笑) 「南あいの里の家」気密測定 http://ako-re.blogspot.jp/2010/10/blog-post_30.html


最近暗くなるのが早いですよね~、2階の南側の壁が全てガラス貼りの様子がよく目立ちます。もちろんブラインドを考えているのですが、そこから漏れる暖かな光が素敵な夜景として街並みに参加してほしいと思います。

今日はチャックベリーなんていかが?思いっきりロックンロールで(笑)!

西野の家 Ⅱ ケーシング取付

基礎のベース(底板)のコンクリート打設が終了した「西野の家Ⅱ」です。

各部の仕上がり寸法を埋め戻しの前に撮影しておきます。

次の工程は布基礎の壁部分に当たるコンクリートを打つために型枠を立てるのですが、その前に室内からの排水や引き込む電気の線などを通すケーシング(筒)を固定していきます。もちろん鉄筋を痛めぬように鉄筋のマス目の間に筒を固定するのですがそれが言うは易し...行うは難し。しかし、ふと見ると設備屋さんいいものを使っているではありませんか!(笑)黒いプラスチック製のホルダーで簡単に筒を固定しています。これなら簡単に移動も出来ます。

高さを揃えたり、間隔を合わせたりが簡単に行えます。写真はパッシブ換気の給気口。

左奥に見えるのは基礎断熱のための分厚い断熱材です。

今日はビートルズなんていかがでしょう?

2012年11月3日土曜日

前田の家 気密測定第一回目

今日は、「前田の家」の最初の気密測定です。登場するのはすっかりおなじみになったDr.タギ。一般に気密測定の限界は通常の機器で0.5cm2/㎡程度と言われています。しかし北海道の大工さんは、仕事の水準が高く、特に神経質にならなくとも0.6cm2/㎡程度は楽に出してしまいます。せっかく良い仕事をしても測定員の技術や機器の性能で正確に計れないのは張り合いがないですよね~?そこで登場するのがDr.タギというわけです。

I所長、I棟梁、設備屋さんや電気屋さんが見守る中で測定開始。最初は僅かな隙間がどこかに集中している。とのDr.の指摘で全員隙間探し。

テープの増し貼りやコーキングで漏気部分を止め、再チャレンジ!さて結果は...

なんと相当隙間面積C値は0.1cm2/㎡を達成!現場のみなさまおめでとうございます。
さて二回目もこの数字を維持できるように頑張りましょう!

さて今日はビールが美味しいですね~!ということでJUMP!

小室さんの体験セミナー

今日は、尊敬する先輩建築家の小室氏の体験セミナーに行ってきました。30年以上前から外断熱に取り組み、北海道を代表する環境建築家として全国的に知られています。私も最近よく使う0勾配のシート防水屋根や今や広く北海道で使われるようになった北欧製のトリプルガラスのサッシをメジャーにした建築家の一人と言ってよいでしょう。建物は保育園ですが、200mmのRC外断熱という理想的な建物の外皮(壁、屋根)ということです。この日はその穏やかな室内の気候を体験することを目的に無暖房状態のまま日本全国から100名を超える建築家や専門家が集まりました。私もいつの間にか実行委員になっていて(笑?)当日はしっかりお手伝いに行きました。

全国から集まった人たちを前に講演する小室氏。

北海道の建築家の良いところは立場にこだわらずお互い仲が良いことでしょうか。左が若手女性建築家の櫻井さん、右が毎回お世話になっているPS暖房機の広田さんです。

当初は少し寒かった会場は集まった人々の体温ですぐさま快適温度帯となり、東京から来た人などはこの後の懇親会で上着を脱ぐ人も...、外気温は7℃ながら室温は20℃で寒さをまったく感じません。写真でこうした上質な室内の穏やかさが伝わらないのが残念ですが、北欧の高級車と古い軽自動車の冬場の室内の差なんていえば少しは伝わるでしょうか?けして機械的に調整された空気感や空調感ではなくて、基礎体力として持っているポテンシャルが高い。そんな室内気候を感じさせてくれます。木造で私が作る300mm断熱もコンクリートやブロックの外断熱をお手本にこうした穏やかさを木造で再現できないものか?を目標にしているのです。

私も大きな影響を受けた宿谷先生のエクセルギーのお話し。もう最高でした!

2012年11月1日木曜日

建築ジャーナル誌に掲載していただきました。

建築ジャーナル11月号の誌面に8P掲載していただきました。



中には「西野の家」や

「銭函の家」

「南あいの里の家」に「菊水の家」

最新作の「宮ノ丘の家」や「春光BASE」なんかが載っています。文章に加え、図面や写真も全て山本担当でしたのでかなりたいへんでしたが(笑)よい記念になりました。こんなに幸せなものづくりができるのもクライアントさんや協力企業の皆さんのおかげです。心より深く御礼申し上げます。

ふと想えば、最近ずいぶんと執筆のご依頼をいただくようになりました。時代が少しだけ北海道の建築を見直しはじめたのかもしれません。以前は震災といえば耐震性のお話ばかりでしたがやはり3.11以降はそれらに加えてエネルギーと建物の関係性や真冬に暖房を失っても過酷な事故に陥らない知恵やその工夫に注目が集まるようになりました。30cm断熱の家を建てはじめて今年で10棟目になりますが、大工さんや協力企業のみなさんもずいぶんと腕を上げ、なによりクライアントさんの意識がいちばん高いことにはほんとうに驚かされます。先輩たちが苦労して築き上げた北海道の建築やその考え方が見事に根付き、「ネガティブな冬の欠点対応」から「年間を通じて過しやすく健康的な住い」へと成長しているように私には感じられるのです。

さて気付けば今年もあと少し、明日からまたしっかり努めます。

今日は今は亡きパバロッティのジョルダーニなんていかが?

