内装がほぼ終わり、器具付けや細かな調整を行いながらあともう少しで完成が見えてきた「芦別の家」です。
内装はおなじみのカバのフロアや積層合板の生産者である住まい手の材料をふんだんに使い、長い芦別の冬を楽しく暮らせるように明るく木質感豊かに考えました。
こちらは客間の建具ですが、和風が出過ぎないようにふくりんは広葉樹を使い普段使いで気にならない洋風の和室としました。
以前は白木の和を強く感じる障子格子を作っていましたが、最近は障子という和を強く感じる建具をあえて洋材(広葉樹)を用いることで普段の暮らしに馴染ませることが多くなりました。
もちろん人によっては、伝統的な白木にこだわる作り手も多いのですが、ふと過去に目をやれば日本中で最初に洋風化された地域が北海道であり、ここ20年は特に住まいの中から和室が消えてしまった地域とも言えます。
理由は核家族化や自宅での法事の衰退、習い事やライフスタイルの変化等々色々と考えられますが・・・一番大きな理由は私たちの暮らしが以前に比べて必ずしも和室を必要としなくなったことが大きいのかもしれません。
*:上はタモ材で作った障子格子で窓を結露させぬように通気スリット切ったものです。障子自体は意外に断熱性と気密性があるのでこんな風に現代の事情に合わせてひと手間加えます。
だからこそ・・・伝統的な和室にこだわりたい!という気持ちも分からなくもありませんが、私はむしろ現代的な暮らしに合わせて変えて行くことで新たな魅力が再発見され、それが結果的に和室を更に魅力あるものに変えて行く方が住まい手にとっても和室にとっても幸福な気がします。
かつて和室が愛された理由はそれが暮らしの中で必要とされたからであり、同時にそうした暮らしが魅力的だったからだと思います。現代ではその必要性や魅力が昔とは変わってしまった・・・と言うのであればそれを寛容に受け入れて自ら変わることを選ぶのも和室が生き残る新たな道ではないか?和室を心から愛する作り手の一人としてそんな風に感じます。
*:上はふすま紙の代わりに布を貼ったふすま。伝統的で繊細な和紙が正統なふすまの作りだが、張地を布にまで拡大することで様々な表情を演出できる。その一方で見栄えが変わったからと言って、張替えがきくとか、隣り合う部屋に合わせて意匠性の自由度が高いとか、ふすま本来の特徴はなんら失われることはない。
今日は吉田兄弟でも聞きませんか