本日は「宮ノ丘の家」の足場解体の日です。雑木林の向こうに黒い木壁が姿を現しました。印象はたいへん控えめに周囲に溶け込む感じ。(笑)まあいわゆる地味系ビジュアルですよね~。敷地の周囲は雑木林が残り、緑が多い土地柄。こんな敷地にはさも、もとから建っていたような顔で街並みに参加してほしいと思います。
ちょっと難しい言葉を使うと、「抑制を効かせたデザイン」を「宮ノ丘の家」のテーマとしました。ニセコの家でも試みた周辺との調和。もとからある街の空気感を壊さずにすんなり馴染ませようと、建物の形状を極力シンプルに、色彩計画では建て主さんと相談して時間の経過をイメージさせる黒に近いステインでペイントしました。「ニセコの家」のように壁の板の貼り方や、屋根の形も歴史性を連想させるものにすると、さらに地味度が増して目立ちづらくなります。(笑)
建築家というと一見、奇抜で派手なイメージが付きまといますが、私の先輩建築家たちは、自己の主張を抑えた「溶け込みデザイン」の達人たちがたくさんいます。控えめでありながら、一旦室内に足を踏み入れると、流れるように配置された空間に目を奪われるという仕掛け。外見は抑えつつも緻密に計算された豊かな室内の存在感に影響されながら私も修行時代を過しました。最近やっと先輩たちの話の意味が少しだけ分かるようになりました。きっとものづくりは一生修行なのだと思います。(笑)
片流れの屋根のために北側は3階建てのボリュームになる。
壁の板を横張(南京下見板貼り)とし懐かしい緩めの切り妻(三角)屋根とした「ニセコの家」
玄関に入ると階段がお出迎え。
階段から見上げると垂直な高さの中に今度は内側から見た三角屋根の形が見える。直線的に視線を吸い込む吹抜けの風景の中に、一見、自由に有機的な曲線を描きながら掛けられた古梁が、高さが持つ緊張感を和らげるという狙い。(2007年「ニセコの家)
派手じゃないけど大人の「定番」みたいな、息の長いデザインに憧れます。
建築も人間も簡単に色あせない耐久力がなくっちゃ~ねっ!
今日は21世紀少年も20世紀少年もどうぞご一緒にいかが?