2015年5月19日火曜日

山の手の家 天井解体

こちらは天井の吹込GWを気密+防湿ビニールと一緒に解体したところ。垂木を受ける母屋(□105)や垂木(45×60)、野地板(180×12)なんかが見えます。この北海道スタイルの無落雪屋根の構造が最上階の桁梁の上に束立による四角く背の低い小屋組みを載せた構造であることが分ると思います。ちょっと気になるのは天井の野縁(天井の下地)廻りは金属製の軽天部材が使われていることです。前回の記事でも断熱層を貫通する部材の熱伝導率には注意が必要である事を書きました。小さな釘一本でも熱橋(ネッキョウ:熱の通り道の意)を生じると室温の高い側で簡単に結露してしまします。その観点から上の写真を見るといかがでしょう?野縁を吊る棒は金属製であるばかりか断熱層を貫通して外気が出入りする小屋裏に露出しています。足元の30~40cmは断熱材に埋まっていますがそれより上は外気に曝され、母屋に打ち込まれたインサートから吊り下げられていました。
結論から言うと天井断熱においては断熱材を貫通する形で金物の天井下地を使うことは良い選択とはいえません。小屋裏の外気の冷たさを伝えてしまわぬように天井の下地も全て木製とすることが大切です。個人的には断熱層を貫通せねばあちこちが納まらない「天井断熱」自体があまり好きではありません。理想は屋根断熱として断熱と天井組みを分離する方法がよいと思います。
 

こちらはスノーレーン(雨水の流れる水路)の底を室内側から見上げたところです。右側に梁セイ(梁の垂直方向の寸法の意)が36cmの大梁が見えます。重たい雪を半年間も載せておく北国の屋根にはこれくらいの寸法の梁がよく使われます。問題はこの大梁に沿ってスノーレーンが通っていることです。写真でも分るとおりスノーレーンの底と梁の天端(上端の意)の間の隙間はほんの僅かで、吹込GWで塞がりやすいのです。いったん塞がってしまうと小屋裏の換気がスノーレーンの左右に上手く流れず結露を生じやすくなります。前回の記事で天井のビニール越しに見えた茶色い染みの正体はスノーレーンの底に使われた赤ラワン製の耐水合板の色だったようです。
 
              
こちらがその結露部分のアップです。ラワン合板が結露する事により赤い渋色が直下の吹込GWの上に垂れて13年の間に染みを生じていました。
 
 
こちらは天井から落とした吹込GWを雪かきスコップで片付ける大工さん。この当時のGWはマット物も吹込みも、ちくちくして質がよくありません。現在の新築は全てマット物にしているので素手で触れますし服装も普段と変わりません。しかしこの当時のものを解体する場合は写真のように全身防護が必要になります。今後のリフォーム社会を考えると建材はどんなものでも安全に解体できるものにするべきでしょう。
 



こちらが天井断熱を小屋裏に上がって見下ろした写真。吹込GWの向こう側が天井です。天井を吊っている吊棒が断熱層を貫通して冷気に曝されている様子が分ると思います。話は変わりますが国が薦める「長期優良住宅」では天井断熱に天井点検口を設けて小屋裏の構造材を確認できるようにすることが求められますが、断熱層と構造が一体となるこうした天井断熱ではいかに困難な事であるのかよく分ると思います。想像してみてください。ハッチを空けて天井裏を確認した後、ハッチを閉めます。さてあなたはハッチの上に吹込GWをどうやって戻しますか?(笑) 天井断熱である以上は独立した小屋裏ごとに高価な断熱気密点検口を用いねばなりません。こうした部分は設計をより進化させるところでしょう。

こちらが無落雪屋根の外観。白く見えるのがスノーレーンです。こんな風に屋根の中央部分に雪や雨水を集めるように通常とは逆勾配が付いています。でも奥になにか突起が見えます。

なんと防水コンセント。読者の中にはなんでこんなところにコンセントがあるのか理解できない人がいるでしょう。(笑)実はこれ凍結防止ヒーター用のものなんです。でも通常は外壁側に付けます。この位置だと屋根の雨水管が詰まると水面下に沈んでしまいます。防水コンセントは水中コンセントではありませんので悪くするとショートしてしまいます。北海道で一般的なスノーレーンの屋根の欠点のひとつは排水先として雨水や下水設備という都市インフラが必要な点と家の中を上下に貫通する雨水管を凍結から守る熱線ヒーターが欠かせないということです。これは裏を返せば都市インフラの余力を奪う事ですし、都市生活者ほど電気エネルギーへの依存から抜け出せないという負のスパイラスを生みます。そんな理由で、北国の陸屋根を進化させる必要性を感じています。
 
