2018年7月29日日曜日

新琴似の家 付加断熱工事

「新琴似の家」では付加断熱工事が始まりました。厚み14cmのグラスウール(以降GW)を、丁寧に手で充填して行きます。GWの性能を充分に引き出すためにはその角を潰さず丁寧に丁寧に入れること。もうこれしかありません。この充填工程が上手に出来ないと性能が充分に発揮できません。通常の家の約3倍のGWを使う300mm断熱の家の設計を始めて今年で10年目になりますが、まさにその価値を支えているのが丁寧なGWの施工なのです。

GWは北海道において最もポピュラーで安価な断熱材と言えますが、その半面、扱いが最も難しい材料でもあります。例えばGW以外の断熱材を用いた300mm断熱も多数設計してきましたが、その多くがGW特有の手間の大変さを何とか合理化したい。という意識がその背景にあります。もちろんそれぞれの工法とも特徴があってとても興味深いのですが、写真のピンク色のGWは、北海道の施工者の意見を取り入れて長年、改良を重ねてきたものです。地域によってGWのメーカーのシェアは異なりますが石狩管内だと、このパラマウント硝子工業さんのSUNシリーズが多いです。特徴としては、不安なく素手で触れること、形状安定性が良くて型崩れしにくいことでしょうか。

「新琴似の家」ではロシア製のKARVI社のサッシを使います。枠と金物はドイツの物を用い、ガラスはサハリンにある旭硝子で製作し輸入されます。国産の標準であるツバ付けではなく枠の内側からビスで固定する方式のためサッシの周囲に気密用のパッキンを先張りし窓を取り付けて行きます。 
全体から見るとこんな感じです。 窓下地の周りにぐるりと黒く見えるのが気密用のパッキンです。

こちらは付加断熱の足元。基礎との間にウレタンを充填して熱橋(熱の通り道)をしっかり塞ぎます。

こんな風に外側からGWを入れて行きます。
 
今日はCHICなnんていかが 

2018年7月27日金曜日

釧路の家 内外装工事

7/24(火)には「釧路の家」に行ってきました。内装のボードが貼られていて、外装の板貼りも進んでいます。室内では電気の配線がほぼ終った状態。

玄関先の独立柱は丁寧に養生されています。

居間の明るさを階段に落とすために取り付けられた縦格子。材料は唐松。

大きな屋根の下で空間がつながる「釧路の家」
 

タイベックに外装のための横下地(通気胴縁)を取り付けた北側の壁面です。

こちらが外装の貫板を貼り始めたところ。板と板の隙間は押し縁と呼ばれる捧をその上から打ち付けます。

こちらは窓上の通気層。黒い線が通気します。万が一壁に水が入ってもここから排水します。

敷地からは周囲の住宅街の様々な屋根が見えます。左側の黒い家が「フラットルーフ」と呼ばれるもの。2/100~5/100程度の緩勾配で雪だけを屋根上に留め融雪水のみを軒から地面に落とすことを意図したものです。しかし実際には雪もゆっくり動いてしまうので結局軒先に大きな雪庇が迫り出して軒が折れたり、落雪した大きな雪庇が窓を割ったりして、無落雪を目指した北海道の屋根としてはスッキリと問題解決とは行きませんでした。
 
次に右側の家の「スノーレーン」。従来の屋根とは反対に建物の中央に雪を集める方向の勾配が付いた屋根です。逆勾配ですからもう雪は軒先から外に落ちません。融雪水は屋根中央の水路に集められ、排水口から室内を経由して下水溝へ流されます。雪が落ちないためにこの形式の屋根は広く北海道で作られましたが、難点は排水口の詰まり。秋口や春先に枯葉やみぞれ雪で排水口が詰まると水は屋根をプールのようにしてしまい、2階の天井を浸水させてしまいます。そのために点検のための梯子が取り付けられましたが、1年に2回、住人自ら、屋根に登って点検をしてくれるのか?といえばそれも叶わず、無落雪ではあっても点検の欠かせない屋根というところがモヤモヤ・・・と言ったところでしょうか。

