2015年1月31日土曜日

宮ノ丘の家Ⅱ 竣工 お引渡し



昨年から「チーム宮ノ丘Ⅱ」一丸となって取り組んでまいりました「宮ノ丘の家Ⅱ」が無事竣工し、昨日お引渡しとなりました。この場をお借りして現場で働いた全員と建材生産者のみなさん、最後まで現場をまとめていただいた剛建築工房のI所長、M主任、I棟梁、そして貴重な経験とチャンスを与えていただいた建て主さまに心より御礼申し上げます。想えば、建て主さんが私の事務所にご相談に来られたのが2010年。弊社にとって初めての300mm断熱プロジェクトとなった「銭函の家」http://ako-re.blogspot.jp/2009/12/blog-post_30.html の竣工直後でした。「北海道の技術と材料で最高の家を作りたい。」そんな想いに共感いただいてお付き合いが始まりましたが、その後の道のりは紆余曲折・・・・・今日まで5年の歳月を要すこととなりました。ご案内いただいた敷地は札幌の街を一望できる眺望が魅力である反面、傾斜は30°を越え、立っていることも難しい状態。また敷地としての接道義務も不十分等々・・・ 一時は夢で終るかに思えました。しかしこの敷地の良さに惚れ込んだ建て主さんは地道な努力で接道義務を解決しついに計画を軌道に乗せます。宅造法の規制をもろに受ける事、建物の構造と土留擁壁を一体で兼ねる事、接道側から見ると単なる木造二階建てでも斜面側から見ると4階建て以上の高さとなること、混構造を前提とした構造計算が避けられないこと、複雑な高さ制限、等々・・・設計の立場からすると法務整理のオンパレードでしたが無事なんとか終えることができました。 今は充実感で一杯ですが来週からまた頑張らなくっちゃね!(笑)


下から見上げると凄い傾斜に驚く事に。実はこの下に更に基礎がもう1階分埋まっています。
 
北側の穏やかな光で満たされた昼間の室内。
 
キッチンセットは旭川家具の名店、匠工芸さん。材質はナラ材。
 
3mオーバーのキッチンステン天板。製作は㈱クリナップの直需事業部。
 
和室の障子はカバ材
 
建具は網代貼としました。 
 

ストーブに火が入る夕方はこの家にとって一番よい時間帯。

キッチンが札幌の夜景に正対するレイアウトとしました。

階段を登りながら振り返ると札幌の夜景が一望できます。

夜はこんな感じです。

薪ストーブは小型にもかかわらず壁に近接して設置可能な優れもの。デンマーク製です。

左側の壁は木レンガによる立体的な表情が面白くて採用しました。
 
さて今日は素敵なJAZZナンバーをお贈りいたします。絶対夜景に合うと思います。(笑)
こころより竣工おめでとうございます。
 

2015年1月30日金曜日

北海道の住まいづくりに掲載していただきました


住宅雑誌「北海道の住まいづくり 2015年新春号」の表紙に「西野の家Ⅱ」を掲載していただきました。少しづつではありますが弊社とお客様の取り組みを取り上げていただくのは嬉しい事です。この場を借りて御礼申し上げます。実はペレットストーブの特集も4ページ載っていて読み応え十分。ぜひ書店で!(笑)

2015年1月29日木曜日

宮ノ丘の家Ⅱ パッシブ換気

今日は「宮ノ丘の家Ⅱ」の取り扱い説明でした。
私の担当は各部のメンテナンスとパッシブ換気。冬場は内外温度差が大きくなるため、二本の給気管全開だと換気過多になり過ぎること、また換気量が増大すると家の室温が下がり暖房の燃費も悪くなり易いことを説明しました。

ところでパッシブ換気を単なる「自然換気」の一つと理解している人がほとんどですが実は暖房も同時に行えるスグレモノです。ダクトを必要とせず建物の断熱気密構造を使って行う全館暖房換気がその正体。もちろん暖めた空気を動かす動力は内外温度差という自然エネルギーですからけしてなくなることはありません。

その原理は、冬になると内外温度差が大きくなり隙間風(換気量)が増大する特性を応用しその隙間風を床下に集中させます。断熱気密化された建物は漏気が少ないですから床下に集中的に給気することができます。家全体にすうすう散らばっていた隙間風を基礎断熱した床下に集中させるとかなりの風量にびっくりします。この新鮮外気を床下のヒーターで少し暖めれば後はかんたん。空気は暖めると素直なやつで家中の寒いところを見つけて勝手に換気しながら暖房しに行ってくれます。仕事が終ると高所の排気口から外部に排気されます。なんだかあまりに簡単で拍子抜けしそうですが、別の観点で見ると、1:基礎(外)断熱が出来ること、2:躯体が下降冷気や漏気を生じないように十分断熱+気密出来ること、3:煙突効果を効率よく得るために屋根断熱で二階の天井を高く取れることの3点が欠かせません。実はパッシブ換気って建物の構造そのものなんです。