2012年10月30日火曜日

前田の家 板金工事

前田の家は現在、屋根板金工事の最中です。ここ最近、連日の雨で工事が伸び伸びになっていたせいで板金屋さんの登場が待ち遠しかった「前田の家」ですがこれで安心。心置きなく内装と外装に取り掛かれます。

屋根は板金ですが北海道で開発された無落雪タイプのものを用います。屋根の長さは全長約14mですから屋根の一枚一枚も同じ長さの加工品を用います。


窓上の小屋根の役物や納め方を確認します。今回は最近の建築家がよくやるような薄く小さく軽くではなくて、ある程度のボリュウムをもったベーシックなスタイルの納まりで全体を考えています。クライアントの要望が「流行の」とか「最新の」ではなくみんなで長く住める家ということでしたので各部の見栄えもそこを大切にデザインしようと考えています。


外壁はもう仕上げの板が貼られるばかりになっています。快晴で風が穏やかな日の気密測定に向けて準備万端です。写真は通気層内部から室内側に漏気、漏水を防ぐためのテーピング。寿命の長いブチルテープを用いています。

こちらは小口径の100Φ。おなじようにテープ止めします。


今日はヴァンヘイレンなんていかがでしょう?

2012年10月27日土曜日

西野の家Ⅱ 基礎工事

ベース(底板)と布(立ち上がり部分)の配筋が終了し、保険法人の第三者検査に合格した「西野の家Ⅱ」。もうみなさんお馴染みですがさらにその後に私がチェックに入ります。別に嫌味なわけでもなんでもなく、監理業務というものは複数の目で見て何回も確認することが大切だからです。特にコンクリートは施工すると後から鉄筋を見ることが出来ません。そこで複数の場所を抜き出してチェックしてゆきます。

まずはトップ筋の本数と径、以前もご紹介したようにここ最近は、標準仕様の基礎でも長期優良住宅仕様の鉄筋量を増やした配筋で設計しています。写真はトップ筋が二本ある様子また径が13mmであることを確認したものです。

次は床下の人通口の斜め補強筋の確認です。写真の真ん中より上、斜めの鉄筋が見えますか?次は重ね継ぎ手の長さの確認です。写真中央に鉄筋の継ぎ手が来ています。トップ筋は13mmでしたから40倍以上の重なり部分が必要です。13×40≒52cm以上です。私の布基礎の縦筋と横筋の間隔は20cmのマス目ですので、もう一度写真を見て3マス目以上あるのでOK!といった具合です。

土の上に直接鉄筋を置くと、土の水分で鉄筋はすぐに錆びてしまいますよね?そこで6cm角のコンクリートのピースの上に鉄筋を組んで底にもコンクリートが回るようにします。この6cmをかぶり厚さといって基礎の各部で最低必用な寸法が決められています。そこで私たちは監理の際にそうした寸法を逐一測ってゆくのです。ところで鉄筋が錆びている!と気になった人はいませんか?この錆び、ピカピカになるまで磨いたほうが良いでしょうか?皆さんはどう思いますか?これは建築士の試験問題にもあるんです(笑)。正解は錆びは絶対落としてはいけないです。理由はコンクリートの付着強度が下がるから、もうひとつはコンクリートは強アルカリ性で錆びの進行を長期的に抑制できるからです。もちろんコンクリートも長期的には老化します。専門的には中性化といってアルカリ性の性質が少しづつ失われ、鉄筋の錆びの進行を抑制できなくなってゆきます。しかしそのスパンは平均的な使用期間を十分上回る長さなのであまり心配する必要はありません。

コーナー部分の斜め補強筋を確認します。

拡大した人通口周囲の斜め補強筋です。
出隈部分の重なりと、ピースの数、ねじれの無さを確認します。

現場から出土した強大な石。長さ1.5m、縦横0.7m重たくてとても場外に運び出せないのでコンクリート土間を支える下地として再利用します。これならば床が下がることはまずないでしょう。(笑)

さて3現場が揃ったところで今日はジャーニーでもいかが?

2012年10月26日金曜日

札幌デザインウイーク2012

みなさん札幌デザインウイークには行きました?毎年市内の会場を使って行われるデザインイベント。今日は若手建築家の集まりUN40(アンダーフォーティー)の展示を見てきました。


ブースに立ち寄ると紙で簡単な家の模型が作れます。全長20mの模型の街路に出来たお家をどんどん置いてゆき、イベントの開催中に街並みを完成させようという試み。見知らぬ市民同士が共有する「つくる喜び」そんな感じで私も3軒ばかり作ってきました。ぜひみなさんも街にお出かけの際は大通り地下歩行空間に寄り道してみてはいかがでしょう?きっと楽しめますよ~(笑)

札幌デザインウイークについて詳しくはHPまで http://www.sapporodesignweek.com/2012/