2020年8月4日火曜日

常盤の家 竣工お引渡し


8/1(土)は「常盤の家」のお引渡しと取説でした。

想えば・・「南幌まちなかの家」を気に入っていただいてご契約いただいた若き住まい手さん。必ず小さな息子さんと3人でお打ち合わせにお越しになって、たくさんお話しをしました。

最近は若い建て主さんの住宅を任せていただくことが増えました。みなさんある意味凄く建築のことを理解していてセンスの良い人が増えたなあと感じます。

外壁の板張りも圧倒的に30代~40代の建て主さんに人気。意外にも違いの判るはずの50代以上がサイディングだったりいわゆるツルツルピカピカのきれいな仕上げを好む傾向があります。経年でシルバーグレーに変化する木の外壁をカッコイイ、美しいと言う感性の豊かさは、、地域に生きる建築家としてとても嬉しく感じています。

「常盤の家」の外壁もどんな色合いを見せてくれるのかとても楽しみです。

簡素である意味そっけなくさえ感じる外観に対して、室内は北海道の美しい建材をたくさん使いました。

顕わしの柱や梁、垂木や合板は道産のカラマツ材を 使ったもの。赤味の強い暖かな木肌が柔らかな電球色の照明に映えるように考えました。

写真は階段の折り返し地点に当たる踊り場を跳ね出して親子の読書コーナーを作ったところ。ちょっぴり床の高さを変えることで、小さな家の中に面白い居場所を作ろうと思いました。 
室内から見ると外は丸見えなのに、外から見ると家の中が見え難い縦格子も今回は少し広めの間隔で使いました。

大きな窓は見学会の時こそ大好評ですが、引っ越しが終わり生活が始まると十中八九はレースのカーテンで閉ざされて外の景色も光も楽しめない、内向的で詰まらないものに堕ちてしまいます。

理由をよくよく聞けば・・通りを歩く人と目線が合うのが気になる、室内を覗かれる気がして落ち着かない等々・・がほとんど、そんな理由で街中や建て込んだ市街地では縦格子を使うことが増えました。

窓辺の薪ストーブ、ソファとダイニングセットの入ったLDKです。壁の羽目板は美しい正目のモミの木、床は新築臭の苦手な建て主のために工場塗装の白樺材フロアとしました。

ソファはもう10年来のお付き合いのbloccoさん(旧:沼田椅子製作所)、ダイニングテーブルと椅子は旭川家具の老舗、匠工芸さんです。

日本を代表する木といえば何と言っても杉ですが、杉のほとんど生えない北海道ならではの、松材と広葉樹のインテリアをいつも意識しています。

カラマツの尺梁(梁の高さが1尺:30cm以上あるもの)を半間(約90cm)ごとに登り梁として掛け、ハシゴ状に根太を落とし込んで合板を貼りその外側にグラスウール(以降:GW)で35cm断熱をしました。

居間は二階ですが屋根に太陽が当たっても中々暑くなり難く、南北に通風用の窓があるので夏でも風を通したり、夜間はナイトパージ(夜間外気冷房)も使えます。

こちらは、最近話題のテレワークスペースにも使える家庭事務コーナー。🍙型のユニークな椅子はウッドペッカー/匠工芸。椅子の前半に座ると仕事用として、疲れて背にもたれると安楽椅子になる優れもの。座面と背は茶のレザー、耐久性が高くて一台あると本当にテレワークが楽しくなります。

窓はドレーキップ(内開き内倒し窓)高い防犯性をキープしながら写真のように窓開けしたまま外出できます。 
こちらはお母さんの動線に絡めた電子レンジ置き場と食品庫。足元にルンバも入ります。(笑)、大らかな一室空間のLDKはお馴染みの北海道スタイルですが、冷蔵庫や食品庫、電子レンジ等々・・・のようなちょっと隠したいところを上手に作ることがコツです。

一室空間だからってなんでも見えていいっていう訳じゃあありません。

上の写真から電子レンジと食品庫がどこにあるのかお判りでしょうか?ちなみに対面型キッチンのタイル壁(黒のスポットが二つついた壁)の裏には調理前に手の洗える多目的シンクがあります。 
こんな風に、LDK全体は大らかな一室空間であっても、隠すべきところはしっかり隠すことがすごく大切です。

