2020年6月27日土曜日

常盤の家 現在の様子

家の前に雁木空間が出来上がった「常盤の家」。積雪寒冷地である北海道の住まいは冬場の通行を確保する必要があります。そんな時にこうしたアプローチ空間は大活躍します。

冬場の重労働である家の前の雪かき・・・経験者ならお分かりでしょうが、雪の多い12月末から2月にかけては・・毎日忙しい朝方がかなり大変です。

そんな雪の多い北海道の住まい手にとって除雪作業の軽減は長年の望み・・こんな風に計画しておけば除雪は雁木と前面道路の間をほんの少しだけ行うだけで、手軽に冬場の動線が確保できます。

屋根はここ10年以上愛用しているシート防水。非常に堅牢で極端な話し屋根勾配が0でも漏ることがありません。

一番上の写真のように雨の後は多少表面張力で屋根面に薄い水の膜ができますが、防水上はなんら問題はなく、勾配もありませんから、特に冬場の落雪を止めたい北海道の屋根にピッタリな工法です。

家の中には石膏ボードが貼られ空間がどんどん出来上がってきました。

板目の美しい針葉樹合板をピシッと目透シ貼りしてくれる宇野棟梁。木目が見える白と茶色のステインで仕上げます。 
玄関ドアを見ると壁の厚みがすごく良く分かります。厚みは36cm。近年札幌で建てられる一般的な住まいの約二倍の断熱量。ここ最近増えてきた200mm断熱のような高性能住宅と呼ばれる家と比べても約1.5倍くらい断熱をしています。

理由は一般の人が「体感」(違い)を認識できることを最重視しているからです。

特別な住まい方をした場合にのみ性能が出る住まいではなくて・・ほぼ今までの感覚で住めて簡単な約束を最低限守れば、夏も冬も気持ちの良さが簡単に体感できる。

そんな住まいを目指しています。

一般の住まい手さんが、極力新しい家の住まい方にあれこれ悩まなくていいように・・・

そんなことより週末の焼き肉や家族のキャンプの予定、庭や畑づくりを楽しめるようにそんな住まいを目指して行きたいと思います。

今日は週末・・モンドグロッソでも聞きながら小樽の計画を進めよう




2020年6月22日月曜日

住宅の木外装が身近に

北総研(北方建築総合研究所)より画期的なニュースが届いた。

2020年現在、北海道で当たり前に建つ木造住宅の多くが壁内に100mmのグラスウール(以降GW)を充填して更に外壁側に付加断熱を加えた構造をしている。従来は壁内に充填する断熱材はGWのような繊維系断熱材が多かったが付加断熱に関しては、繊維系、ポリスチレンボード系、フェノールボード系と様々で、同じ系列でも各社の防火認定の違いで選べる外装材に制限がある場合もあった。

そこで北総研では木外壁のための新たな防火構造を一から開発するのではなく、既に誰でもやっている構造を上記の3系列ごとにまとめ、まずはフェノールボード系断熱材を付加断熱に用いたグループで防火構造の大臣認定を取得することに成功した。

今後は同様に繊維系グループ、ポリスチレンボード系グループと順次、認定を取る予定で、一気に住宅の木外装が身近になる。


例えば、道内には美しい道南杉、カラマツやエゾ松、トド松なんかがたくさん植林されているが今後は家の外装としてもより身近なものになって行くだろう。

また今後は同様に全国でご当地の銘木を外装に使った住まいが増えることが楽しみでもある。
今日はゲス極なんていかが


2020年6月19日金曜日

宮の森の家Ⅱ 気密測定一回目

本日は「宮の森の家Ⅱ」の気密測定の第一回目。結果はC:0.1cm2/㎡と最高でした。特に気密に関するディテールは断熱の品質と耐久性に直結するために2009年から防湿&気密層を傷付けない納まりを始めましたが、その間にお付き合いさせていただいた多くの工務店さんから様々な改良点をご提案いただき、10年以上に渡り改良を積み重ねてきたものです。そんな中、当現場が初めてのお付き合いになるヨシケンさんの大工さんの手によって良い結果となったことは設計者としてもひと安心。それと同時に、協働という対等な目線のコミュニケーションがいかに大切か、また今まで様々な改良点のアイディアを頂いた工務店さんたち、現場で実践を重ねてくれた棟梁さん大工さんたちに心より感謝したいと思いました。 
室内側に気密層がある納まりは、耐力面材の外側に気密層がある納まりと比較すると対結露上はより安全側になるものの気密シートの連続が複雑で数字は出難いです。

