2014年4月12日土曜日

意匠屋目線で考える外貼断熱VS充填断熱


読んで字のごとく「外貼り断熱」とは柱の外側で断熱することを言う。そんな説明が一目で分る図と温度分布を示すコンター線(本来は等値線という意味だがこの場合は等温線)図。当然ながら壁の部分、部分で温度差が極端に大きい壁構造は躯体内の結露やカビ、室内の温度差等の問題を起こすことも多い。
 
                               
実際の工事の様子。断熱材受の木材の上まで熱が逃げにくいように正方形に切られた断熱材で覆っている。
 
 
室内は柱、梁が全て顕しとなり経年劣化の監視やさまざまなインテリアが可能になる。


 
よく断熱って「外貼」がいいのか?はたまた「充填」がいいのか?要は「ボード状」がいいのか?やっぱり「繊維系」か?で作り手の中でも意見が分かれる時がありますよね~(笑)みなさんはどっち派でしょう?実は私の地元の北海道では圧倒的に繊維系(充填主体)を使ったほうが一般的でリーズナブルなケースが多いんです。外貼派はちょっぴり高級なイメージでしょうか?しかし両者を比較するととっても面白いんです。写真は13.5cmのフェノールフォームを用いてグラ...スウール換算で30cmの外貼りと同じ性能にした外壁の計算書です。平均熱貫流率(U)は0.135W/㎡Kで前回の30cmグラスウールバージョンのU:0.127W/㎡Kとそれほど大差はありません。しかし繊維系と比べて壁を構成する積層数は2層も少ない7層とぐっとシンプルになります。理由は形状安定性に乏しい繊維系は充填するための「あて」(下地)が欠かせないのに対して硬いボード状の断熱材はそうした下地を大胆に減らせるからです。当然ながら熱橋は減少しコンター(等値)線も繊維系に比べて穏やかになります。なによりいいのは、性能追求型の人は柱間にグラスウールを充填すれば簡単に40cm断熱が出来ますし、このままでよいという人は本格的な真壁に挑戦するのもいいですし、大胆に骨組みを顕わしながら地元特産の○○材をアピールしたい!なんていうニーズもOK。性能もよくて、構造はシンプル!いろいろとアレンジの自由度も高いなんてことを考えると外貼りってとても魅力的です。まあ数少ない難点は材料が高価なことですけど...ぜひ全国の意匠屋さんに取り組んでほしい素材だと思います。

*注:実際の断熱受下地は柱と直行方向に入るが平面では表し難いので計算書のようにアレンジし断面形が見えるようにモデル化している。実際は450mm間隔の間柱は無く、90cmごとに柱のみが立つ構造となる。(室内写真参照)
*:解析:(有)タギ建築環境コンサルタンツ

今日はやっぱROCKですわ~アブリル!なんていかが?(笑)
むっちゃ!縦のりでっ!
 

意匠屋目線の温熱環境学


 


 写真は繊維系断熱材を用いて壁を30cm断熱したときの温度分布の様子をシュミレーションしたものです。コンター(等値)線図と呼ばれ、線が水平に近づくほど温度分布が穏やかであることを示しています。在来軸組み工法は1間(1.8m)間隔に柱が立つ構造なので作り手は壁の断熱構造をよく工夫しておかないと同じ30cm断熱の壁でも部分的に極端な温度むらのある構造になりやすいものです。

自分が普段何気なく書いている平面詳細図が実際にはどんな温度性状を示すものであるの...か知っておくことは、意匠ととても深い関係があります。意匠設計者の多くは壁や天井の仕上げに水性ペイントや珪藻土なんかを好みますが壁の断熱性が低く温度むらの多い構造だとこうした繊細な仕上げの多くは暖房シーズンの後にクレームを起こしやすいのです。けして職人さんが下手なわけでもなくまして、手抜きなわけでもなく温度むらの激しい同一面で同じように乾燥し収縮させようと考える方に無理があることも少なくありません。要は何センチ断熱すれば内装が痛みにくい均一な温度分布になるのか?普段から意匠設計者は自らの壁や屋根や床の「断熱仕様:温度分布」を感覚的に身体化しておくことが結果的に仕上げ選択の自由度を広げます。

それに~...精神的な安心感を得ることが制作意欲の維持にどれほど必要か?意匠設計者なら知らない人なんていませんよね。(笑)

写真は外気温-10℃、室温+22℃の条件で壁内部の温度分布をシュミレーションしています。室内側の石膏ボードの表面温度が21.3℃でほぼ水平に安定していることから柱の室内側に入れた5cmの断熱材が意外に機能しているのが分ります。また間柱や断熱の下地をジグザグに雁行させ熱橋がストレートに通らないように工夫した点も1~6の部位別のU値から効果が認められます。しかし柱という大きな断面はやはりU値がかなり下がることも事実。たとえば建物の隅角部は構造材が集中しやすいところなので事前にディティールをよく検討しておく必要があると思います。

*注:写真中の温度条件、室内:20℃、室外:0℃は誤り。室内:22℃、室外:-10℃が正解。
*:解析:(有)タギ建築環境コンサルタンツ

今日は実施設計中なので気分はあげあげ!グリンデイなんていかが!
最高だぜ!ビリージェイ~!

http://www.youtube.com/watch?v=cDBlqu6KF4k