ちなみにインターホンやボイラーのリモコン、24h換気のスイッチ、照明のスイッチ等もこんな風に見え難い、お母さん専用の動線に隠れるように配置しておきます。

こちらは玄関ドアを入ってすぐの土間玄関の様子。冬が長く靴もコート類も、雪の少ない地域に比べて軽く倍はある北海道。

毎日の出入りやお客さんを迎える玄関はスッキリ感と大容量の玄関収納を両立させねばなりません。ちなみに左に黒っぽく見える壁の裏側が天井までの大きな靴箱、正面奥の窓の前に掛けられたコート類がちらりと見える間取りとしました。

写真の右奥に見える入り口は冷温庫(物置)に続くもの。他の部屋へ続く動線を予感させることで狭く見える感じを除いています。 
こちらが振り返った玄関側の土間。左奥の背の高い扉が玄関ドア。白く塗った構造用合板が汚れを気にせず大らかな内装になるように考えました。子供の三輪車やお母さんの自転車も多少ハンドルが壁に当たってもぜんぜん気になりません。 
こちらはプライベートゾーンである脱衣所と絡めたオープンなトイレ。

すぐ隣が主寝室なので一人でおトイレを覚え始めた小さなお子さんがいてもお母さんは安心。もう寝室から離れた、おトイレまでお子さんに付き合わなくて済みます。(笑)個室ではないので、イタズラ盛りのインロック(ママ出られなーい/泣・・)も安心。

もう一つは高齢化対応、住まいは長く住むもの、40で建ててもローンが終わるころは75才・・・高齢化リフォームで必ず聞く高いニーズがトイレと寝室の近接化とバリアフリー(無段差)化・・・でも考えてみて下さい。

誰だって35年後どーなるかなんて分かりません。確かなのは歳は絶対に取るという事。じゃあ~トイレの一つを子育ての時も歳を取ってからも使い易いものにしておくことは大切だと思います。

ここまで読んで・・「ええ~っ山本さんに家を頼むとおトイレにドア付けてくれないの~??」と心配することなかれ・・ちゃんと従来型のこもれる一人になれるトイレも他の階にご用意しています。(笑)安心して下さい。

要はたかがトイレ・・されどトイレ・・意外にも個室型を使える時期はそんなに長くはないんだよね~という事を言いたかったのです。(笑) 
こちらは1階からの階段。パッシブ換気のためのスリットが見えます。半階上がって最初の読書コーナーにつながる感じです。

「常盤の家」の工事に携わったすべてのみなさんに心よりお礼を申し上げます。四カ月半、本当に献身的に素晴らしい仕事を納めてくれて感謝しています。

おかげさまで小さいながらも機能性に溢れた愛すべき住まいができました。みなさんの鍛えぬいた技と繊細な心配りのおかげで私たちは毎回仕事ができます。地域の素晴らしい素材や技をもっともっと地元の人に知ってもらえるように私もさらに精進したいと思います。

最後になりますが、私をはじめ多くの地域の作り手や生産者のために貴重な挑戦の機会をお与え頂いた建て主さまに心より感謝申し上げます。

大切なご自宅を誰に頼むかはまったくもって住まい手さんの自由です。多くの人がより資本の大きな有名メーカーに頼みたい気持ちも悔しいながらよく分かります。

その一方でチャンスを頂けなければ今までブログでご紹介してきたような物語は到底生まれることなどありませんでした。そんな大切な想い出の一つ一つを大切にして精進してまいります。素敵な時間をありがとうございます。  2020.08.04 山本亜耕

工 務 店:飛栄建設HP http://www.hiei.co.jp/
担当:松田卓也 棟梁:宇野伸二

オーダーキッチン:クリナップ直需事業部HP
担当:石川一人

製作家具:匠工芸HP https://takumikohgei.com/
担当:桑原 強


今日は素敵な建て主さまと現場のみんなのために一曲贈ります。