2016年5月19日木曜日

ニセコの家Ⅱ 断熱下地工事

 
「ニセコの家Ⅱ」では更なる300mm断熱の施工効率化とコストデザインの進化に挑戦します。建築って基本的に凄く高価なものですよね、ですから出来上がりの良さや機能を果たすって言うことと同じ位、その時代に合わせたコストの検証は欠かせません。建設コストの内訳の多くは施工手間が占めるのですからその多寡をきめる設計と施工法の見直しをテーマとしました。
 
写真は屋根の厚物合板の上に貼った気密+防湿ビニール。その真ん中に見えるのが断熱垂木です。このままこの垂木の厚み分、一発で吹き込み断熱を行ってもよいのですがそれだけだと垂木の部分は熱橋(熱の逃げ道)となり、吹き込み部分との間に大きな断熱性能の差を生じます。そこで熱橋を減らす工夫をもう一手間加えて合計約35cm分の屋根断熱を一回で吹き込み施工する予定です。 通常の吹き込み断熱は下から上向きに(例えば下階から天井裏に向かって)作業することが多いですが、今回の場合は下向き仕事(重力方向)に広い面積を吹くことでどの程度時間当たりの施工効率が上げられるのかを確認します。

こちらは外壁の耐力面材(OSB合板)の施工です。写真は北壁を1階まで張ったところですが今後二階まで張り上げ、屋根と同じように気密+防湿ビニールを表面に貼り屋根の気密+防湿ラインと連続させます。接続を待つ屋根の薄緑色のビニールが折り曲げられているのがお分かりでしょうか、要はカブトムシの甲羅のように合板を面貼りした構造体の外側をすっぽりとビニールで覆ってしまうことで従来、壁は室内側、屋根は屋外側(当事務所は使い道の乏しい天井裏が出来る天井断熱は行っていない。基本的に外貼りの屋根断熱が標準なので)にあった気密+防湿ラインをシンプルに連続させました。こうすることで(専門家の人は断面図を思い浮かべてください)室内側から1:構造レイヤー+2:断熱レイヤー+3:通気、仕上げレイヤーが壁も屋根も同じ構造で施工可能になります。またこうした屋根、壁の構造の統一化は各工程の終了を合わせる事が容易になり次の工程の手配も簡単になります。従来のように屋根は屋根専用の断熱納まり、壁は壁でまた別の納まり、床は床で~なんて分けていてはその複雑さが工程の足を引っ張ります。 前述のようにシンプルな3レイヤーに建物構造を統一し、外壁材を貼れば壁、屋根材を貼れば屋根。要は3番目の材料が違うだけでその他は一緒!というシンプルな設計にしました。
 
余談ですがこの後、窓を取り付ければすぐに気密試験が開始できて、もし漏気を発見しても屋根、壁のビニールが全て露出していますから手当ても簡単に出来ます。漏気部分の特定には夏場ですからトレーサーガスを使ってみようかな?なんて考えています。気密試験終了と共に断熱工事開始。室内壁は従来通り大工さん、屋外は吹き込み屋さん。と手分けして一気に始め、こちらも単位面積当たりどの程度の施工出来高になるのかを確認したいと思います。
 
後はお天気が心配。この方法は基本的に雨の多いシーズンだと養生に更なる工夫がいるでしょう。今頃の穏やかな北海道向きですね。
 
今日はヴァレンティーナのピアノ。ラフマニノフで