2017年9月10日日曜日

帯広の家 外壁解体工事

外壁の解体が終った「帯広の家」。外張り断熱材(XPS)の表面に防風透湿シート(タイベック)はなく直接通気胴縁を打っていた。この後一部、減築の際に外壁がXPSの3種50mmではなく1種100mm(50mm×2)であることが判明した。十勝の厳しい寒さに配慮して札幌に多い3種50mmではなく1種100mmとして断熱性を上げようとしたのだと思う。30年前の建物にもかかわらず断熱施工も丁寧で1層目と2層目で縦張りと横張りに断熱材を張り分けてジョイント部分からの漏気を極力抑えようと苦心した様子が見える。しかしそうした努力もむなしく、解体前の気密測定によれば差圧計測不能。すなわち相当隙間量が大きすぎて排気機を最大限回してもほぼ圧が掛からない状態。要は窓を全てピッタリと閉めてもたいへん風通しの良い状態であるために、見かけ上の断熱性能は立派ながら気密性の低さが足を引っ張り、本来の性能を引き出せない状態である。

現在なら外張り断熱固定専用のパネリードビスがあるが当時は通常の釘とビスを工夫して使いながら外壁の外側に100mmもの厚さの断熱を留めつけている。

こちらは外屋と外壁の取り合い部分。雨仕舞いが悪く屋根の雨水が壁の通気層に流入し通気胴縁を腐らせ、ほぼ消滅させている。また屋根垂木が外壁の断熱材を突き破っているのが見える。外張り断熱工法にとって厄介なのは意外にもこうした断熱材を貫通する小屋組みなのだ。板状の硬い断熱材にとってこうした貫通部分の隙間を埋める副資材(各種の気密テープ類やバックアップ充填材、現場発泡ウレタン)が揃ってはじめて性能を発揮できる。また現在なら予め断熱工法ごとに最適な構造を選択してこうした貫通部分をそもそも作らない。といった意識で設計するだろう。しかし当時は外張り断熱に配慮した構造ではないばかりか、外張り断熱の特徴である板状断熱材補助する副資材も充分ではなかった。そのために本来の優れた特性を生かせなかったのだろう。

こちらは外屋の上。屋根の鉄板が壁の断熱材の表面で織り上げられ、その上に通気胴縁が伸びて45cm間隔で鉄板を押さえている。通気胴縁で押さえられているところはまだよいが、胴縁と胴縁の間は鉄板の口が天に向って開く。通気層の中に雨が走るとこの開いた口から鉄板の裏に水が回りやすい。

屋根も外張り断熱とするために、一見陸屋根風に見えるが実は極緩勾配の片流れ屋根である。したがって雨の落ちる軒を少しだけ外壁から出すために垂木が壁(断熱材)を突き破っている。当然貫通する垂木の廻りの断熱材は細切れになり、気密性は著しく低下する。その一方で同年代の充填断熱の家に比べて構造材のダメージはむしろ少ない。皮肉にも通気性の良さが構造を守ったのだと思う。もうひとつは解体時に出るごみが少ないこと、ブローイング等が小屋裏に全くないので解体が楽である。次回は外側から壁の気密を確保し付加断熱を加えるのと小屋組の断熱強化と気密施工を行う。
 
今日はビートルズなんていかが