厚手の気密シートは挟み付けることで性能がぐっと上がりますから、従来の気密施工の名人たちは室内側の石膏ボードを全て貼った状態で気密測定をしていました。

但しこの工法はもし万が一漏気が分かっても治す術がありません。理由は簡単で漏気部分は既に石膏ボードで覆われてしまっていて目視が困難だからです。そもそも石膏ボードを貼ることで気密を出しているのですから、ボードを外しながら漏気部分を見付けることも状況を難しくします。平たく言えば室内側の石膏ボードを用いた従来のボード気密とは一発勝負・・コツを体得した名人限定の工法とならざるを得ない点が課題でした。

果たして目の前の気密施工が満足すべきものだったのか?改善点があるのか?を確認し、仮に後者ならその時点で対策を行う余地を残すためには写真のように気密シートが目視できる状態で気密を出す納まりが必要でした。 
こんな感じで室内側の細い間柱で気密シートを挟み付けて、シートが見える状態で気密測定が行えるようにします。

言ってしまえば簡単ですが・・ここまで来るのに意外に時間が掛かりました。

今日はスカパラなんていかがでしょう


2020年6月18日木曜日

宮の森の家Ⅱ 上棟式

昨日は「宮の森の家Ⅱ」の上棟式でした。午後から現場を片付けて掃き清め、宮司さんをお呼びしました。

朗々と響き渡る声で建て主さまのご繁栄と家内安全そして現場の無事故と安全を祈念していただきました。

想えばこうして上棟の日を迎えるまで、気付けば3年の歳月が経っていました。幸運にも他の現場の忙しさにかまけていた自分はおめでたいことに、本来の上棟の喜びを忘れていたように感じました。

つい昨日まで・・図面の中にしかなかった絵が現実に変わる驚きと喜び、日増しに出来上がる姿に私たちも、住まい手さんもどんどん日々の楽しみが増して行きます。

世間ではコロナ禍と言われますが、日常がほんの少し変わることで・・毎日忙しいと働いていたことが・・いかに幸せでかけがえのないものだったのかを想い出しました。 
コロナが原因で亡くなられた方々や今も闘病を続ける人達には心よりのお悔やみとお見舞いを申し上げます。また毎日、命がけで治療や看病に当たる医療従事者の方々、インフラを支えるソーシャルワーカーの人々には感謝と応援の気持ちを捧げます。

その一方でそうした多くの尊い犠牲を通して頂いたチャンスをけして無駄にすることなく家づくりに打ち込めることに感謝したいと思います。

今日はピアノが聞きたくなりました。


2020年6月13日土曜日

宮の森の家Ⅱ 断熱&気密工事 室内


宮の森の家Ⅱはほぼ・・来週から外装材が貼れる状態にまで到達しました。しかし・・午後から急に降り出したひどい雨のために・・多少外仕事を残した状態で、内部の断熱&気密工事に予定を変更。

北海道の大工さんらしいきれいな壁の105mm充填グラスウール。グラスウールは最も安価な断熱材であると同時に最も丁寧に充填しないと本来の性能が出ない難しい一面も持っています。そこを充分理解した上で施工や設計をしないと図面上の厚みは充分でも 、実際の性能はその半分の家と変わんないよね~なんてことにもなりかねません。
上の図は繊維系断熱に慣れた施工者や設計者ならお馴染みの図ですが・・GWの充填とは中々コツを要する作業で例えば上から3番目のように間柱の際でほんの少し無理にGWを押し込んだだけで本来100mmのGWが実は46mmしか効いていない!(ショック!)というものです。要は図面に100mmと書いたから100mmの断熱が出来上がる訳ではなく施工次第で50mm断熱かもしれないしもっと悪いかもしれないと・・だからGWは本当に丁寧に丁寧に入れないといけません。

実際にこの絵を知らない大工さんや監理(管理)者はこうした施工を当たり前のように見逃してしまいます。同じ厚みで断熱したはずなのに・・暖かい家と寒いとクレームになる家があるのは、この基本的なコツを知っているか否か・・なのです。

