今日は久しぶりに、「ニセコの家」に来ています。もう竣工から5年も経ったのにぜんぜん古さを感じません。建て主さんの愛情一杯の住まい方のおかげでずいぶんとかわいがっていただいている様子。設計者としては嬉しい限りです。家も人間もよい年の取り方をしたいものですが、ニセコの家の大らかな遷り変わりを見ていると、設計者が到底及ばない家の磨き上げ方にいつも新鮮な驚きを感じます。毎年少しづつ増える調度や家具がさりげない慎重さで選ばれていて、一見巾のある選択の中に家人の人柄を感じさせます。緩やかな美意識のコード(範囲)の中に収まるようなさじ加減で室内に持ち込むものを、デザイン的過ぎず、さりとて無関心にあれもこれもと欲張ることなく、簡単に言えば「親しみやすい丁度よさ」で満たしています。服飾の世界ではダメージングといって、経年感、使用感を味わいとして捉え、新品の商品をあえて傷つけたり、脱色したりすることが人気のようですが建築の場合は、なかなかそうも行きません。(笑)実は、日本の住宅が弱い部分がここで、住み込んでゆく中で、持ち込むものの量と質を適切にコントロールして室内をものの洪水から守る感性が今の時代の住い手には求められているのです。溢れかえる情報は一見消費者に多様な選択肢を与えるように思えますが、必用なものとそうでないものを選択できる大人の感性がないと膨大な情報に隠れて大切なものを失いかねません。心の健康を取り戻すために室内をいかに片付けるのか?といったマニュアル本が不景気にも拘らず売れ続ける不思議さっていかがなもんなんでしょう?(笑)
夕暮れ迫る居間。
地元の作家の手によるオブジェ。
今日は地元のバイオリニスト高崎希美さんなんていかがでしょう?