 
ひゅ~って感じで外気が入ってきます。手前の黒いヒーターで外気を予熱して各室へ
 
全体の原理はこんな感じです。
 

 

2015年1月28日水曜日

宮ノ丘の家Ⅱ 完了検査

本日は「宮ノ丘の家Ⅱ」の完了検査。もちろん無事終了で訂正箇所は特になし。想えばこの1ヶ月はかなり根を詰めた作業となりました。剛建築工房のI所長にI棟梁、M主任、本当にごくろうさま。細かな作り物が多く塗装面積も膨大。顕し仕上げの多いこと多いこと。「みなさん天井を貼らないから安くなりました!」的な建築家のお話しってよく聞くでしょう? あれはほぼ現場を知らない人に多い独り言です。(笑) 実際は余計なものまで見えるので、もの凄く大工さんたちはたいへん。はっきり言って天井は平たく貼ったほうが簡単安価です。でもね住んでいてそれじゃ楽しくないじゃない?(笑)

昼も夜も札幌の絶景が見える階段室。もの凄い高さのテラスがちょっとスリリングなんですけど、こんなロケーションなら気持ちもお分かりでしょう?ガラスのメンテナンスと屋外に出る楽しさを考えるとテラスの存在は欠かせませんよね~。

白のあっさりしたデザインのキッチンにお馴染みの床材を貼り上げた壁と薪ストーブ。いよいよ明日は試験焚き。災害時はもちろん普段から炎の見える居間は北国の家のごちそうですよね。

影の付き方が美しい階段の側壁。さて本日も遅くまでダメ直し。明日は取り扱い説明に写真撮影です。もう一息頑張りましょう!(笑)

2015年1月27日火曜日

宮ノ丘の家Ⅱ 気密測定二回目

1/24(土)に第二回目の気密測定を行った「宮ノ丘の家Ⅱ」。結果はC値が0.3cm2/㎡と良好!

室内の空気を外に吸い出すことで室内と屋外の差圧を計測します。
 


換気扇や電灯盤が取り付いた状態での計測。条件的には少々不利でしたが、2009年以来どの現場も高い気密性能が出るようになりました。気密測定を導入したことが大きいと思いますが、毎回計測することがやはり大切ですよね。
今回は1階が混み合っているので二階に計測器をセットして行いました。

あともう少し、いよいよお引渡しが迫ってきました。
 

2015年1月21日水曜日

宮ノ丘の家Ⅱ 内装工事 全力全開!

1月末のお引渡しに向けて全力で内装工事に当たる「宮の丘の家Ⅱ」の大工Aさん。背後に見える壁は床の樺のフローリングを張り上げたもの。この前にTVと薪ストーブがセットされます。最近は室内に炎のある感じが増えてきました。理由はいくつかあるんですが大きな理由は安全な範囲で温度環境のムラを序除に作れるようになったことが大きいと思います。パッシブ換気が使いこなせるようになると上階に行くにしたがって僅かずつ室温が温度降下する性質を示します。要は「宮ノ丘の家Ⅱ」で言えば景色を楽しむ3階が最も温度が低い領域になるのです。もちろん低いといっても1階あたりの温度降下は1~2℃程度。1階が22℃なら3階は18~20℃の温度域になります。そこでその温度低下のムラを薪ストーブをちょっと楽しむ動機に当ててやろうというのが種明かしです。従来の断熱気密が不十分な室内環境で力任せに下階でストーブを焚くとストーブが周囲の空気を燃焼にどんどん使うのでその分、外の冷たい空気が入って来る一方、暖めた空気は比重が軽くなるので上階に逃げてしまっていました。しかしそうした不安のない室内は不思議な事に熱源から離れた階が最も温度が低くなるのです。かつては家中同じ温度にすることが喜ばれましたが最近ではエリアごとのアクティビティー(活動)に応じて室温に最適なムラをデザインしようとしています。

天井はお馴染みの外張り断熱が350mm。室内には構造垂木が全て顕しになります。

階段は名手であるI棟梁の仕事。

今回は床のフローリングの原板を用いた高度な仕事。まず蹴込板と段板が直角ではなく稲妻状に連続する事。

段板と蹴込板は3mmの目透シ継ぎで目地の底にピンタッカーを打って段板と接合しています。

こちらはパッシブ換気の戻り空気の吸い込み口6mmのスリットです。

2階の寝室の天井は吸音効果の高い化粧石膏ボード。これは最近見直しているのですがたいへんよく効きます。特に音の響きやすい断熱建物にはベストです。

外観の板金が全て完了した状態。濃い茶色がたいへん落ち着いた表情を作ります。
 
今日はテンションが上がってきたのでパフィュームでも(笑)