今日はChayなんていかが?平成風な昭和フレーバーかね~(笑)

2015年5月15日金曜日

山の手の家 結露探し

本日は完全に撤去予定の3階部分の内壁を断熱材ごと全て解体しました。天井のグラスウールブローイング(吹き込みグラスウール)だけはまだ残してありますが、室内から見ると柱の外側に貼った石膏ボードが全て見えるという状況です。(詳しい壁の構造は以前のブログを参照してください。)
 
さて今日は北海道で標準的な断熱構造を持つ建物の壁や天井の内部が13年という月日の中でどのように変化するかを見てみたいと思います。上の写真は天井の吹き込みグラスウール(以降:吹込GW)を見上げて撮影したものです。吹込GWは通常のグラスウールを細かくしたものとお考え下さい。ガラス繊維で出来たダウンの羽のような感じです。室内からの湿気で傷まないように写真のようにビニールを貼った中に機械を使って必用な厚さを吹き込んで使います。北海道だとだいたい30cmくらいです。

以前のブログでも触れたように断熱材は基本的にその種類を問わず湿気を嫌います。黒く変色しているところは何らかの理由で湿気が入ったところです。上の写真はビニールに穴が開いています。埋め込型の照明器具(ダウンライト)を使っていた跡です。ダウンライトをビニールを破って断熱材に埋め込んで使用する場合は専用の製品を使うか適切な工夫を加えます。それらが不十分だとこうした状態になりやすいのです。

こちらの写真は柱の根元から天井を見上げたところです。これはよくありません。その理由は柱を挟んで左右のビニールがつながっていないからです。ビニールの無いところからは室内の湿気が天井に逃げますし、天井の冷気はこの隙間から下の階に降りて部屋を冷やします。正しい施工はビニールを先行させて隙間を作らないか、どうしてもそれが難しい場合は室内側から気流止めと呼ばれるグラスウールをしっかり押し込んで隙間を塞ぐことです。

こちらは元ユニットバスの窓廻りです。ユニットバスは解体しました。湿度の高い部屋のサッシ廻りや壁の内部がどんな風になり易いのかがよく分ります。遠目の写真でも窓の上の石膏ボードが黒ずんで染みのように見えています。

その正体は黒かび、室内の湿り空気が壁内部に侵入しグラスウールを通り抜け、外気で表側を冷やされた石膏ボードの裏で結露(水に変わること)を生じたのです。水分は水蒸気のままならあまり極端な悪さは起こしませんが一端、液体に戻してしまうといろいろと厄介な問題を生じます。それが壁の中だと場合によっては構造材の傷みのような事態に発展するケースもあります。しかしあんまり心配するのも考えもの、確かにカビは生えていましたが13年間でこの程度、石膏ボードもしっかりしていましたし、構造体の痛みもありませんでした。さらには浴室の換気扇が故障していて使えなかったということですからそれが機能していたらきっと問題はなかったと思います。よく浴室の換気扇はお風呂を使うときだけの人がいますが安全を見て付けっぱなしの方が私はよいと思います。お引渡しの際に他の建て主さんにもそうお伝えしています。

こちらはLDKの壁。柱と柱の間に見えているのが石膏ボード。浴室以外のところは特に目立った傷みは少なかったです。 


さて今度はちょっぴり深刻なお話しをしましよう。上の写真は柱を外れて打ち損ねた釘を室内から撮影したものです。でも随分錆びていると思いませんか?その理由はこの釘が外から冷やされてグラスウールの内の空気を結露させからです。グラスウールの断熱性のキモは抱え込んだ空気です。しかし空気である以上100%の絶乾状態を維持することは難しいのです。熱伝導率(熱の伝わりやすさを示す指標)の高い鉄が壁内にたった一本飛び出しただけでその釘は熱橋(ねっきょう:熱の通り道)となって壁の中で水を生産してしまいます。

全体的に見るとこんな感じ。床からちょうど50cmくらい上に一本だけ突き出ています。気になる柱の足元を見てみましょう。

こちらがその柱の足元。全長たった3cmの釘が作った水の跡が見えます。室内の湿り空気が壁の中に入り難いようにビニールを貼ったところで、グラスウール自体に含んでいる湿り空気を結露させてしまうのではきりがありません。このように釘を打ち損ねてしまった場合は抜いて打ち直すか、それが難しい場合はウレタンで釘ごと断熱処理してしまいます。もう一つ別の解決策は釘の頭の上にさらに断熱材を貼ることです。要はそもそも釘自体を冷えないようにしてしまう事です。釘が冷えねば結露など起こりません。したがって室内からのウレタン処理も必要なくなります。


天井に茶色の染みが見えます。これはなんでしょう?

