2019年5月14日火曜日

野幌の家Ⅱ スパイラルダクト工事

 
「野幌の家Ⅱ」は比較的大きな平屋ということもあり1種熱交換換気を用います。写真はその配管用のスパイラルダクト(鋼製配管)です。
 
昨年の4月にスウェーデンまでダクト換気の視察に行きましたがそこで目にしたものはかなり刺激的なものでした。日本で一般的なフレキ(蛇腹)管の類いは気流抵抗が大きいことと汚れやすいこと、更には汚れた場合のメンテナンスが困難なために既に使われていませんでした。
 
代わりに使われていたのがこうしたスパイラルダクト。フレキのように自由に曲げて配管することが不可能なために設計時に全て配管経路を立体的に検討し決めておかねばなりません。
 
また後のメンテナンスのために断熱層の中には決して埋め込まぬように断面設計をきっちり検討しておかねばなりません。日本の場合は特に配管の露出はご法度となる場合が多いので天井隠蔽とした場合も管を潰したり、梁を削ったりしなくてよいように梁の下端と天井下地の間に20cm以上の水平に連続する空間(配管の水平展開用空間)を確保しておきます。
 
スウェーデンで聞いたお話しでは、本来鋼製ダクトの設計はこんな風に立体的な視点で行う必要があるために当初から三次元を検討できる設計用ソフトとしてBIMの採用が進んでいるのだそうです。平面を眺めながら垂直方向の設計を主に法規上の高さ制限と意匠設計者の好みのプロポーションで決めて行く日本のやり方だと、そもそもこうしたダクトの配管スペースは犠牲になり易く・・・その結果が配管の小経化、自由に曲げ易い(つぶし易い?)フレキ管類の多用という悪循環につながることを実感しました。同じく設計時に想定されないために換気機本体の置き場も結果的に階間や床下しか残されていない・・・というのも恐らく同じ体質からくるものだと思います。
 
換気装置は汚れやすいもの。目線の高さでフィルターやモーターの点検が日常的にできるに越したことはありません。たまに「日本の大都市圏は地価が高くて機械室や配管スペースのような無駄な空間を作る余地はない~云々」というお話しも聞きますが、ではベルリンやストックホルムの地価は果たして安いのだろうか?と思ってしまいます。
 
余談ですが、設備機器の屋外設置のように一見計算上は高効率に見えても建物内へ熱搬送の際は熱がダダ洩れとなり易いように、そもそもダクトの正しい設計や施工がEUに比べて非常に日本は遅れています。願うことなら学校教育で意匠の先生が住宅の設計の時間に機械室の計画の重要性やダクト配管を前提とした矩計(断面設計)の決め方を教える時代が来ていると思います。

柱芯-芯455mmの内法350mmの間に直径125mmの配管を2本平行に設置します。

こんな風に管と管の繋ぎ目はしっかりテーピングして漏気しないようにしながら管を延長してゆきます。

もう一本の管が設置された状態です。 

管と管が干渉することなく設計通りに納まりました。
 
 
天井吹き出し口の位置はダウンライト等の照明器具と合わせてピシッと位置決めを行います。
 
今日はM.W.Mなんていかがだろう?