2024年10月30日水曜日

福井の家 上棟式




2024年10月26日(土)快晴の空の下、「福井の家」の上棟式でした。

最近めっきり減ったこの催し、要は期限付きの「建築現場」という臨時会社の株主である建て主が自社の安全とそこで働く人々を労うことを目的に行われる催事。多くの場合、近隣の神社から神官を招き執り行われる神式が多い。

巷では働き方改革が叫ばれ職場環境の改善や子育てに対する理解、復職支援等が盛んに話題になるようになりました。その一方でどんどん減る上棟式。みなさんは自身の家を建ててくれた大工さんの名前を言えますか? 棟梁が誰だか知っていますか?/笑

もちろん、契約上は住宅メーカーや工務店さんに頼むことが多いと思うのですが、実際に現場で働く職人さんにもぜひ目を向けていただきたいです。

みなさんは工務店といえば会社に社員の大工さんがいるのが当たり前だと思っている人も多いですが、実はそうではありません。大手住宅メーカーや工務店さんは主に2種類に分けられます。派遣職員型と正社員型です。前者は現場ごとに大工さんを探して、その都度契約を行います。対する後者は自社で教育した大工職が職員ですから、大工さんの顔触れは毎回決まっています。

私のように毎年数棟、建設をお願いする立場だと、毎回大工さんが入れ替わりやすい派遣職員型の会社か、顔なじみが自然に意図を理解してくれる正社員型かは非常に重要です。

大工さんが居つき難い会社だと社長さんこそ毎度さまでーす・・で始まっても・・現場では昨年と同じ話をまた一から、別の棟梁に話すところから始めねばなりません。

技術というのは直訳すれば「蓄積」で、普段から社内の引継ぎや申し送りが徹底してこそ、その品質やそれを守り続けることのできる再現性が生まれます。

毎年、様々な工務店さんに建設工事をお願いすることが私の仕事ですが、正社員型をお薦めするのはそんな理由からです。

もちろん飛栄建設さんは正社員型の工務店さん。私を担当してくださる棟梁は宇野さん。もう早10年のお付き合いになります。

今日はミサモでnewlook・・安室ちゃんもいいんですけど/笑



2024年10月16日水曜日

福井の家 2024.10.16の様子

 昨日の夜は生憎の雨だったんですけど、今日は暖かな快晴。抜けるような秋空の下、外壁の付加断熱1層目、フェノールフォーム60mmを貼り込みました。実はこの製品、最初に使ったのは2002年ですからもう22年も前になります。初期のものは少々脆くて神経質な印象がありましたが、現在は圧縮強度も上がり木下地で挟み付けても潰れない強度が気に入っています。明日からは二層目の付加断熱として更に60mmを横桟で1層目を抑えながら重ね貼りします。周囲の山が急速に紅葉してきました。こっから先は余談ですが・・屋根の防水はバッチリですね~助かってます。

柱外の耐力面材の外に1層目のフェノールフォーム60mmを貼ったところ。

窓上の下地の奥行きが60mm出ている様子。明日はこの下地と二層目の断熱材が同面となります。

昨日の雨が谷部で薄く溜まっている様子。

シート防水の端部の防水補強です。

今日はFive new oldなんていかがでしょう。




2024年10月14日月曜日

今・・なぜ北方型住宅なのか?

北海道に限らず大人気の南側敷地(南側に道路がある条件の敷地)。ここ数年、宅地価格の上昇が著しい都市圏でも、まだそこまでではない郊外の宅地でも、宅地としての人気度は根強いものがあります。

端的に言えば・・日本人の多くは「南側敷地」が大好きといってよいでしょう。
その理由は意外にもシンプルで上のような配置案が容易に浮かぶからだと思います。

1:建物を北側に寄せることで明るい南側の土地が最大化できる。
  加えてその前面が道路なのでさらにその幅員分も日当たりボーナスとして使える。

2:建物が道路から離れるので道路と家の間に緩衝空間として庭を取ればプライバシーが
  守られ易い。

3:前面通りから見て「庭」、「家」の順に見えるので、住まいに対する日本人の
  伝統的価値観にフィットし易い。

4:角地に次いで土地の評価(主に取引価格)が高い。
確かにその気落ちは分からなくもありませんが・・・道路から建物が奥に配置され易い南側敷地は、日当たりの良さもさることながら同時に駐車場やアプローチの除雪面積が最大化し易い敷地でもあります。