この写真一枚を見てぴんと来る人は現場の達人です。まず染みが手前から奥までずっと続いていますよね、今まで見てきた黒い染みとは違ってこちらの染みは茶色です。染みの続く先に銀色に光る配管のようなものがあります。これは屋根に溜まった雨水を落とす雨水管、茶色の染みはそこに向かって伸びています。要はこの茶色染みの上にスノーレーンと呼ばれる水路があってそこを流れた水を落とすのがこの雨水管だと考えて下さい。屋根の構造がだいたい想像できると思います。水路の底は冷たい雪解け水で冷やされていて、最も天井に近い位置を通っています。屋根の水を集めるためには屋根の最も低いところに水路を設けねばならずそれは同時に天井と水路が最も近づくことを意味します。
 
ではその水路の真下にダイニングテーブルがあったとしたらどうでしょう?冬のお鍋やホットプレートを使った料理は天井を温めますよね、食堂ですから暖房の設定温度も家中で最も高くなります。そうした熱が天井を温め、小屋裏の外気に伝わります。この外気は動くので通常ならすぐに熱は外に逃げてしまいますが、先程お話したように水路の底が天井に一番近いということが災いして、小屋裏の換気が間に合わないと、このように少しづつ結露水が蓄積します。水路の底が結露し、断熱材の上に落ちた水滴が茶色の染みの原因です。室内の湿り空気が直接漏れた箇所は黒い染みとなり、部屋の熱だけが逃げた部分は茶色い染みを生じます。
 
この形式の屋根をスノーレーンと呼び北海道では非常に多く採用されていますが断熱の方法や水路の底の空間的な余裕(通常は10cm以上断熱材から離し小屋裏換気は屋根の全周で所定の面積を確保する)等細かな配慮が欠かせません。計画ではこうした従来の屋根の短所を改良した0勾配のシンプルな屋根に葺き替えます。
 
スノーレーン屋根??なにそれ? という人は別の建物ですがこの写真をご覧下さい。こんな風に建物の端から雪が落ちないように屋根の中央に集めて融けた水だけを下水に流します。この建物では壁に貼りついている雨水管が部屋の中にあると思っていただくとよいと思います。
 
 
今日はポリーニのショパンなんていかが https://www.youtube.com/watch?v=K8eV7jjifCo

2015年5月14日木曜日

第六回 JIA、テスクチャレンジ設計コンペ 登録締め切り迫る!

いよいよ本日が締め切り!

迷っている人はまずエントリーしてちよーだい!(笑)

日本の建築学校の多くは「意匠」と「環境」を分けて教えますよね。でもそんなのもう古いんじゃないかって思っています。そんな理由で北海道らしく意匠家が取り組める環境型コンペ(設計競技)を考えました。もちろん設計事務所や学校で意匠を専攻すしている人もいいけど、工務店で設計班やってますとか、実は専攻は「環境」なんですけど絵描いてみたいっす!なんて人にどんどん参加してほしい。「おいっ!代わりに登録しといたよ」なんていう粋な上司や会社のアフター5に大人の課外授業として仲間同士、取り組むのも悪くない。ぜひぜひみなさんでコンペを楽しんで盛り上げてほしい!積極的な参加お待ちしています。(笑)

詳しくはFBのコンペ専用HPへ! https://www.facebook.com/Jiatesukucompe

三五工務店さんのモデルハウスを見て

昨年、9月に工事中の「澄川の家」を見学に来られた三五工務店さんより、モデルルーム完成のご一報を頂戴し、見学に行ってきました。もの凄く大きなガラススクリーンが特徴的な外観。サッシやカーテンウオールもメーカーさんと共同開発を行ったものだそうで北国で可能となるデザインの限界を押し上げているなと感じました。
澄川の家本日のお客さま http://ako-re.blogspot.jp/2014/09/blog-post_4.html

