二階の居間にはスパン5mを超える登り梁を複数掛けなくてはいけない「野幌の家」。本日はクレーンを敷地内に据え付けて、梁掛けです。大工さん3名も準備万端、前日には順調に2階の低層部まで梁掛けが終了し今日は朝一番から大梁に挑みます。
クレーンで順調に吊り上げられ両端部金物接合の柱と梁にがっちりと接合。緊張の一瞬ですが・・見事に・・
接合完了!と喜んだのも束の間、上の写真を見て大切な加工が一切なされていない事に気付き・・あえなく建て方は中断。台風が上陸する前にべストのタイミングで終らせようと思っていたところに残念な結果となったのが9/16(土)。そうここまでの写真は先週末のものです。
しかしそこからが素晴らしかった、すぐにプレカット工場に連絡し加工記録を確認、バグの発見と理由を見つけ、未加工の梁11本を引き取りに来れるかどうかを相談。現場の大工さんには掛けた梁の解体をお願いし、プレカット工場の担当者も昼前に現場に到着して問題は解決。どのみち台風が上陸するのでその間を再加工の時間にあて、連休明けから建て方再開となったのです。
現場を担当指定ただいている飛栄建設さま、ニッショウさま、そしてチーム野幌のみなさまに心より感謝いたします。
これが週明け建て方が完了して合板を貼った状態。最初の梁の写真には上のように細い垂木を落としこむ欠き込みの加工が全くありません。これでは隣り合う梁をつなぐことも出来ないために合板を貼ることも出来なかったのです。この垂木、約20cm間隔で細かく入れることで重たい合板を敷くまでは大工さんの大切な足場になります。特に傾いた屋根は危険な高所作業を伴いますから作業中の安全も出来上がった後の意匠性も考えてよく採用するディテールなのです。
工場で全ての構造材を加工するプレカットを大工の腕が落ちると毛嫌いする向きもありますが、私はその加工性の高さを生かしてプレカットでしか出来ない在来木造の美しい小屋組みが出来ないものかと思っています。本州でよく見る赤味の効いた美しい杉材の小屋組みに憧れているので、地元の林産試験場が苦心の末に開発してくれた唐松集成材の梁を使います。もちろんその梁に組み合わせる垂木も唐松材、ここまで来れば合板も地元と行きたいのですが・・最近はなかなか良いものが手に入らないので今回は石巻産です。(笑)
もちろん壁や天井で隠蔽されることが前提のプレカット加工を顕しで仕上げに使おう!等というのは大変なことで・・・(いつもスイマセン/笑)、担当してくれるCADオペレーターの人も接合金物から切削機械の歯の切れ味から・・全て見られることを前提に打ち合わせや了解事項の共有が必要になります。おまけに今回は合板がよくないとか、梁の木目が美しくないとか色々と大工さんに言われるわけです。(笑)でもちょっと待ってくださいよ、隠して使うしかなかった時代はこんな話しみんなでしただろうか?唐松の色変わりがきれいに見えるようだとか、合板の木目がきれいだと気持ちがいいとか、顕しなんだから傷が残らんように金槌はゴム製のを使えとか、建て方の丁寧さからそもそもぜんぜん違う。隠れるのだから仕事も相応でいいという空気があっけないほど簡単に吹き飛ぶ、これはこれで気持ちがいいし大切なことだと思う。改めて日本の顕す文化の意味を感じました。
二階の小屋まで組みあがった「野幌の家」。屋根型も従来よくある殺風景で四角い北海道風陸屋根ではない部分的な片流れ屋根。ここ10年のシート防水の発達と普及は色々と問題の多かったスノーレーン型屋根を駆逐しながら地域の屋根にデザインの自由を取り戻しつつある。