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札幌市, 北海道, Japan
はじめまして。 北海道、札幌市で設計事務所をしています。 暮らしに最も近いものづくり「建築設計」 地域色豊かで環境的、使いやすくて長持。 そんな暮らしのデザインが大好きです。 社会の悩みを建築デザインのテーマにすると面白い! そんなことを考えながら今日もスケッチしています。建築(暮らし)のお話しあれやこれ... どうぞお楽しみ下さい。

2015年5月11日月曜日

山の手の家 壁構造 Before-After

昨日は床のお話しをしましたから、今日は壁のお話しにお付き合い下さい。築13年ながら大規模な性能向上リフォームに踏み切った理由が室内の寒さと暖房費だったことは既にお話ししました。床を解体したことでその一端も明らかになりましたからその対策を練りながら、今度は壁をどうやって再利用して300mm断熱化するのか考えたいと思います。そもそもリフォームですから全てを一から作るものじゃありません。使えるものは使いながら必用な性能を追加し、望ましくない部分は修正し、それが完全には難しい場合はどこまでなら可能なのかを現場と相談しながら進めます。上の図は向かって左側が現況の壁構造、右側が今回の工事で完成する壁構造です。壁の厚さは現状の16cmから約40cmになります。既存の壁の構造(柱、間柱)+気密+断熱材+内装の石膏(PB)ボードの状態をまず健康診断し、問題が無ければそれを中心に外側と内側に断熱と仕上げを追加する作戦を立てました。

外壁のガルバリュウム鋼板を剥ぎ取ったところです。文字通り「防水、防風、透湿シート」が見えています。前にもお話ししたとおりこのシートがダウンジャケットの外布に当たります。風や水を通さず万が一内部の断熱材が湿った場合は水蒸気のみ外部に排出できる機能をもったシートです。もちろん丈夫なものですが紫外線には弱いのでガルバリュウム鋼板の外装で紫外線に当たらないようにして使います。横方向に見える木材は通気層用のもので、鋼板が直接シートに密着してしまわないようにします。

こちらは室内の石膏ボードを剥がしたところ。黄色いグラスウールの前に半透明のポリフィルムが見えます。横胴縁(下地)のあるところで10cm以上重ね合わせるというお約束通りの施工で問題はありません。次はグラスウールの状態を見てみましょう。

ポリフィルムを開口し内部のグラスウールを露出させました。まず状態はきれいで昨日工事したようです。とても13年経っているなんて思えません。しかし見ての通り入れ方はかなり荒っぽく、無理に詰め込んだ感じ。これはあまり良くありません。

表面ばかりではなく今度は内部も確認します。図面にも描きましたが、現状の壁構造は柱の内外に石膏ボード(PB12.5mm)を両面貼りし、屋外側には「防水、防風、透湿シート」+「通気層」+「外装」、室内側は内装仕上げに「ビニルクロス」を貼っています。要はグラスウールは長年石膏ボードに挟まれていたのでその内部に湿気が入っていないか、なにか痛みがないかを事前に確認しておきます。

約10cm厚のグラスウールをめくったところ。屋外側に貼った石膏ボードの裏が見えている状態。とてもきれいで全く痛んではいません。こちらも昨日工事したように見えます。余談ですがグラスウールはすぐに湿気るからよくない。とか壁を気密すると内部に湿気がこもって柱を傷めるからよくない。なんて言う人がいまだに専門家の中にもいます。正しく施工すれば断熱材も構造も全く傷まないことを見てほしいと思いますし、40年以上を掛けて北海道の作り手が習得した技術をもっと信用してほしいと思います。

石膏ボードの表面にも濡れやカビの痕跡はありません。室内の湿気が壁に入ることなく理想的な状態が保たれていたようです。

再利用するのできれいに元に戻します。

さて今度は室内の湿気がグラスウールに入ってしまった部分を見たいと思います。場所は浴室の天井。「山の手の家」では最上階に浴室があり、ユニットバスの天井の裏に断熱材を載せて天井断熱としていました。みなさんの家にもユニットバスはありますよね?中に入って天井を見上げて下さい。換気扇と天井点検口が見えるはずです。その点検口の向こうにグラスウールがあります。さてその状態は・・・なにやら黒ずんで見えます。

こちらがそのアップ。日常的に浴室内の湿気が天井のグラスウールに吸収、小屋裏には外気が入りますからそれで蒸発。といったサイクルを繰り返したために壁とは比べものにならないくらい断熱材のダメージが大きいことが分ります。湿った綿状のグラスウールの中を小屋裏の空気が通り抜けることで空気に混じっている埃(ホコリ)を吸着しグラスウールが真っ黒になります。換気扇が故障し入浴中に十分な換気が取れていなかったことも症状を悪化させた一因でしょう。さらにユニットバスの壁と間仕切壁の間には空洞がありますから小屋裏の冷たい空気がそこを通って浴室の下の部屋を冷やしたでしょうし、室内の湿気がここを煙突代わりにして小屋裏に逃げていたことでしょう。このつくりは今でもありますよね。こうしたことを防ぐにはユニットバスの天井の向こうにもう一層ボードを貼って天井をつくり二重天井として完全に湿気と断熱材を分ける工夫が有効です。今回もそうします。(笑)
 
さていかがだったでしょう。比較的新しい建物でも改良すべき点があることがお分かりいただけたと思います。リフォーム社会とはこうしたさまざまなケースに対する処方箋をたくさん用意する(せねばならない)社会ですよね。そのためには私たちの更なるスキルUPと同時にこうして現場公開を許してくれる、理解あるクライアントさんの存在が欠かせません。この場を借りて御礼申し上げます。 素敵な家に生まれ変わらせましょう!(笑)
 
今日はトミーフラナガンの素敵なピアノなんていかが?(笑)