サッシのアップがこれ。開閉する窓でも障子を見せずにデザインされています。

居間とダイニングキッチンはスキップする構成。

「北国の家だから窓は小さめに」なんていう常識をあざ笑うかのように大胆に南向きに開放された居間のカーテンウオール(窓壁)。自動車会社のショールーム(職場)じゃなくて家庭のレベルでここまで出来るっていうのは素直に驚いていいし拍手を贈りたい。

ゆったりしたお手洗いと壁に床と同じタイルが貼り上がって行くところなんてよく考えてあります。
 

階段は片側を壁にピン接合して反対側をフラットバーで支持したもの。光の透過を妨げず、
空間的な圧迫感も抑えたデザイン。

こちらは壁構造で350mm断熱。

しっかり模型を作りPRと同時に仕事を記録しているのがいいと思います。

二階の水廻り。もの凄く開放性の高いお風呂なんかはひと頃の工務店自社設計とはとても思えない。

階段から南方向を見返す。非常に間仕切りが少なく広々とした空間構成。

屋根断熱とすることで天井デザインの自由度を上げる。壁と天井のスリットに照明を仕込んでぐるっと四辺を光らせる。なんていう間接照明。お約束の居室の天井の中央に円盤型の大きな照明器具なんてここにはない。

すっきりまとめられた二階のユーティリティー。ついにトイレも一体型の時代が。これも従来の工務店の自社設計ではまず見られない。便器の見える設計なんてしたら叱られる会社がまだまだ多い。 やっぱ北海道の工務店さんは凄いね! 私もガンバロウ!

今日はJAZZね https://www.youtube.com/watch?v=ReOms_FY7EU
 
 

2015年5月13日水曜日

旭川にて 新たな敷地にこんにちは!

 
昨日は旭川に敷地を見に行きました。近くに車を止めてまずは敷地の近くを歩き回ります。公園はどこにあるのか?学校は?人通りは多いのか?ゴミステーションはしっかり管理されているか?近所のお庭は手入れが行き届き今の時分ならチューリップやシバ桜、れんぎょや桜が咲いているか?路上駐車の車は多いか?歴史ある住宅街で住民のコミュニティーがしっかりしているか?日当たりは良いか?地盤は良いか?冬の風向きはどちらか?建物の主要な窓を向ける方向はどちらか?(南でよいのか?)、冬はどんな風景になるのか?町内の除雪はよいのか?夜は(外灯が)暗いのか?静かなのか?、夏になったら友人を呼んでBBQをどこでしたら気持ち良さそうか?住んでいて「来週は留萌にまでキャンプに行こうね!」っていう会話が家族から自然に出るだろうか?車は二台停められるか?(旭川では特に大切)、寒さに対する備えは十分か?(札幌よりずっと寒いから)、日本屈指の厳しく美しい冬を楽しめる性能が持たせられるか?長い冬の夜には暖かな間接照明と炎が家族に安らぎを与えられるか?キッチンは美しく機能的か?動線や間取りは十分無駄がそぎ落とされシンプルに出来ているか?備え付けの家具や建具は美しいか?暮らしの中で毎日使いたいと思わせるような洗練された道具に出来るだろうか?、寒さを暮らしに生かせるだろうか?・・・・・


久しぶりに旭川市役所に寄って、用途地域やそれ以外の建築制限、行政的指導の有無等々を聴取。それから東神楽の家具屋さんと計画で重要となる窓屋さんと打ち合わせをして帰路につきました。さてどんな風にしようかな?

今日は2CELLOSなんていかが、ここまで弾きこんでくれればマイケルも本望だと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=Mx0xCI1jaUM

山の手の家 高さ整理

 
今日は今までの実測結果をまとめた高さ関係の整理です。まず上図は左側が既存の図面を元にした想定図、右側が先日来より現場を解体し実測した事実を元に起こした実態図です。現況の床がネダフォームに設計変更された結果、想定より60mm低かったことは前に述べました。現況が想定より低いのですからその上に新規の床を組んでも2.4mの天井高は余裕で取れるはずでした。しかし先週末、天井の一部を解体し柱の長さを実測したところ今度は柱の長さが120mm短いことが判明したのです。2.4mの天井高を取るのに6cm貯金があると思い込んでいた私たちですが、一転(6cm-12cm)=-6cmの赤字(寸法不足)に陥ってしまいました。深刻なのは間取りを変更するために既存の桁梁の強度不足が生じる部分に下から大きな梁を追加して補強しようと考えていたところが全て納まらなくなってしまうことです。上図のように補強の梁が天井を42mmも突き破ってしまうのです。さてそこで急遽、武田社長と作戦会議です。こんな風にリフォームは新築とは全く異なるものづくり。反射神経が大切です。(笑)