このお話しをすると例外なく驚かれるのですが・・そもそも北海道の内外を問わず、建築士の勉強では「氷点下の環境の建築」は学びません。降雪?積雪?除雪?堆雪?といった単語は氷点下の環境、すなわち寒冷地特有の単語ですから、基本となる建築設計の範疇には含まれません。

当の私も学生時代、製図室の外に深々と降り積もる雪景色を眺めながら、雪のない地域で書かれた教科書や巨匠たちの図面を眺めながら必死にトレース(模写)し模型化していました。意外にも雪を想定した計画ができないと道内では十分な設計などできないことを知ったのは勤め人になってからでした。


恥ずかしながら・・地域で設計者として働きながら・・その地域に相応しい設計が建築士の学びだけでは全く不十分なことを知りました。

当然ながら北海道は寒冷地ですからいくら建築士であっても再教育が必要です。北方型住宅の設計者としてこうした再教育を建築士に求めている理由はこんなところにあります。
何十年と・・雪国に住む私たちは除雪の大変さに悩まされてきました。多雪区域では戸建て住宅に住み続けられない理由の一つに除雪の大変さが上がります。

上の図のように駐車場&アプローチを確保するためにはせっかく南側に取った居間の窓の前にまで雪を積み上げねばいけません。道路の除雪の雪は道路境界上にうずたかく積み上げられ庭木を圧迫し1階の居間の窓から通りを見通すことはどんどん難しくなります。

冬こそ明るく暖かく過ごすことを意図して居間を南に配置したのに・・・
ここで少し視点を変えましょう。

現在は無落雪屋根が一般的になりました。理由は簡単で落雪型の屋根だと大量の重たい雪が落下して危険ですし、隣地に被害を及ぼす可能性も高いからです。親と同様、お隣さんは選べませんから屋根雪が隣地に飛ぶような家づくりをしてしまうと健全な近隣関係が築けません。そこで屋根に積もった雪はそっと触らず載せたままにする無落雪屋根が求められるようになったのです。

上の図は小さな二階の問題を指摘するために作りました。雪のある地域にもかかわらず雪のない地域の視点で考えられることの多かった時代の建物は・・1階の部屋を多めに取りがちなのです。繰り返しになりますが・・積雪がありますから1階の部屋を増やしても、窓は埋もれがちになります。

その結果・・2階に持って行ってもよいとされる部屋は子供部屋や納戸、押し入れのようなものになります。

結果的に1階は広く、2階が狭いアンバランスな面積案分の二階建てが増えるのです。当然ながら、1階の上に2階の壁が載るとは限りません。悪くすれば上の図のように二階の壁の下にはそれを支える柱も壁もほとんど取れない家が多くなります。

これでは地震に対して非常に脆い構造にしかなりませんし、二階の屋根雪の重みも充分に基礎に伝えることはできません。

1階の部屋数を減らし1階壁の上に2階壁が載るように総二階の間取りを目指して、雪の重さにも、地震にも強い家を作るべきです。
長年の刷り込みで・・何となく”いいな”という人が多い南側敷地ですが、実際には冬目線でしっかり検討し設計しないと、長所だと思っていたものの多くが・・実はそうではなかったということになります。

地域に相応しい住まいとして1988年から改良が重ねられてきた北方型住宅を推す理由がここにあります。

道路の雪を除雪車が積み上げれば通りは見えず、雪のない季節は通りからの視線が気になって広間からカーテンは閉めっぱなしになる。あれれ・・庭を楽しむとか居間に光を入れて明るく・・のはずじゃあなかったでしたっけ/笑

