2016年5月28日土曜日

ニセコの家Ⅱ 吹き込み断熱工事

「ニセコの家Ⅱ」の現場は急速に夏草に覆われつつあります。隣の敷地のイタドリがどんどん成長しています。すぐにジャングルかもしれません。(笑)
 
写真は窓を取り付け、外貼りの主断熱(ニセコの家Ⅱは基本的に外貼り断熱工法。矩体内の充填GW105mmが付加部分となる。)約190mm厚を吹き込むための下地を完成させたところです。表面に光って見えるのは吹き込み断熱材が外部に散乱しないようにするためのネット。このネットに充填ホースを突っ込んで圧力を掛けて破砕したGWを吹き込み40Kg/m3以上の充填密度で施工を行います。

写真はネットに充填ホースを突っ込んで吹き込み充填中の職人さん。一つの桝目状の充填区画に対して下から吹き上げした後に上から吹き下げて充填区画内の密度(断熱性能)を均一にして行くのは見ていて気持ちが良い。屋根や外壁の各方位別の面ごとに吹き込み充填が完了すると後を大工さんが追いかけるように防水+防風+透湿シート(タイベック)を貼って行く光景は想定通りで思わずニヤリとしてしまった。「おーいっ!M所長、時間当たりの施工速度と出来高しっかり記録しておいてね。今までの300mm標準工法と速度比較したいです。(笑)」

写真は吹き込み断熱が完了した後に広幅のタイベックを貼り終わったところ。40kg/m3以上の密度は大工さんが断熱材の上に乗ってもタイベックを踏み抜くことはありません。同じ屋根の外貼り工法でも圧縮強度が弱く踏み抜きに注意が必要なフェノール系板状断熱材のような神経質さとは無縁です。 
吹き込みを待つ壁の充填区画。写真右から左へ吹き込み充填が進行中。

充填密度が高いとこんな風に中央部分が30mmくらい盛り上がる。 

こちらが室内側の付加充填断熱部分。従来通り室内側から105mmGWを充填するが気密ビニールは写真のOSB合板の外側で既に完了済みなので室内側には必要ない。要は先張りシートという大工職の名人芸が欠かせなかった従来型の充填断熱工法を逆さまにして貼るのが難しい室内側シート貼りを壁の内側から外側に移したことがニセコの家Ⅱの断熱構造の最も大きな特徴です。

まだ充填が終っていない空の充填区画のネット越しに薄っすらと緑色に見えるのが気密ビニールです。従来の室内側の気密シート貼りは胴差しと梁、羽子板ボルトや床の厚もの構造用合板との取り合いを解決して下の階から上の階へ連続させねばなりませんでした。一方写真のようにそれらの絡みの全くない平滑な構造用合板の外側で気密シートを連続させることができれば遥かに簡単に気密構造が完成します。
 
でもね、室内側からの先張りシート工法は地域の大工たちの腕の見せ所でもあります。中でも最も上手にこの工程をこなせるのはアース21や古参の新住協会員の店で仕事を叩き込まれた大工たちだと思う。どれだけ凄いか見てみたいって?(笑)下の写真は2013年の「恵庭の家」を作ってくれたキクザワさんの現場写真。 これは順番の難しい土台下の気密レールと柱、そして床の厚もの合板との取り合い部分。土台の下に気密レールを敷き込み土台を外側から覆うようにビニールを巻き上げて土台と柱でビニールをサンドイッチして第一段階の気密を確保。次に厚もの合板の断面にピッチリ合わせてシートを固定して定規で切断(普通は定規なんて使わない)。この時重ね部分を必ず100mm以上確保できるように注意する。直角部分に出来上がったビニールの重複部分の美しい正方形が技量の証し!GWは最も安価な断熱材だけどその能力を最大限引き出すためにはこんな職人芸が必要なことをぜひ作り手のみなさんに知ってほしいと思います。 でもちょっと今日はリップサービスし過ぎたかな(笑)。
 
フラッシュモブってカッコイイ!マジ羨ましい(笑)
あんまりかっこよかったんで https://www.youtube.com/watch?v=yF-f-ND7FT4
 
 
 

18年前

 
ふと気付けば、もうすぐ札幌に事務所を開いて20年近くになります。
私は札幌生まれの札幌育ちですが、設計屋としてのキャリアは道北の首都である旭川市で始まりました。図面しか描けなかった当時の自分をたくさんの人が応援してくれました。今があるのもそうした多くのクライアントさんや人たちとの出会いがあったからです。
 
先日、道北地域に出張に出かけた際、独立後初めて設計した家を見つけました。勤め人時代の先輩と一緒にした仕事。もう18年も前のものです。白色塗装のスレート系サイディングにシルバー色のガルバリュウム折板のアクセント。木部の色は当時スウェデッシュレッドがお気に入りでした。(若いね~)