梁伏図を前に解決策を練る。その結果はと言えば、概ね方向性は決まり解決策が見えました。
うん出来そうだ!(笑)
 
今日はTOTOでEndlessなんていかが(笑)

2015年5月11日月曜日

山の手の家 壁構造 Before-After

昨日は床のお話しをしましたから、今日は壁のお話しにお付き合い下さい。築13年ながら大規模な性能向上リフォームに踏み切った理由が室内の寒さと暖房費だったことは既にお話ししました。床を解体したことでその一端も明らかになりましたからその対策を練りながら、今度は壁をどうやって再利用して300mm断熱化するのか考えたいと思います。そもそもリフォームですから全てを一から作るものじゃありません。使えるものは使いながら必用な性能を追加し、望ましくない部分は修正し、それが完全には難しい場合はどこまでなら可能なのかを現場と相談しながら進めます。上の図は向かって左側が現況の壁構造、右側が今回の工事で完成する壁構造です。壁の厚さは現状の16cmから約40cmになります。既存の壁の構造(柱、間柱)+気密+断熱材+内装の石膏(PB)ボードの状態をまず健康診断し、問題が無ければそれを中心に外側と内側に断熱と仕上げを追加する作戦を立てました。

外壁のガルバリュウム鋼板を剥ぎ取ったところです。文字通り「防水、防風、透湿シート」が見えています。前にもお話ししたとおりこのシートがダウンジャケットの外布に当たります。風や水を通さず万が一内部の断熱材が湿った場合は水蒸気のみ外部に排出できる機能をもったシートです。もちろん丈夫なものですが紫外線には弱いのでガルバリュウム鋼板の外装で紫外線に当たらないようにして使います。横方向に見える木材は通気層用のもので、鋼板が直接シートに密着してしまわないようにします。

こちらは室内の石膏ボードを剥がしたところ。黄色いグラスウールの前に半透明のポリフィルムが見えます。横胴縁(下地)のあるところで10cm以上重ね合わせるというお約束通りの施工で問題はありません。次はグラスウールの状態を見てみましょう。

ポリフィルムを開口し内部のグラスウールを露出させました。まず状態はきれいで昨日工事したようです。とても13年経っているなんて思えません。しかし見ての通り入れ方はかなり荒っぽく、無理に詰め込んだ感じ。これはあまり良くありません。

表面ばかりではなく今度は内部も確認します。図面にも描きましたが、現状の壁構造は柱の内外に石膏ボード(PB12.5mm)を両面貼りし、屋外側には「防水、防風、透湿シート」+「通気層」+「外装」、室内側は内装仕上げに「ビニルクロス」を貼っています。要はグラスウールは長年石膏ボードに挟まれていたのでその内部に湿気が入っていないか、なにか痛みがないかを事前に確認しておきます。

約10cm厚のグラスウールをめくったところ。屋外側に貼った石膏ボードの裏が見えている状態。とてもきれいで全く痛んではいません。こちらも昨日工事したように見えます。余談ですがグラスウールはすぐに湿気るからよくない。とか壁を気密すると内部に湿気がこもって柱を傷めるからよくない。なんて言う人がいまだに専門家の中にもいます。正しく施工すれば断熱材も構造も全く傷まないことを見てほしいと思いますし、40年以上を掛けて北海道の作り手が習得した技術をもっと信用してほしいと思います。

石膏ボードの表面にも濡れやカビの痕跡はありません。室内の湿気が壁に入ることなく理想的な状態が保たれていたようです。

再利用するのできれいに元に戻します。

さて今度は室内の湿気がグラスウールに入ってしまった部分を見たいと思います。場所は浴室の天井。「山の手の家」では最上階に浴室があり、ユニットバスの天井の裏に断熱材を載せて天井断熱としていました。みなさんの家にもユニットバスはありますよね?中に入って天井を見上げて下さい。換気扇と天井点検口が見えるはずです。その点検口の向こうにグラスウールがあります。さてその状態は・・・なにやら黒ずんで見えます。