北海道大学工学部 出前授業


今日は北海道大学工学部まで出前授業に行ってきました。お呼びいただいた森先生、コーディネートをしてくれた3年の桜さん、授業を聞いてくれたみなさん、本当にありがとうございました。授業では長年に渡る地域の積み重ねが北海道の建築の間取りやそのデザインを大きく変えてきた事実をお話ししました。最後にはけっこう質問が出たりみんな大笑いしてくれてとっても嬉しかったです。3年生といえば人によっては中弛みだったり漠然と不安になったり、一番平和だったりする時期だけど、中には「意匠」と「環境」を分けて教えるのはどう思うか?なんていう核心的な質問があったりしてよい刺激になりました。
写真は札幌農学校(現:北海道大学)モデルバーン1877年竣工

札幌市立大学 環境学特論

 
 今日は、毎回楽しみにしている札幌私立大学の大学院授業公開、「環境学特論」の日。この試みの面白いところは学生と市民そして私たち実務者が一同に会して授業を受ける事。今日は最終日、今までの授業の成果を生かして学生のみなさんのプレゼンテーション。
 
 
 
 実は毎回会場になる地域のコミュニティーカフェ。たくさんの地域住民に親しまれている反面、室内環境(特に今頃の冬場)はかなり厳しい。要は寒い!(笑) もちろん私たちは今までこの室内の寒さを反面教師として講義を聞いてきたわけで・・・学生さんたちのプレゼンも現状の改善計画というわけ。
 
 
 現状分析について説明した後がユニークで、解決策はおがくずに店で出る生ゴミを加え発酵熱を利用して足湯よろしくテーブル下の床を温めるという斬新なもの。実はこのおがくずの酵素浴。地元でも密かな人気でけっこう冬場には通う人もいる。自分も間取りに詰まったときは地元の温泉健康ランドを愛用するのでこの提案にはかなりグッと来てしまいました。(笑)

なぜ室内が寒いのかを分析した図。

外部的な要因としての日当たりの悪さや開口部の性能の低さをサーモ画像により見える化した図。

そして最終的な解決案へ・・・・すごく刺激的でした。(笑)
 
札幌市立大学「環境学特論」 http://coc.scu.ac.jp/event/2014/11/20141111111.html
 

2015年1月12日月曜日

宮ノ丘の家Ⅱ 板金工事

風が止むのを待って現在は板金屋さんたちが外壁を納めています。「宮ノ丘の家Ⅱ」の壁は傾斜地側から見ると12mを越えるので板金一枚の長さも同じという事になります。途中でつなぐ事も考えましたがやはり一枚ものは格好が良いですよね~(笑)しかしそれは同時にその長さの鉄板を山上の現場に運び込めるのか?という課題をクリアせねばなりません。先日の積雪で道幅が狭まり、トラックの荷台には積めるものの、肝心のトラックが現場までたどり着けない事が判明。I所長、散々悩んだ末に斜面の下から、雪の上に材料を置き人力で橇(そり)よろしく引っ張り上げることを思いつきました。かくして加工済みの板金のパーツは全て崖下から引き上げられ本日の状態まで来ました。板金を屋根以外の各部に用いるのは北海道の伝統ですが冬場はいろいろと苦労します。

既に東側は完了。難関は北側と南側です。

足場の上からだと吸い込まれそうになります。吊子の巾を狭めて鉄板のぼこぼこ感が最小になるようにしています。従来は厚手の防水紙を板金の下地に使いましたが現在は下地が出にくい薄いものを使います。
 
今日はコルトレーンなんていかが https://www.youtube.com/watch?v=F6bshxncSNw

日経新聞 「日本の住宅なぜ寒い」

この記事を読んで少しづつではありますけど、日本もここまで来たなと感じました。
ブログでも長年お話ししてきたように、断熱は地域を問わず家づくりの大切な柱の一つであって、寒冷地限定のものではありません。地域によってより相応しい方法はありますが、そもそも考えなくてよいというものではありません。インターネットの普及によって手軽に情報に触れる機会は増えましたが、問題なのは、経験不足や誤解、無知などから来る「思い込み」。この「思い込み」は素朴な疑問を封印し素直な「なぜ?」を頭から奪ってしまいます。挙句の果てに自分にとって都合の良い真実ばかりをつなぎ合わせて物事を見る癖がついてしまいます。