こんな風に丁寧に充填します。丁寧に施工できさえすれば最も安価なGWは一転、最も費用対効果の高い断熱材です。

熱橋となる部分の羽子板ボルトや金物類は予めしっかりウレタンにて防露対策をしておきます。

広幅シートを充分な重ね代を取って先張りシートと連続させます。

外部とつながる部分はケーシングを打ち込んでこれからガスケットを被せて周囲をテーピングします。
今日はPIZZICATO FIVEなんていかが

2020年6月12日金曜日

常盤の家 内装工事 枠付け

「常盤の家」は内装工事の枠付けに到達しました。写真は巾木廻り。床との間に目透かしラインを入れて床がスッと壁の中に吸い込まれるような感じに仕上げます。巾木の厚みはほとんどボードで隠れるためにスッキリ納まります。

通常の作り方なら、まず石膏ボードを貼ってその上から必要な長さに切った巾木を貼ります。その一方こうした先付け巾木はまず巾木を決めてからでなくては石膏ボードが貼れません。

こういう仕事がしっかりこなせるのが棟梁の腕。宇野棟梁よろしくお願いします。 
枠も留めたところが石膏ボードの厚みで隠れてしまうようにしっかり目配りします。

こちらはドアの三方枠。しっかり45度に切った留め切。きれいです。もちろん枠は全てタイコ面の加工済み。手触りが優しいこと、造作材である白樺合板の断面の模様を一番きれいに見せてくれる細工であること。そんな理由でよく使います。

こちらは階段の段板廻り。90℃方向にボードが貼られ、一部巾木が絡み・・・といういわゆる脂っこい部分。しっかり打ち合わせてきれいに納めます。

パッシブ換気の戻り空気を回収するための階段スリット。夜間はフットライトにもなります。(笑)

針葉樹合板と段板の間に5.5mmの目透シが取られ、階段下の機械室の明かりがスリットからちらりと漏れるいつもの感じです。

今回は階段の幅で蹴込板を切らないで階段の全幅まで伸ばし、登り口の人がちらりと上を見上げると白樺合板の美しい積層模様が見えるという趣向。

さて明日はまた週末。しっかり打ち合わせをして日曜はしっかり休みたいと思います。

今日はクールセイダースなんていかが



2020年6月11日木曜日

事務所の椅子


事務所で打ち合わせに使っている椅子も匠工芸さんのもの。この椅子はカタログモデルではなくて、私の事務所のオリジナルモデル。デザイナーは同社の元専務、中井啓二郎氏。元々店舗用に作ったスツールをリデザインし、色々と我がままをお願いしながらダイニングチェアに作り替えていただきました。

そんな椅子に私の事務所でクライアントさんは何時間も座り・・打ち合わせをするわけですが・・その中でかなりの確率の人が、座り心地の良さから新居の椅子に指名するという、誠に光栄なプロダクトなのです。(笑)
基本はナラ材。座面は編み込みで重量は軽く堅牢でシンプルなデザイン。座面は紙テープと布テープが選べます。写真は紺色の布テープ

こちらは生成り色の紙テープ。特に紙テープは長期間使っても耐久性抜群でほとんどヤレた感じが出ないです。
こちらはナラ材のフレームにグレーの紙テープを編んだ「澄川の家」のダイニングセット。天板は中折れ式で、跳ね上げると6人掛けに。クリナップ直需事業部さんのキッチンに半分取り付けられているのでテーブル脚は1本で足元がスッキリしています。
                   

こちらはオーソドックスな4本脚のテーブル。好きな位置に移動ができます。

こちらのダイニングテーブルは脚まで啓二郎デザインです。

脚はテーブルの真ん中に集められVの字の脚で、いわゆるお誕生日席に座った人の足回りを確保しつつテーブルの周りに人が寄り付きやすい形を目指しています。

腰にピッタリとフィットすることと肘の掛けられるリラックスしたデザイン。座面は四角くて程よい大きさなので半あぐらのような座り方にも対応します。ぜんぜん派手じゃあないんですけどいつまでも飽きない暮らしの中のデザイン。啓二郎さん最高だと思います。(笑)


匠工芸HP https://takumikohgei.com/ 

今日は雨・・J・サンプルなんていかがでしょう。


  