こちらがそのアップ。日常的に浴室内の湿気が天井のグラスウールに吸収、小屋裏には外気が入りますからそれで蒸発。といったサイクルを繰り返したために壁とは比べものにならないくらい断熱材のダメージが大きいことが分ります。湿った綿状のグラスウールの中を小屋裏の空気が通り抜けることで空気に混じっている埃(ホコリ)を吸着しグラスウールが真っ黒になります。換気扇が故障し入浴中に十分な換気が取れていなかったことも症状を悪化させた一因でしょう。さらにユニットバスの壁と間仕切壁の間には空洞がありますから小屋裏の冷たい空気がそこを通って浴室の下の部屋を冷やしたでしょうし、室内の湿気がここを煙突代わりにして小屋裏に逃げていたことでしょう。このつくりは今でもありますよね。こうしたことを防ぐにはユニットバスの天井の向こうにもう一層ボードを貼って天井をつくり二重天井として完全に湿気と断熱材を分ける工夫が有効です。今回もそうします。(笑)
 
さていかがだったでしょう。比較的新しい建物でも改良すべき点があることがお分かりいただけたと思います。リフォーム社会とはこうしたさまざまなケースに対する処方箋をたくさん用意する(せねばならない)社会ですよね。そのためには私たちの更なるスキルUPと同時にこうして現場公開を許してくれる、理解あるクライアントさんの存在が欠かせません。この場を借りて御礼申し上げます。 素敵な家に生まれ変わらせましょう!(笑)
 
今日はトミーフラナガンの素敵なピアノなんていかが?(笑)
 

2015年5月9日土曜日

山の手の家 解体工事&発見

性能向上リフォームは新築とは全く異なるものづくりです。なんといってもまず最初に解体工事から始まるなんてちょっと不思議な感じです。さて昨日から始まった解体工事ですが、床を部分的に解体しているときに新たな発見がありました。現場を担当するのは㈱丸稲武田建設さん。武田社長よりいつもの優しげな声で「ちょっと床が違ってるんで見てほしい。お客さんが床が冷たいっておっしゃっていた理由も分りました。」と電話が入りました。
 
そこで目にしたのが上の図の右。まずは読者のみなさんも概略が分らないと話がつまんないと思うので簡単に背景を説明しますと、この「山の手の家」1階がコンクリート造でその上に2階、3階を木造で載せている構造。北海道の人ならお馴染みの「木の城~」風の構造なんです。
 
当然2階の床はコンクリートのスラブ(床版)の上に木床が作られている訳なんですけどこれが凄く冷たい床でお客さんを完成当初から悩ませていました。当時の図面を見ると床下に20cmくらいグラスウール(GW)が入っているはずなのになぜ?それが不思議でした。(上図:左)そこで現在の床の上にもう一層新たな床を作り断熱も新たに10.5cm加えようと考えました。(上図:左)いくらなんでも床下に30cmもGWが入っていればもう冷たくはないでしょう!そんな風に考えて図面を作りました。(上図:左)ところが現場はその予想を裏切り図面とは全く異なる仕様で作られていました。(上図:右) まず根太フォームというプラスチック系断熱材でできた10cmの断熱版の上に45mmの角材を敷き並べ床を載せていたのです。その結果床下は高さ45mmの空洞が家中に連続する事になりここに外気が入って床を直接冷やしていたのです。(上図:右)肝心の断熱材である根太フォームと床の間に外気が走るのですから断熱がぜんぜん効かないばかりか暖房を焚いて床を暖めても冷気で次から次に冷やされて行くというのがその原因でした。

根太フォームの上に敷き並べられた□45mmの根太。この隙間に冷気が走ります。

こちらは根太フォームの全体像。高価な良い材料を使いながら正しく使いこなせていないことが寒さの原因でした。読者のみなさんに誤解してほしくないのは結果として適切ではない結果になってはいましたが、けして作りての悪意は感じないという点。こうした誤りが起こる最大の原因は「無知」であるからです。恐らく作りてとして、冷たいコンクリートの上に床を作ることに大きな不安があったことが感じられます。その一番の理由が32坪分も高価な根太フォームを使い床が冷えないように設計変更までして現場を納めていることです。しかしその熱意とは裏腹に根太フォームが性能を発揮することはありませんでした。外気が入り放題ということは気密が著しくよくないということです。どんなに優秀な断熱材を使おうとも温めたい床との間に寒さそのものである外気を通してしまうと結果は残念な事にならざるを得ないのです。

