7/12(金)は「桂岡の家」の気密測定を行いました。
恐らく完成直後から・・・約50年間に渡り、様々な断熱改修を重ねてきた「桂岡の家」。しかしその試みの多くが必ずしも住まい手に取って満足すべき結果をもたらさなかったことは、家の各部を解体し調査を重ねる中で充分感じることができました。
断熱材だけでも2回に渡る大きな改修の痕跡が見つかり、創建時の5cm厚のグラスウールに1回目の断熱改修ではアルミ箔付の5cmのグラスウールを増し張りし、2回目の断熱改修では床32坪分全て5cm厚のボード状断熱材(XPS)を追加する等・・・住まい手の寒さに対する苦労が偲ばれました。
開口部に至っては内窓の樹脂サッシへの交換や風除室の設置、居間の窓を樹脂製断熱サッシに交換する等・・・当時の寒い家がたどったお決まりの「部分断熱改修」の終わりなき道をあらためて再確認することができました。
当時も「窓は熱の逃げ道」とか「絶対的な断熱性の不足」等々・・・専門家の言うことは今とあまり変わりませんが、ほんの少しだけ変わったことがあります。それは50年間の間に積み重ねられた膨大な実践によって、「原因と結果」が概ね明らかになったこと。もう一つは「原理的には正しくとも実践の難しいものとそうでないもの」が少なくとも地元では広く知られるようになったことです。
想えば・・・50年も掛けて亀のような進歩だと笑われてしまいそうですが、そのささやかな知識に照らして見ると「桂岡の家」の苦労の原因が今では明快に分かります。
その原因とは主に二つ。
一つ目は断熱性の改善が部分的な断熱改修の積み重ねで解決すると思い込んでしまったこと。
二つ目は断熱性の向上にとっていかに気密性と防湿性が大切かを理解していなかったことです。
真剣に断熱性を向上させたいのなら、今年は玄関フード、来年は窓だけ、再来年は屋根の断熱を増やして、次は壁、最後に床・・・のような考え方自体がそもそも無理筋です。「桂岡の家」では窓の断熱性と気密性を上げることによって一旦は窓辺の寒さや結露が減りましたが、その代わりに今まで結露などしなかった和室の天井が結露し始めたり、窓からの漏気が減った分、壁内の通気量が増えてぜんぜん暖房費が減らないというジレンマに陥りました。
壁を解体した時に出てきた黒く汚れたグラスウールは暖房で暖められ多くの湿気を含んだ室内空気が大量に壁内を通過したときに生じる特有の現象です。防湿気密シートにより私たちの生活で発生せざるを得ない湿気から守られ、壁内を煙突のように吹き抜けていた空気を抑えることができていたら、今まで二回に渡り追加された断熱材でも結果はぜんぜん違っていたと思います。
そんな過去の苦い経験を踏まえ今回の断熱改修は1:床+壁+屋根+窓は一体的+総合的に考える。2:できるだけ気密性を確保する。この二つを断熱改修の基本としています。
上が結果ですが、最終的なC値は0.8cm2/㎡と充分なものになりました。北海道の一般的な断熱気密住宅の場合、新築でC値が1~0.6程度ですからほとんど変わりません。
気密性の向上は、涼しく静かな室内、1階と2階の窓で充分換気ができるようになる等、従来に比べて明らかに違いが体感できる水準です。
まだ今年の夏は暑くないですが、これからの様子、そして冬の違いをじっくりとお聞かせいただきたいと思っています。
最後にここまで性能を引き上げてくれたZ所長、S棟梁、K棟梁、そして私たちを信じて仕事をお任せいただいた住まい手さんに心より感謝申し上げます。
今日はビートルズなんていかが