 
当時の基礎断熱は厚み50mmのXPS(3種)。壁は今となっては頼りない16kg/m3高性能を100mm充填。窓は当時からガデリウスのエリートフェンスター(3層ガラスでW空気層+アルミスペーサー仕様)。自分的にはまだ、柱の外側に耐力面材(当時からOSB合板)を貼ったりしたら壁内で結露するんじゃないか?と不安で不安で・・・(あこうくーん可愛い!/笑) ですからこの家は外壁廻りが木製筋交いで面材はまだ使えていません。その後数年して建てた妹の家ではじめてOSB合板を外壁廻りに面貼りして、建物がどれだけ揺れなくなるのかを体感するとともにその上にボード状断熱材を外貼りすることが気密を上げる上でも熱橋を抑える上でも絶大かを思い知りました。その後に登場する300mm断熱の各種躯体構造や現在取り組んでいる「ニセコの家」の改良型300mm断熱構造も全てこうした経験から生まれたものです。90年代はまだまだデザイナーズ○○やミニマルデザインは少数派。でもこうして見ると自分がいかに北欧風のデザインコードに縛られてきたかも発見できて興味深くも・・・恥ずかしい。(笑)
 
今日はChayなんていかが、彼女の声大好きなんです。
 
 

2016年5月21日土曜日

ニセコの家Ⅱ 断熱下地工事 その2

文字通り、カブトムシの甲羅のように合板を面貼りした構造体の外側をすっぽりとビニールで覆ってしまったところ。窓はまだ付いていない。もちろんこのビニールは屋根面から連続している。こうすることでより簡単に「連続した気密ライン」が完成する。

次は断熱サッシの取り付け。ビニールを窓の形状に沿ってカッターで切断開口し、外部側よりサッシを取り付ける。国産サッシの特徴である、ツバをビニールに被せその周りをぐるりとアクリルテープで気密する。要はサッシのツバと躯体でビニールを挟み付けるようにして従来は別工程とならざるを得なかった、1:窓の取り付け、2:気密化、3:止水処理を一回で完了させる。 詳しい人はもうお分かりのようにこの工法では建物の気密構造が断熱より先に完成する。つまり屋根も壁もビニールが完全に露出(目視可能)な状態で気密試験を行えるのである。もちろん漏気部分が見つかった場合は室内側からでも屋外側からでも自由に修理が可能となる。
 
□補 足
一般的には壁の断面構造の中で窓の取り付け位置と防湿+気密を担うビニールの位置は対極(←両端→)に離れてしまうことが多い。要は気密ラインと窓の取り付け位置が一致することは少ないのだ。これがどんな結果をもたらすのかといえば、壁の中心から見て外側では窓の気密+止水作業が発生し、今度は反対側に当たる室内側でもう一度ビニールの気密化が必用になる。もちろんこの作業は壁内に断熱材を詰め込んだ後に行わざるを得ないから、外部の窓が第一段階、内部の断熱材充填とビニールの気密化が第二段階とツーアクションを経ないと建物の気密化が完成しない。
写真は取り付けられ、気密化+止水を終えた開口部。もう不意の雨にも構造体が濡れることはない。 
 
今回の300mm断熱工法の改良に際してヒントとなったのは、従来の充填断熱+付加断熱の概念。要は壁の中にまず10.5cmの断熱材を詰め込んで不足する分をその外側に追加して(付加して)貼るという発想からの卒業だった。「ニセコの家Ⅱ」では屋根の構造と同じく主たる断熱は、建物構造の外側で取り一端完成させてしまう。その上で予算や必要性に応じて壁の内部(従来は主断熱と考えられていた壁内の充填断熱)を丸々【付加断熱+(配管、配線層)】としている。もちろん外部側で既に気密工程は完了しているので室内側の内装ボードの下に気密ビニールは必要ない。
 
余談だが暮らしにおける暖房エネルギーの消費量が全国一高い北海道では国の進めるZEH【注:ゼロエネルギー住宅と呼ばれ、断熱外皮で省エネ、太陽光パネル(PV)で創エネ(発電)することで実質の年間エネルギー収支が0となる住宅】も今のところは太陽光パネルの設置を免れている。積雪や現状の太陽光パネルの性能では不足等々・・・これから色々と議論は進むのだろうが、いずれにせよ今後は構造体の寸法で断熱性能が決まってしまうような設計思想は急速に陳腐化して行くように感じる。構造体に制約されず充分な断熱が出来る新たな道をたくさんの人たちと考えてゆきたい。
 
今日はT.フラナガンなんていか https://www.youtube.com/watch?v=_EcsQDHKkfs
 
 

2016年5月19日木曜日

ニセコの家Ⅱ 断熱下地工事

 
「ニセコの家Ⅱ」では更なる300mm断熱の施工効率化とコストデザインの進化に挑戦します。建築って基本的に凄く高価なものですよね、ですから出来上がりの良さや機能を果たすって言うことと同じ位、その時代に合わせたコストの検証は欠かせません。建設コストの内訳の多くは施工手間が占めるのですからその多寡をきめる設計と施工法の見直しをテーマとしました。
 