こちらは温水器の排気管を抜き取った後の壁の断面。グラスウールが黒く煤(すす)けているように見えるのは、躯体内気流の跡。要は壁のGWの中に風が通り抜け埃(ホコリ)だけがグラスウールに黒い汚れとして残った状態です。ところで読者のみなさんはダウンジャケットをお持ちですよね?冬場は暖かくてとっても重宝します。しかし外布がスケスケの風通しの良いメッシュ生地だったら果たして暖かいでしょうか?(笑) ダウンが暖かいのは抱え込んでいる空気に外の冷たい空気が絶対に混ざらないつくりのおかげです。だからダウンの外布はとても目の細かいナイロンツイルで防風性の高い生地を使うんです。そんな風に考えると気密って断熱を完成させるためには欠かせない相棒みたいな存在だと思いませんか。
 
もう一点気になるのが壁の中程から外に向かってなにやら木材が切断されているように見えることです。これは筋交いだと思われます。現在のように耐力面材として構造用合板が普及する以前はこうした斜材で耐震性を担保していました。もちろんこんな風に傷つけてしまっては効果が失われてしまうので今回の工事で外周部には全て構造用合板を面貼りします。
 
今日はRUSHでトムソーヤー!さあて面白くなってきました。(笑)

2015年5月3日日曜日

山の手の家 性能向上リフォーム着工迫る

 
ふと気付けばゴールデンウイーク。そろそろお花見も~なんて言っていたら・・・あっという間もなく桜ももう終り。そんな中で「山の手の家」の性能向上リフォームが始まります。
でも一見して「えっ?」とお感じの方もいらっしゃいますよね、「リフォームといったってぜんぜん古く見えないじゃないの?」大勢の方がほぼ例外なくそうした印象をお持ちだと思います。実際に完成したのは平成14年の6月ですからまだ13年も経っていません。実は2015シーズンの始まりは「新しい家なのに大規模なリフォーム」というプロジェクトです。
 
内覧会で数回お会いしたのをきっかけにお話しを伺うことになった「山の手の家」のクライアントさん。築12年の新しい立派なお宅にも関わらず一番の問題点は寒くて仕方がないとのこと。暖房は温水式パネルヒーターが窓の下に設置されていて一見なんの問題もありません。しかし奥さまからひと月の暖房費を聞いて絶句してしまった次第・・・。まずはその原因も含めて究明すべく図面をお借りして調べてみると色々と改善点が見つかりました。まず前提としては施工も設計も取りたてて悪いということはありません。しかし1階部分を無断熱のRC(鉄筋コンクリート)で作り木造の二階と三階をその上に載せるという基本構造は高断熱化の工夫なしには温熱的に非常に不利です。無断熱のコンクリートは冬になると冷えるばかり、その上に作られた二階は床が冷えてたまりません。暖房機はありますが床全体を暖めるには小さすぎて役に立たず、大きくしようにも既に暖房費が限界という状態。三階は熱的には二階よりも暖かですがLDKとなっているために今後は上下の動線的に難儀が予想されます。また大きなトラックが家の前を走るとかなり三階が揺れるそうで動線ともども耐震性も心配という状況でした。実はこの「寒い」と「耐震性」の問題、よくリフォーム時に話題になります。それくらい一般的な悩みという訳ですが、基本的にこの二つに答えることは建築的にかなり大掛かりな取り組みが必要となることは憶えておいた方がよいでしょう。言い換えるとこの二つを解決するためには建物の骨組みから見直す必要がある場合がほとんどなのです。
 
お話しを伺い、話しに話し合って出した解決策は、写真の3階部分を丸ごと解体(減築)し、ニ階の床と壁を300mm断熱化した上でLDKを二階に下ろし作り直すというものです。もちろんそのために二階の間取りはがらりと変わり寝室エリア+水廻りエリア+LDK+収納エリアが全て二階に集中します。要は二階に浮いた平屋感覚の住まい。一階はカーポートや玄関エリアとなります。
 
さてGW明けから着工、まずは三階の解体ですが建て替えとは異なり、直すための解体ですから大工さんを三階に上げて丁寧に少しづつ行います。したがって解体現場にお約束の重機は使いません。いわゆる手解体というやつで大工さんの腕が頼り。
 
担当は丸稲武田建設のU棟梁、クライアントさんと一緒にどうぞよろしくお願いいたします。(笑)
素敵な家に生まれ変わらせましょう!
 
