そろそろ新年の気分も抜け、再び通常速度に復帰した「西野の家Ⅱ」の現場です。現在はすっかりおなじみになった「ほとんど3軒分断熱工事」(笑)に取り掛かっています。既に外貼り断熱の14cm分は完了し、かなり断熱材が減った状態でも、ご覧の通り2階の天井に届きそうな勢いです。写真だけ見ると「使いすぎでは?」とお思いの方も多いと存じますが、実際はその反対。こんなに寒く、近年は夏さえも厳しい地域なのに北海道で一般的な断熱仕様は本来必要なものの半分程度に過ぎないのが残念です。
世界的な潮流から見れば、地域を問わず建築の要点に「広義の断熱」の概念を据えるのは常識になりつつあります。従来のように寒さのみを撃退しようとして消極的に行う断熱は誠に後ろ向きな感じがしませんか~?(笑)
そんな心の奥底には、必ずといってよいほど 「本来、寒くなければしたくないのに」 という恨み節的な意識が生まれます。おなじく「北海道の建物は高断熱高気密!」といった根拠に乏しい「勇ましいイメージ」も同様です。類似した気候を持つ他の国の住宅と断熱の水準や気密の数値を比べて高低を論じるなら分かりますが、北海道の建物を根拠なく「高○○、高△△」とイメージ化して発信することは誤解を生むばかりかむしろ自らのよさを損なわないか心配です。
そろそろ意識を変えませんか!
断熱を単なる「冬の寒さの欠点対応」と狭く捉えることをやめて、一年を通して欠かせない住いの知恵と考えるとまったく違った景色が広がります。
寒さばかりか暑さを防ぎ、平時は燃費良くエネルギー消費を改善し非常時には自宅非難の容易さと生存率も高めます。部屋同士の温度差を穏やかにすることでヒートショックによる事故を減らし、暖房機の周囲のみならず家全体を生活の場として使うことが可能となります。精神的には寒さを楽しむ余裕が生まれ、その余裕が従来ネガティブな印象だった冬を豊かな恵みとして再認識させてくれます。
断熱はたいへん簡単で地味であります。 ダ.ン.ネ.ツ...響きも冴えません。(笑)
しかし現在、困難といわれている多くの問題を解決できるポテンシャルを秘めている古くて新しい概念なのです。
日射遮蔽(窓からの日射で室内がオーバーヒートすることを防ぐ工夫)と雨や雪から高価な木製サッシを守るための庇も完成しています。
写真奥の赤いミシン目が防風透湿シート(*:この下に外貼り分14cmの断熱材があります。)、次が通気層、一番手前のベージュ色の板が石膏ボードです。
こちらは石膏ボードを貼る直前の写真。四角い穴の中を空気が通ります。
昨年12月に完成した「発寒の家」ではサッシの組み立てと取り付けを専門の職人さんが行いましたが今回は接合部分も含めてU棟梁の指揮のもとに大工さんたちが行います。私が選ぶ木製サッシは主にガデリウスのエリートフェンスターが多いのですが、それらの特徴を熟知し考案した接合部分を確認してゆきます。
写真は4つのサッシが集まる接合部分。設計で最も重視しているのは後から容易にサッシを交換できるように納めることです。残念なことに北海道で一般的な樹脂サッシのほとんどは後に交換することを考慮したものではありません。今後開口部は現在より遥かに性能の良いものが出来るでしょうから、その時に建て主さんが困らないように室内側からカームスクリュー(木の変形を調整できるタイプの金具)と木ねじを用いて取り付けます。
こちらは屋外の独立柱の足下です。今回はバフ掛けしたステンレスで作ってあります。
壁から約50cm突き出る庇は内側に補強のプレートを入れて、大人が上に乗ってもびくともしないように改良してあります。