先日、6/7~13の予定で北海道大学の小澤先生のアテンドでオーストリアのフォアーベルク州を視察することができました。中でも地域で実際に設計に当たる建築家との交流はさまざまな課題を共有すると共に、それぞれの地域が幸福なかたちで存続するために、健全なコミュニティーと地元のものづくりがいかに大切かをあらためて考える機会となりました。小澤先生、森太郎先生、お忙しい中現地をご案内いただいた地域の建築家のみなさん。この場をお借りして一言御礼申し上げます。
入り口横に22-26と書かれた白いオフイスビル。主に建物の外皮性能と統合的に制御された自然換気のみで通年22℃(冬季)~26℃(夏季)を維持しよう。という野心的なプロジェクト。躯体は中空層を持つレンガ造で経年劣化の恐れから一般的な断熱材は使用していない。構造材である中空レンガの断熱性能のみで外壁の断熱性を示すU値は0.15W㎡/Kとのこと。いつも作っている300mm断熱の標準GWの壁と同等である。そのため外壁厚さは約80cmにも達するとのことだ。窓はこの奥に引っ込むので庇の役目を果たすと同時に日射取得ではなく日射遮蔽を中心に考えねばならないことから、縦長の窓は袖壁にも守られ、低い高度で入射する東、西日に対する抵抗力をもつことになる。窓横の通風扉は外気温や室温、CO2濃度といった複数のパラメーターで統合的に制御されオートマチックに開閉が行われる。
天井高は各階とも高く概ね4m。昼光利用の観点から床壁天井とも白色に塗られ、歩くと少々ふわふわした感じ。各階概ねテナントが入居しているが空き部屋は内部に発熱源がないために寒いのだそう。当日は薄曇りだったが意外に暑く、外から中に入った途端よく断熱され調教された建物特有のひんやりした肌触りが印象的でした。
こちらはレストルームですが、このくらい色を使ってあるとホッとするくらい室内の白が印象的でした。
説明はエンジニアリング全般からLCC(ライフサイクルコスト)までかなり詳細に聞くことができました。曰く:「従来のように設備任せでも一定期間は同じ効果を得ることができるかもしれないが、少しだけ時間軸を意識すれば、そもそも手厚いメンテナンスが前提の設備に頼らなくてよい建物がコスト的にどんどん優位になることは明らかでしょう。」
一時期の個別的なエンジニアリング重視論ではなく、地域で不動産を安定的に維持し経年による価値の毀損を最低限にし家賃の競争力と収益性を両立させる。と言った・・三方良しのような設計思想を実現するために既存のエンジニアリングを注意深く再検討して使う。そんな彼らの考えに触れることができました。
壁には「エネルギーはアナログで!」のキャッチフレーズ。EUに住む彼らが従来の設備重視のEU型パッシブハウスに疑問を投げかけているようで、ある意味不思議な感じがしました。
もの凄い厚みと樹脂製が徹底されたスペーサー。もちろん全て希ガス入りのLow-Eトリプルガラスの開口部。
サッシは木製で雨仕舞いは不思議・・・機会があれば数年後に痛んでいないか検証しに行きたい。
高さ4mのドアや巾7mのトリプルガラス等々・・断熱建具や複層ガラスのスケールでは負ける。ここら辺も次回はぜひ工場まで行ってみたい。
今日は久しぶりにヴァレンティーナのピアノで