駐車場は道路に接続して設けるしかないので、玄関前に置けない場合は除雪箇所が増えてしまう。もちろん駐車場の雪も南側の居室の前に積み上げるしか雪の置き場所がない。

南側敷地が人気の理由が恐らくこれ・・明治期の庭と一体となった間取り。さすがに北海道の家に縁側は既にないが、縁側を取るとほぼ似た考え方の間取りとなる。余談ですが、サザエさんの家も非常に似た間取りです。

様々な家相学や主に当時の衛生上の観点から、南側の居室からトイレや浴室、台所は北側に離して配置される。当然ながら高齢者にとっては寝室からトイレもお風呂も遠い間取りで暮らすこととなる。

日本人の住宅取得年齢は35年ローンが支払える年齢から逆算して概ね30代半ば~40代半ばが多い。要はローン完済時で70~80歳。2020年代の平均寿命は85歳程度と考えれば、余命は概ね5年から15年程度。必ず準備必要です!

寝室と水廻りは隣り合ってないと苦労する。私の設計では寝室の隣に水廻りを設けることが多いのはそうした理由です。

北方型住宅では特定寝室(住まい手が使う主な寝室用途の部屋)と同じ階にトイレの設置を求めています。従来のように2階には寝室だけ、トイレは1階に下りないと使えない。という間取りは基本NGです。

最近採用例が増えている総二階型の間取りの一例。南側に設けたカーポート兼アプローチの中をトンネルのように潜って玄関に至る外部動線としています。

堆雪スペースは庭木が傷まないように宿根草のような草花を増やし植栽の上に堆雪可能な庭として場所を想定しておきます。

LDKは除雪&堆雪で視界と日当たりが奪われぬように二階に配置すします。そこに至る階段に関しては十分緩いものとして、普段の生活に負担にならない程度に階段の上り下りを日常に取り入れます。

2階が居間だと高齢化したら大変という・・意見をよく聞きますが、仮に14~15段の階段の上がり降りさえ難しくなったとしたら・・もう戸建てに住み続けること自体を考え直す時期に来ていると思います。
「発寒の家Ⅳ2023」

各部の動線や設置階、堆雪場所はこんな感じ。

1階のカーポート兼アプローチは北海道人にとって欠かせないBBQ&ジンギスカンスペースとしてもぜひご利用いただきたい。

高木を減らし降雪期には堆雪場所に変わる前庭。「新琴似の家2018」

道内で要望の多い、共働き&車二台分のカーポートを設けて、北海道の住まいのスタンダードを目指した「南幌まちなかの家2018」

外から見ると格子の中から室内はほとんど見えないが、室内から屋外は非常に良く見える。ここまでしないと、カーテンを開けて明るく伸び伸びと、住まい手は住んでくれない。

その一方で、室内の必要はないが、しっかり置き場所を作って上げないと景観や美観を損なうものにも十分な配慮が必要となります。

格子の奥は通りに対して見せたくないプロパンガスの置き場所。夏なら自転車置き場、冬なら除雪道具を仕舞う場所として大活躍します。

調理はガスで暖房給湯は灯油で・・そんな場合はボンベとタンクを道路(サービス動線)に近接させつつ見え難い工夫が大切です。

接地階同士で、一般的な南側間取りと北方型住宅を比較してみました。みなさんならどちらが北海道に適していると思いますか?

無落雪屋根(半年間重たい雪を載せっぱなしにする屋根)その状態で地震が起きた場合、構造的に合理的な設計ができていますか?

今までブログを読んで・・北方型住宅のルールを家づくりに取り入れてみたいと思うけど・・どうやって工務店さんや設計者さんに伝えればいいの? という方は上の技術解説書をお使いください。下記よりフリーダウンロードが可能です。

北方型住宅2020技術解説書

2018年にオープンした「南幌みどり野きた住まいるヴィレッジ」

札幌のベッドタウンとして今や人気の住宅街である南幌町では北方型住宅のルールを守って建てることを条件に様々なメリットが受けられるヴィレッジに多くの人が移住しています。

もちろん、ルールを適用せずに自由に建てられる街区もありますがみなさんはどちらがお好みですか?

