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札幌市, 北海道, Japan
はじめまして。 北海道、札幌市で設計事務所をしています。 暮らしに最も近いものづくり「建築設計」 地域色豊かで環境的、使いやすくて長持。 そんな暮らしのデザインが大好きです。 社会の悩みを建築デザインのテーマにすると面白い! そんなことを考えながら今日もスケッチしています。建築(暮らし)のお話しあれやこれ... どうぞお楽しみ下さい。

2017年5月9日火曜日

YKKap北海道工場見学

今日は地域の建築家と工務店さんでYKKap北海道工場を見学することができた。石狩湾新港に近い北海道工場といえば近年、道内のみならず全国で急速にシエアを伸ばしつつある断熱樹脂製サッシYKK430の生産拠点である。
 
実は以前から、地元での使用に対して不安が拭えないプラマードや330シリーズはあまり好きな窓ではなかった。正直に言えば国産樹脂製サッシを選ぶ理由の大半が、残念ながらその性能や中味に対してではなく安価な価格であったことも事実である・・・・・枠が無理ならせめて三層ガラスを入れたくても障子の設計思想が古くペアまでしか入らない。それではガス層をせめて16mm以上にしたいと言ってもスペーサーの標準は12mmです。と素っ気無い・・ 北海道で長らく国内の主要メーカーと共に北欧の木製窓が売れ続けた理由はこんなところにもあったのだと思う。要はほんとうに性能が必要な地域であるにも係らず、温暖地用の華奢な枠にガラスだけ複層LOW-Eを組んだ窓に地域の作り手は随分前から飽き飽きしていたのだ。
 
そうした間にも2012年からは札幌市独自の住宅省エネ施策として「札幌版次世代住宅基準」が始まり、それまで北海道が推進してきた北方型住宅を大きく凌駕する性能基準に驚いたものだった。
 
YKK430はその2年後2014年の4月に販売が開始されたが、その第一印象は今までとは違う不思議な違和感。ずばり言えば「やれば出きるじゃなーい/笑」だった。例えばトリプルガラスの入る障子は16mm×2層のガス層を前提としたトリプルガラスの総厚41mm以上に対応できる余力ある設計になっていた。従来の国産メーカーでは障子の設計の古さからガス層は11mm×2層が精一杯。意外にも外国製の高性能サッシだってガス層14mm×2だってあるんだから立派なもんだ。枠を含めた性能も中々で良いものになるとU:1W/㎡Kを切るのだそうだ。当時のトリプルガラスのサッシで代表的な北欧製のものでもU:1.3W/㎡Kくらいだったから・・・これなら札幌版次世代住宅基準に使えるかも?と思った。
 
こんな感じで視察がスタート。YKKapグループの中では小規模の北海道工場らしくみなさんのお話はどれも面白かったのだが・・・特に6.樹脂窓 商品説明に関しては、長らく感じていた430に対する違和感の謎が解けてたいへんスッキリしたのだった。本当はみなさんに生で聞いてほしいのだが・・そもそも北海道支社から430の開発を起案した倉島氏のお話しはとても明解で的を得たものだった。(*:氏は社内でYKK430の開発に対する成功が評価され、2014年YKKap社長特別賞を授与されている。本人は定年を迎えた上司の功績も大と謙遜するが/笑)

 
倉島氏曰く:「当時初めて知った、札幌版次世代住宅基準の水準が従来の国の基準を下地にした北方型住宅やその高性能版である北方型住宅ECO+基準よりも大幅に高いことが430の開発を起案する上で大きな動機となりました。」とのこと、下はその資料。
 
倉島氏:2012年当時は北海道の約7割のビルダーが既に壁150mm相当の付加断熱を行っていて、国のI地域の推奨基準であるQ値1.6W/㎡Kは特に珍しくありませんでした。これに対してその国の基準を最低のミニマムレベルと位置づけたのが札幌市です。もちろん建設に対して補助金が付くのはさらにその上のベーシックレベルから。要はベーシックなものでもQ値1.3以下(北方型住宅ECO+)にしなさい。スタンダードがいわゆるQ1住宅で西欧基準のパッシブハウスがハイレベル、トップランナーになると北欧基準のパッシブハウスレベルでQ値は0.5以下、壁はGWの500mm断熱相当ということでした。
 
この基準が出たときにある人が「壁ばっかり厚くなっちゃう。窓はどんどんなくなるね」と言っているのを聞いて・・・壁を厚くしないで済む窓を作ろうと思ったのが開発案を練る大きな動機になりました。
 
うーん・・今回始めて聞きました。大幅に高められた札幌市基準への回答が開発の大きな要因だったんですね~。
 

上の資料にもあるように、スタンダードレベル以上に対応可能な窓の市場投入を目指した結果、複層ガラスを前提とした従来型のラインナップでは対応が難しくなり、金型も含めて全く新しい高断熱サッシのフレームと障子のニーズが必用となった。札幌市が舵を切った今、一気にレベルは上がる。地場の厳しい基準でも充分通用するサッシを目指したい。

上の資料は直近、H29年度の札幌版次世代住宅基準の申請状況だが、倉島氏の読み通りスタンダードが全体の約7割にまで増えてきている。厳しい基準が民間の努力や知恵を引き出し、切磋琢磨を促すことで開始から5年で約7割が実態的にはQ1もしくはニアリーQ1住宅。施策ってほんとうに大切だと思います。

この他にも興味深い話はたくさんあったのですが、こちらは300mm断熱を前提としたサッシ位置検討の図。壁の構造は当社で提供いたしました。シュミレーション上は右のように壁厚の中央がサッシ位置としてはよさげなのだそうですが・・・これに関しても実際に観察を続けて行きたい。とのことでした。
 
こちらはよく見る430が省エネ大賞を受賞しましたというスライド。実は翌年、地元の賞も受賞していて、その際に担当者からちょっと苦笑まじりに・・「立派な国の賞の後に地元の賞っていります?/笑」と聞かれたのだそう。 まーそりゃそーだ(笑)
 
倉島氏曰く:「もともと地元用として考えたものなんである意味それ以上に嬉しいです!」と答えたのだとか・・・まあ~大企業の人独特のぎらぎら感とは縁遠い倉島さんらしさが微笑ましかったです。(笑)

 
帰りは支社長から工場長まで全員でお見送りまでいただきました。最後に聞いたんですけど北海道の特徴として商品開発+営業+工場(生産)が三位一体で近く、課題を共有しやすい環境にあるのだそうです。今まで巨大企業というイメージが強かったのですが意外や親近感を覚えた視察になりました。この場をお借りして、視察を企画いただいた営業の高橋さん、貴重な開発秘話をお話しいただいた倉島さん、そして繁忙期にもかかわらず視察をお許しいただいた宮原支社長さま、田中工場長さま、佐藤支店長さま、当日お名刺をいただいた方々、ご案内をいただいたみなさまに心より御礼申し上げます。本日はありがとうございます。とても勉強になりました。
 
今日はJazztronik なんていかが https://www.youtube.com/watch?v=tTXhJ4-gsmI