2012年11月17日土曜日

計画する

 クライアントさんから託される敷地はどれもみな個性的です。当然ながらひとつとして同じものはなく、間取りや外観は建て主の好みをはじめ周囲の景観やら家族の属性やら予算やらお父さん、お母さんの理由ナシのこだわりや、「無意識の意識」によって決まってゆきます。最近ではよくコストパフォーマンスを褒めていただけるようになりましたが、実は「無意識の意識」こそ計画案をクライアントさんとやり取りする上で欠かせません。

 この「無意識の意識」を簡単に説明すると「気付き」にほぼ近いと言えるでしょう。クライアントさんの多くは住い手としてはプロであっても間取りのプロではありません。図面として間取りを見ただけで「実は視線が北西側に抜けるから景色を楽しみながら、狭く感じませんよね~この部屋!」な~んてずばり設計の意図を指摘できるクライアントさんはほとんどいません。当たり前か!(笑)

 たとえば私がこのお部屋6畳くらいでよいでしょうか?とお聞きしても6畳がその部屋にとってちょうどよいのかどうか判然としない。吹き抜けにしましょうか?とお聞きしても吹き抜けにしたら部屋が寒くならないか?なにか他に想定外の事柄が生じないか?が気になって決められない。というのが現実ではないでしょうか?けしてクライアントさんを悪く言うつもりはなく、実は自由に設計できることは嬉しい反面、図面から実物をイメージして、納得して意思決定が出来るまでにはみなさん かなり時間が必要です。



そんなときに特効薬があればよいのですが、なかなかそうも行きません。そこで工事中の現場やら完成後の現場にクライアントさんを連れ出す機会が増えるのもこの時期なのです。図面で見たイメージが空間として出来上がったときにどんな風に感じるものなのか?図面と実物の体験を積み重ねることで、読めなかった図面が不安なくイメージできるようになります。さまざまな空間を引き続き体験することで、不安が理由で食わず嫌いだった空間や間取りの偏見が晴れて行くのも大きな自信につながります。こんなふうに考えると、完成した家を眺めるよりも、工事途中の現場を時間の流れと共に見学しながら空間として出来上がる体験を共有することのほうが実は得るものも大きいのです。近年では、インターネットから得た誤った空間イメージや思い込みもこうした実体験を通して、自ら気付く機会が増えています。やはりリアルは強し!なんですね~(笑)