点検補修工事が完成した「西岡の家」。すっかり竣工当時に戻った印象ですね~(笑)これから庭木の剪定を行います。
ちょっともみじが伸び放題。日射遮蔽には悪くないのですが。(笑)
こちらが性能向上リフォーム前の「西岡の家」(竣工1976年)。当初、給湯の熱源はプロパンガスでした。その後2009年の性能向上リフォームで北海道R住宅として再生した際、暖房も給湯も電気(生炊き電気のオール電化)に変わり、2011年の東日本大震災以降、電気料金の度重なる値上げにより、今回の灯油熱源による給湯と暖房に到りました。1976年から2017年まで41年間の間に3回も暮らしのエネルギーを見直したことになります。想えば、2009年の性能向上リフォームの動機は「寒くてたまらないから」、2017年の動機は「コストを掛けねば暖かく過せなくなったから」です。両者の表現は異なりますが、実はその根底には「寒さ」が共通する課題として存在しています。1976年の竣工当時も2009年の性能向上リフォーム完成時も国の定めによる断熱性はクリアしていた「西岡の家」・・・しかし今にして思えば、それは住い手にとってけして充分なものではありませんでした。
人は弱いもので「○○年度省エネ基準達成!」などと言うとすっかり作り手も住い手も安心して騙されてしまいがちです。本当はこうした事実を見ても明らかなように北海道の住い手にとって未だに充分な断熱水準など満たされていないし、作り手もどのくらいの断熱をしていいのか分っていない・・・それが本当のところなのだと思います。
300mm断熱に取り組み始めて約10年ですが、ほぼ全ての住い手さんから寒さに関する悩みは聞かなくなりました。オーナーの中にはオール電化の人もガスの人も主にペレットや薪ストーブが好きな人もいますが、エネルギー価格の高騰を切実に訴える人はいません。断熱によって一年を通して室温が安定するとエネルギーはなんでもよくなってしまいます。正確に言えば必要な量が大幅に減るので室内を暖めることも冷房することもとても簡単になります。家計を気にする必要が減り、家に居ることが大好きになることも300mm断熱の特徴です。最近ではずいぶん少なくなりましたが稀に老人の中には「断熱なんてすると暑さや寒さの感性が麻痺して鈍感な人間になる」という人がいますが、現実は真逆です。300mm断熱に住まう人の多くが夜、照明を点けただけで室温が上がるのを体感できるようになり、子供の友人が数人遊びに来ていたのを帰宅後の残留熱から感じ取れるようになります。以前は暖かい、寒いしか言わなかった人が非常に繊細な温熱感を示し同じ室温なのに「曇りの日はちょっと寒いね」なんて言います。熱画像カメラで見ると窓辺の日射による輻射熱の変動を敏感に感じ取っていることが分ります。同じ新築世代として友人の家を訪問する際に僅かな階段の気流感に気付くのも特徴です。どれも300mm断熱の家を作り続ける中で住い手さんから教えられたことばかりです。
これからもこうした事実と時間の経過に目を凝らし、輝きを失わない住いを作って行きたいとあらためて思いました。貴重な気付きと学びの場を与えていただいた住い手さんに心より御礼申し上げます。
今日はエスペランザ スポルディングでWhat A Wonderful Worldなんていかが