こちらは、北方型住宅の最新仕様であるZERO(北方型住宅2020に総エネ設備等更なる環境性能を盛り込んだもの)です。

当事務所も紺野建設さんとコラボしてゼロカーボンヴィレッジに参加しています。

北方型住宅ZEROは全国一の性能を有する住宅仕様です。

今日はアカペラでマイケル・・いいすよ





 

2024年10月11日金曜日

福井の家 屋根断熱工事その2

 

屋根断熱が完了し、左側から野地板(最終的な屋根防水の下地)を貼っている様子。
(2024.10.08)

防水下地となる24mmの構造用合板

屋根の谷部分の詳細。

屋根の通気層で大切なことは、写真の左右のみならず前後にも空気が移動できるように欠き込みを入れることと、通気層の高さが90mm以上あること。

壁の通気層と屋根の通気層を連続させるために外周部分の通気垂木にも欠き込みがあることを確認する。

敷地内の安全を考えて無落雪を実現するために必要な形がバタフライ型屋根。その形状は積雪寒冷地にとって必要なものであると同時に屋根の中央に雨水を集めてしまうという屋根本来の水切りのよさとは逆行するものでもある。

それを実現するのが継ぎ目のないシート防水工法。北海道の木造住宅の9割は板金による屋根防水だがこのシート防水は防火認定を取得した樹脂性のシートを溶接して完全な防水構造を実現する。施工速度も速くこの規模の屋根だとほぼ3人で半日程度で屋根の防水が完成してしまう。
今日はKOIAI・・すごい




2024年10月4日金曜日

福井の家 屋根断熱工事

 雨との戦い・・バタフライ屋根の屋根構面(厚物合板)を貼ったら、そこからは雨を追い越す勢いで屋根の外張り断熱がスタートする。晴れが続く季節は下地組に時間を掛けられるGWによる屋根断熱も可能だけれど、今回は秋口の雨季に掛かること。札幌版次世代住宅基準のプラチナグレード取得のためにGW換算で約43cmの屋根断熱が必要になる理由からXPS(D種)による屋根断熱とする。熱橋部の処理、端部の三角部材の準備、設計+プレカット+そして現場の息が合わないとスピードは稼げない。昨日の夜半から朝方にかけては生憎の雨・・・ブルーシートによる雨養生もバッチリです。棟梁そして大工のみなさん、ありがとうございます。

高い気密性能を達成するために必要となる黄色の防湿&気密シート。接合部分は所定の重ね巾を取り、安全を見て接合部分は更に白い気密テープにてテーピングします。

屋根勾配の切り替わるところには三角形の隙間ができます。そこをウレタン充填で熱橋とならぬように処置を行います。
代表的なボード状断熱材であるXPS(押出し法ポリスチレンフォーム)だが一般的なB種や高性能のC種ではなく最高性能のD種を用いて屋根断熱を行います。。

勾配の切り替え部分にはソフトウレタンを先打ちし三角形の隙間に空気が走らぬよう十分に配慮します。

1層目は縦貼、2層目は横貼のように木材の交差部分(熱橋/ネッキョウ:熱の逃げ場所の意)は極力小さくなるよう下地組を工夫しておきます。

ちなみにこのXPS(D種)200mmで高性能GW340mmに相当する。この上にさらにD種を重ね貼りし最終的には高性能GW約430mm相当の屋根断熱とします。

写真は昨日の夕方の様子。夜半からの雨に備えて大型のブルーシートで完全に雨養生して、その日の作業は終了です。
今日はABBAのカバーで・・いいすよ/笑




2024年10月1日火曜日

福井の家 建て方開始

           

秋晴れの空の下、始まった「福井の家」の建て方工事。隣地をお借りしてクレーンを立て、目玉の二階の梁架けは明日から

二階は問題なく完了

ベテランのD棟梁のもと、飛栄建設さんの若手2名が大活躍です。

山には少しづつ秋の色が・・・

今日はトミージョンソンでAC/DCなんていかが