2020年6月10日水曜日

匠工芸さんへ

6/6(土)はクライアントさんと共に匠工芸さんへ。もちろん事前に人数を告げて混み合わないようにショールームを予約して伺いました。

写真は匠工芸さんのお宝デッドストック。今では中々手に入り難い貴重な広幅無垢板です。

コロナ禍で長らく中断していた家具選び。ほぼ二カ月ぶりに外出できたという人もいて、家づくりの実感が束の間戻った感じでした。

実は以前から生産者さん訪問には力を入れていて、現場の大工さんのみならず床材や羽目板、家具等の工場見学をクライアントさんと一緒に企画してきました。

今や私たちの周りには様々なコンビニエントで溢れていますが、そうしたサーヴィスの多くがグローバル企業と安い海外の労働力に依存しています。知らずにそれに慣れてしまえば、地域で生まれる素晴らしい製品や職人たちと出会う機会も、払うお金もまた地域には落ちません。

急に私たちの暮らしを全て地場産に戻すことは無理でも、家づくりを通して地域の作り手とつながる機会、良質な家具や仕事を知る機会を用意することはここ最近、自分のライフワークになっています。

どれも気合の入った工具たち。古いものだと40年以上前のものも現役です。少しづつ調整しながらカスタムし、癖を掴んで使っているそう。

二代目に当たる桑原専務。材料の搬入から加工の流れを説明してくれます。匠工芸さんの特徴は製造ラインがない所(笑)。

普通の家具工場だと看板商品の流れ作業のラインがあって各担当が一日一杯、専門の仕事をこなすのが普通。要は磨き担当は磨きだけ、組み立て担当は組み立て、塗装担当は塗装だけ・・みたいな感じ。

対する匠工芸さんは案件ごとの担当制。担当者が責任を持って材料の加工から組み立て、仕上げ、発送まで関わります。つまり担当者は仕事をほぼ全部覚えないといけないわけです。現社長の桑原さんの目指すのは、全体に目配りができる良き家具職人であって優秀なライン担当ではない。そんな社風を感じました。自身が技能五輪世界大会の日本代表として銀メダリストを獲得した一流の職人でありながら、徹底的にその技を若き職人に教える姿は27年前に初めてお会いした時からぜんぜん変わっていません。

「山本さんのパッシブ換気の床ガラリはうちの若い職人さんの最初の仕事でもあるんです」と桑原専務・・最初は工場のごみの中にローズウッドやらチェリー、ウオルナット、オーク、アッシュ、エルムなんかの端材を見つけたのがはじまり・・丁度パッシブ換気の床ガラリに良いものがなくて・・「これ、自分が図面引いてデザイン起こすから床ガラリにしてよ」なーんてお願いして作ってもらったのがやや10年くらい前・・・時が過ぎるのは早いです。
その後、床ガラリはこれまた白樺のエコシラ合板の枠を得て今や山本設計のトレードマークとなりました。

もちろんガラリの裏には、匠工芸の焼き印付き!

匠工芸HP https://takumikohgei.com/

こちらは打ち合わせロビーに置かれたデッドストック。

椅子は絶版のyumiシリーズ。材質は貴重なブラックウオルナットです。

鳥も飛んでます。

一番大きなペリカン

今日はMOUMOONなんていかが



2020年6月4日木曜日

宮の森の家Ⅱ 外装直前


宮の森の家Ⅱは外部の防風透湿シート、主屋以外の防水と板金、がほぼ完了した状態まで到達しました。
主屋のヨコブキ210S(無落雪タイプの横葺き板金屋根)と軒先の包み込みが完了すれば、外装を始められます。


低層部のアプローチ部分はお馴染みのシート防水の0勾配屋根。写真は下に落水しないようにするための仕掛け。 
ヨシケンさんの板金屋さんは斎藤板金さん。山本設計のデイテールは始めてですが、見事に再現して下さいました。

㈱齊藤板金HP https://saitoubankin.net/

西日除け用の袖壁と日射遮蔽のための庇を作っていただきました。 
いつもは30×18の押し縁を使いますが、今回はヨシケンさんと相談して45×30の押し縁を用いてより力強く外壁を見せたいと思います。写真は板金による水切りですがこの下に押し縁が納められて外壁が完成します。

今日の午後から天気は下り坂とのことですが屋根、外壁共に安心な状態です。

今日はJAZZね~7月着工の「南円山の家」の図面を聞きながら描いています。