写真は屋根の厚物合板の上に貼った気密+防湿ビニール。その真ん中に見えるのが断熱垂木です。このままこの垂木の厚み分、一発で吹き込み断熱を行ってもよいのですがそれだけだと垂木の部分は熱橋(熱の逃げ道)となり、吹き込み部分との間に大きな断熱性能の差を生じます。そこで熱橋を減らす工夫をもう一手間加えて合計約35cm分の屋根断熱を一回で吹き込み施工する予定です。 通常の吹き込み断熱は下から上向きに(例えば下階から天井裏に向かって)作業することが多いですが、今回の場合は下向き仕事(重力方向)に広い面積を吹くことでどの程度時間当たりの施工効率が上げられるのかを確認します。

こちらは外壁の耐力面材(OSB合板)の施工です。写真は北壁を1階まで張ったところですが今後二階まで張り上げ、屋根と同じように気密+防湿ビニールを表面に貼り屋根の気密+防湿ラインと連続させます。接続を待つ屋根の薄緑色のビニールが折り曲げられているのがお分かりでしょうか、要はカブトムシの甲羅のように合板を面貼りした構造体の外側をすっぽりとビニールで覆ってしまうことで従来、壁は室内側、屋根は屋外側(当事務所は使い道の乏しい天井裏が出来る天井断熱は行っていない。基本的に外貼りの屋根断熱が標準なので)にあった気密+防湿ラインをシンプルに連続させました。こうすることで(専門家の人は断面図を思い浮かべてください)室内側から1:構造レイヤー+2:断熱レイヤー+3:通気、仕上げレイヤーが壁も屋根も同じ構造で施工可能になります。またこうした屋根、壁の構造の統一化は各工程の終了を合わせる事が容易になり次の工程の手配も簡単になります。従来のように屋根は屋根専用の断熱納まり、壁は壁でまた別の納まり、床は床で~なんて分けていてはその複雑さが工程の足を引っ張ります。 前述のようにシンプルな3レイヤーに建物構造を統一し、外壁材を貼れば壁、屋根材を貼れば屋根。要は3番目の材料が違うだけでその他は一緒!というシンプルな設計にしました。
 
余談ですがこの後、窓を取り付ければすぐに気密試験が開始できて、もし漏気を発見しても屋根、壁のビニールが全て露出していますから手当ても簡単に出来ます。漏気部分の特定には夏場ですからトレーサーガスを使ってみようかな?なんて考えています。気密試験終了と共に断熱工事開始。室内壁は従来通り大工さん、屋外は吹き込み屋さん。と手分けして一気に始め、こちらも単位面積当たりどの程度の施工出来高になるのかを確認したいと思います。
 
後はお天気が心配。この方法は基本的に雨の多いシーズンだと養生に更なる工夫がいるでしょう。今頃の穏やかな北海道向きですね。
 
今日はヴァレンティーナのピアノ。ラフマニノフで
 
 
 
 
 
 

2016年5月18日水曜日

ニセコの家Ⅱ 建て方開始

 
先週、ニセコの家Ⅱの建て方が始まりました。羊蹄山の麓で小さな家は見る見る出来上がって行きます。それにしてもニセコ晴れ!現場で働くのはとても気持ちのよいものです。
 
写真は床下暖房の配管。ウエルドメッシュ(金網)に安価なO2ストップ管を番線で固定して簡単に現場製作してしまいます。従来は床の上に高価な放熱器を置く設計でしたが、最近の傾向は基礎断熱した床下空間を積極的に暖房空間として活用することで床上の放熱器を不要とするものです。床下に熱源を広く薄く分散させることで、床下のコンクリートの潜熱除去(乾燥)を季節を問わず行うことが出来ます。例えば夏季に床下をほんの少し加温することで露点をかわし(カビの発生を抑え)同時に床下の乾燥を促して、結露の本番、冬に備えます。

JAS認定品の構造柱であることを確認します。近年は輸入材、特に旧東欧の国からの輸入材が増えました。森林大国の北海道ですが地域材がもう少し地元に流通できるような工夫を提案できないものか思案しています。 

梁、根太の天端を揃えた剛床工法はすっかり北海道に定着しましたが、重量のある厚物合板の取りまわしの際、高所でも大工さんたちが安全なように梁のピッチは極力半間(約90cm)以内としそれに直交する根太は20~45cm以内で梁に落とし込めるようにしてあります。従来は10cm角の角材を約90cm間隔に入れる工法でしたが、羽子板ボルトの省略と早期の足場確保のために最近ではこの方法をよく使います。
 

羊蹄山を背景に根太を固定するM職長。設計者としての図面の改良はこうした現場の声を即座に図面にフィードバックすることで行っています。大工さんが安全に効率よく作業できる構造図を描くことも大切なことですよね。

今日は星野源くんのSUNを女性ボーカルで
 

2016年5月3日火曜日

本物

事務所の近くにできた素敵なピザ屋さん。昨日はそこでライブがありました。
美味しい食事と本物の音・・・・・自分もこんな風にありたいなと思いました。

バンドは基本的にアコースティック。ギターなんてエフェクターナシ。
アンプ直結・・・くぅ~っ!シブかったっす。