たとえば「日本の多くは温暖地であって寒冷地は東北の一部と北海道である。」と日本人の多くは思い込んでいます。 当然、厚い断熱や全室暖房のような特殊な家の造りや設備はそうした厳しく稀な自然環境に対応するもので、それ以外の地域ではそもそも必要がない。こんな落ちが付くことがほとんどです。(笑)

残念ながらこうした不幸な思い込みはまだまだ根強く、断熱のない家では大きな家の一部をあたためることがやっとなのに、この思い込みに囚われていると「使わない部屋の暖房を切っているだけ。」となります。一般に暖房といえば家全体を暖めることであり、当然ながらそれは十分経済的に成されなければ家計の大きな負担になります。しかし思い込みは「そもそも使わない部屋も含めて暖房する事自体おかしい!」となってしまいます。この他にも、「家中を暖かにすると軟弱な人間に育つ」、「そもそも子供は風の子」、「暑さや寒さに耐えることこそ大切な学び」、「寒い部屋で慎ましく生きるのは個人の自由」・・・作り手でさえ「断熱が日本の伝統文化を破壊する」や「断熱が家の寿命を縮める」、おまけに「表現の自由の侵害」や「断熱は憲法違反」なんていうのまであります。

家を作る目的は決してひとつではありませんが、その大切な事柄の一つに、暑さや寒さ風雨や湿度から身を守るものであることは最早、議論の余地がありません。当然ながら外の寒さや暑さから身を守れる空間が居間しかないとか、廊下やホールは通行にしか使わないから寒くて良いといった考え方が正しいものとは言えません。

北海道ではなかなか信じられないことですが、日本の多くの温暖地域で断熱に乏しい家の作りが原因で多くの人が本人もよくその理由を知らぬまま亡くなるのはたいへん残念なことです。反対に北海道の人はなかなか気付きませんが、断熱することが身近にある環境はとても幸せな事ではないでしょうか?ぜひ紙面を読んで感じていただけたら幸いです。

日本経済新聞「日本の住宅なぜ寒い」http://www.nikkei.com/article/DGXKZO81592170W5A100C1TJP001/

実は九州は寒い!北海道人には目からウロコのブログ紹介します。
建築YA「髭」のCOLUMN http://archstudioten.jugem.jp/?eid=6774

2015年1月9日金曜日

宮ノ丘の家Ⅱ 断熱工事

昨日までの二日に渡り、猛吹雪で荒れに荒れた札幌圏。しかし建物の中は平和そのもの。無暖房の状態で14℃もあります。大工さん4人とコンプレッサーの発熱だけででこうなることは、既に珍しくありませんがむしろ、家づくりを目指す人にとってはもっともっと知ってほしいと思います。一応国の断熱基準を2020年に向けて義務化しようとしていますが、あくまで最低基準を従来の「努力で良い」から「守ってね!」に格上げするだけですから住まい手さんの実感は義務化の後も依然、薄いと思います。せっかく投資をしても実感が伴わないなら、そこを目指すのではなく実感できる水準を最低限目指すべきでしょう。実は300mm断熱の意味はそこにあります。別に300mm断熱が究極の回答でもなんでもなくて、住まい手の多くの悩みに、今までとは確かに変わったという「実感」を与えられるか否か、そこを大切にしています。

残念ながら我が国の大部分の地域は温暖地であって、断熱や暖房は必要ないとされていますが、むしろ冬場に本州旅行をすると身に凍みるのは室内の寒さです。温暖とは名ばかりで、暖かな室内に慣れた北海道の人間にとってはかなり厳しいものです。しかし思い込みとは不思議なもので多くの日本人は気にもしません。

北海道では40年以上に渡り建物の断熱に取り組んできました。いわば断熱することは地域のコンセンサス(同意事項)であり、私たちの暮らしにとって欠かせない家づくりの基本となっています。断熱に関わる資材や施工手間等は全国一の豊富さと安価さで、断熱は地域のお家芸と呼んでもよいとおもいます。安くて、大工さんにとっても慣れた方法で簡単に長年の悩みを解決しよう!と考えて現場では三層目、最後の室内側断熱材を充填中です。 

室内側にさらに5cm断熱材が入ります。

宮ノ丘の家Ⅱの外装は板金。風が収まり次第、板金屋さんの登場です。

2015年1月1日木曜日

2015新年明けましておめでとうございます。

新年あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
今シーズンの札幌の冬は今のところとても穏やかです。普段、読もうと思っていて読めていなかった本をたくさん読みたいと思います。少し休養をして良質なアイディアを練るためにゆったりと時間を前向きに使いたいと思います。