今日は山下達郎!なんていかが https://www.youtube.com/watch?v=XbLCcMmm7UE
 

2015年5月1日金曜日

ホームページを作りました

実は昨年から遅ればせながらホームページ制作に取り組んでいまして、この度、無事完成しましたのでお知らせいたします。みなさまどうぞ一度ご覧下さい。

山本亜耕建築設計事務所HP http://ako-a.com/index.html

一生懸命作っていただいたのは、リセスホッカイドウの代表を務める朝倉さん。実は彼も元設計事務所勤務の経験があり、各ページを作るに当たっては設計という生業の理解度が高く大満足でした。今後とも現場の様子や暮らしの事柄を積極的に発信して行きます。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。(笑) 

今日はデザイナーの朝倉さんに大好きなバンアパを贈ります。
素敵なHPをありがとうございます。
https://www.youtube.com/watch?v=nba_DfNBQI0

2015年4月23日木曜日

宮の森の家 外構工事

外構工事が始まった「宮の森の家」。家族で楽しめる家庭菜園とカーポートの舗装に札幌軟石を使います。やっぱり足元が決まらんとね~(笑)。ということで完成が楽しみです。もちろん担当はガーデンジャパンの小坂女史。今回の現場はかなり勾配もあるのでそこの処理が肝心。腕の見せ所ですね~っとハードルを上げてしまいました。(笑)

今回の札幌軟石はかなり大きなものを使います。

前面道路へのアプローチも舗装してすり合わせます。

現在はまだ砂利敷きですが今後が楽しみです。


情報交換


-18℃の外気をいきなり機械に入れるのではなく、地熱で予熱しプラスの温度にしてから入れることで熱交換の効率を維持しながら機械の凍結や破損を防ぐことができる。

こうした熱画像で今まで一般的だったペアガラスの樹脂サッシからトリプルガラスへの移行が今後加速しそうです。
 

帯広の田中さんから面白いデーターをいただいたんでUPします。北海道の中でも最も北海道らしい風景のひとつと言われる十勝地方。地元の小豆を使ったお菓子産業は「六花亭」をはじめ全国区になりましたけど、工務店さんも研究熱心なところが多くて私もいろいろ教えていただいてます。冬場は十勝晴れと言われる晴天が続く反面、放射冷却現象で冷え込むと-20℃近くになる事さえあります。そんな厳しい気候の中で窓や熱交換換気を使いこなすのには工夫が必要。まあ結果から言うとこれから窓はトリプルでしょ!ってことと全国屈指の高い電気料を睨んだ一種換気の設計スキルが必要だと思います。

2015年4月18日土曜日

最近の北洋銀行は面白い!

 最近の北洋銀行は住宅向け金融商品が面白いです。たとえば一般的にリフォームローンといえば融資限度額3~400万円程度の銀行もまだまだ多く、理解のあるところでも土地の評価額が実質的MAX。巷じゃ新築からリフォームに家づくりの主流が移行しつつあるにもかかわらず資金調達に関しては苦労する場面も少なくない。その理由は減価償却という意味不明の考え方により、リフォームを必要とするような住宅は既に担保価値に乏しいとみなされるからだけど、裏を返せば新築市場が急速に縮小する現在、拡大するリフォーム市場に適した商品開発が遅れているともいえる。そこで同銀行は以前にもご紹介した北海道R住宅基準(例:西岡の家)を満たしたリフォームなら新築と同等の融資が受けられる商品を開発。R住宅の特徴である99年基準以上の断熱性(壁150mm断熱)+耐震化という「新築並みフルリフォーム」の推進に大きな役割を果たした。
「西岡の家」とは? http://ako-re.blogspot.jp/2009/08/blog-post.html

 今日紹介する「NZH対応住宅融資」もそうした成功体験に基づく第二弾だがそもそも建物の高性能化を普及、推進する上で資金調達先との協力関係に着目することはたいへん効果的。こうした汎用モデルはスキルアップに消極的な工務店や設計事務所を見分ける目安にもなる。なぜならこういった高度な環境性能を有する住宅は誰でも簡単に建てられるとは限らないからだ。

 R住宅では、新築並みの金融商品は引き続き売りたいが悪質リフォームによる担保価値の低下も困る!といった銀行の本音と優良だが高額になり易いフルリフォームを推進したいとする思惑が一致することで望外の相乗効果を上げたように、今後は全国一環境建築に理解ある銀行として、住宅金融商品市場でのシェア拡大を狙ってほしいと思います。 省エネをはじめとする環境建築は北海道という地域のお家芸だけど、日本の家全部がもっともっと環境建築になるといいですね!(笑)

北洋銀行 「全国初:NZH(ネットゼロエネルギーハウス)融資開始」

http://www.hokuyobank.co.jp/announcement/detail/20150401_070188.html

北海道R住宅について
http://www.replan.ne.jp/content/hr/qa/