「福井の家」の見学会、二日に渡ってたくさんのご来場を頂きました。チーム福井を代表して心より御礼申し上げます。
「福井の家」は44棟目の300mm断熱の家。また札幌版次世代住宅基準の最高位プラチナグレードとしては3棟目、北方型住宅ZEROの基準も併せてクリアしています。
住まいは長く住むものだし・・後に残せる家にしたい。そんなことを漠然と考えながら始めたのが「300mm断熱プロジェクト」地域の蓄積と材を使って、容易に陳腐化しない家を作る。事務所開設以来のモットーです。
間取りは雪のある暮らしを前提に考える。家中から有害な暑さと寒さを取り除く。巷に溢れかえる安っぽい価値観や材料使いに惑わされない。
あらためて100年前の名建築の写真をたくさん見返して、なぜ今でも古く見えないのかを考える機会となりました。
作り手として貴重な機会を与えて頂いた住まい手さんに心より感謝申し上げます。
LDは視界の唯一抜ける二階に設けました。大きな窓から見える風景は生きた絵画のように季節を伝えてくれるでしょう。これからは春の新緑、こぶしや山桜が楽しみです。
窓辺に置かれた円卓は建て主さんの希望。どの位置に座っても視界が抜けるように考えました。
キッチンからLDに視線が抜ける感じも小さな家の設計のコツ。もう少し専門的に言うとタイルの壁と上の梁の間も抜いて視線や光が行き来できるようにします。こうすることで空間が複雑に連続する感じが出て奥に何があるのかな?と引き込まれる空間の魅力が生まれます。気配だけ感じさせて、オープンに見せ過ぎるのはかえって空間を狭く単調なものにしてしまいます。
階段は美しくて頑強な白樺の合板で作ります。お子さんが落ちぬように手摺子の間隔は11cm未満。薄くても強度の高い白樺合板なら、通常は3cm以上は必要な階段の踏み板を僅か2.4cm厚で作ることができます。
スケルトンの階段ですから下に潜った際に頭をぶつけぬように角を斜めに面取りしてあります。1段の高さは、一般的な20cmではなく18cmで緩く穏やかに。上がるの楽、降りるのも怖くない・・北方型住宅の階段仕様で作っています。
ボーダータイルで仕上げられた洗面コーナー。目地色を壁の石膏壁紙と合わせて、スモーキーな光で明るくフレッシュな印象に。大切なポイントはタイルと金物以外の光沢を落とすこと。窓の光に照らされて壁紙が光ると台無しです。
また洗濯乾燥室を兼ねる一角に洗面コーナーがありますから、外から覗かれぬように窓は曇りガラスにするのが一般的です。実は曇りガラスにはもう一つ素晴らしい特性があります。外の光を細かな光の粒に分離して部屋中に振りまくという性質。専門的に言うと光の拡散性を高めて小さな窓でも部屋中を均一な明るさで満たすというものです。
水廻りって・・どうしても日当たりの良い位置には取りにくい。そんな時にこの窓のテクニックはすごく使えます。
住まい手さんの仮住まい時代がアパートだったりすると・・洗濯脱衣や洗面所、お風呂にだって、窓なんかないのがむしろ当たり前。不幸にもそうした本来は望ましくない空間体験を受け入れて、好きになっちゃうという人も多い。
なぜ戸建て住宅で採光や換気が自由にできるのに、昼間から真っ暗で使うたびに電気をつけなきゃいけない水廻りがいいんだろう? まあ住んでもらうと一目瞭然なんですが/笑・・
こちらは玄関に入って正面の花台。視線が中央に集まるようにタイルの瑠璃色に相性の良い網代を建具に貼っています。建具を床から10cm浮かして花台が軽やかに浮いて見えるようにしました。フローリングの貼り方向も視線を奥に引き込みます。もう少し細かなポイントはといえば・・タイルの瑠璃色に合わせて目地を薄い灰色に落としてタイルの質感を邪魔しないようにしているところ、寸法は同じながら凹凸感の異なるタイルを混ぜて、近くで凝視されても鑑賞に堪えるようにしているところです。手摺の黒も玄関の印象を引き締めています。
かっこいい・・今日はReiなんていかがでしょう