「釧路の家は」緩勾配ながら雪止めを付けたシート防水の無落雪屋根としました。まず従来の板金屋根の泣き所だった緩勾配での防水性は溶接されたシートが確保します。たとえ破れたとしても同じ材料を上から接着して簡単にふさぐ事ができます。元々水槽やプールのための材料なので板金に比べて非常に防水性が高いものです。自由に溶接できるということは、写真のように雪止めも簡単に一体化できるので、今までのように錆びたり腐ったりすることもありません。沿岸部である釧路は屋根の塩害対策が欠かせませんが塩ビ系のシートなら錆を気にする必要もないのです。こうして雪のみを屋根上に留め、融雪水を軒先の樋で受けて地面に落とすことで見た目は勾配屋根でも無落雪、雨だれ(冬は氷柱)ナシの屋根を作りました。
 
今日はモーツアルトなんていかが、大好きなクラリネット協奏曲・・最高だ!

2018年7月23日月曜日

新琴似の家 屋根断熱工事

屋根の断熱工程を完了した「新琴似の家」。雨に備えて大判のブルーシートでしっかり養生します。

屋根の下ではホールダウンボルトの確認。長期優良住宅なので構造は普段にも増してしっかり確認して行きます。

土台廻りには気密シートレールや金物等が絡みます。どんな風に解決して行くのが一番合理的なのか、しっかり打ち合わせが必要になります。

「新琴似の家」の屋根はツーバイ材の大垂木工法。垂木表面の印刷は削り落とし、35mmに厚みを揃えておきます。

こちらも金物。柱が桁から抜けぬように打ち付けておきます。

万が一の雨に備えて大判のブルーシートで覆い、しっかり養生しておきます。

「新琴似の家」は切妻(三角)屋根なので仮に雨が降っても勾配のおかげで雨水はシートの表面を流れ浸水しにくくなります。この状態で天候を睨みながら板金屋さんを待ちます。
 
最近の北海道の屋根らしく、形は切妻でも屋根素材は無落雪のものをチョイス。見た目は雪が落ちそうな形ながら実は無落雪な屋根を作ります。
 

2018年7月18日水曜日

新琴似の家 建て方完了!

無事に小屋組みまで組み上がった「新琴似の家」。重たいトリプルガラスのサッシを上げるために今回はウインチを装備。

まずは稲妻の速度で屋根を終らせるべくGWを搬入。屋根はトータルで厚み34cmのGWを三回に分けて充填します。

「新琴似の家」は大垂木を30cm間隔で渡した屋根。垂木の印刷をしっかり消す事、この常態で仕上げとなるので、釘やビスを打ち抜かないように充分気を付けること等々・・・
今ではすっかり人気の屋根になりました。

屋根にまず240cm(14cm+10cm)この上に更に10cmで合計34cm。

曇り空の下、ブルーシートを脇に置きながら断熱工事を慎重に進めて行きます。
 
今日はBucketheadなんていかが
 

2018年7月10日火曜日

新琴似の家土台敷き

昨日から始まった「新琴似の家」の土台敷き。
 
引き続き担当していただくのはアシスト企画さんのS棟梁。息子さんと二人して「南幌まちなかの家」でも腕を振るっていただいたので逆指名させていただきました。(笑)引き続きよろしくお願いいたします。

さて、建て方前の大切な工程である土台敷き・・・クレーンが入り大勢の大工さんで大きな梁を掛ける建て方は見ごたえがありますが、実はその前の土台敷きが私は好きです。
 
上の写真のように建物の中央に基準となるレーザーを設置し水平方向に照射して仮組みした土台の天端(上端)の高さを慎重に測って行きます。土台の木材自体の寸法は非常に精度が高くほとんど狂いはありませんが、それをコンクリート基礎の上に置いてボルトで締め上げると、コンクリートの形状に沿って土台が変形します。要は基礎の精度が≒土台の水平性や高さの均一性と言う訳です。
 
もちろん前回ご紹介したように基礎の天端は既にセルフレベルモルタル&水平に研磨済みですが、よーく見ると僅かな削り残しや凹凸で土台はmm単位の高さの差を生じます。そこを限りなく、S棟梁の基準では1mm以内に土台の高さを揃えるのが今日の仕事。

足場を掛ける前に地盤の汚れを建物内に持ち込まぬように地面の上にシートで養生をしていただきました。ほんの少しの配慮ですが、これだけで現場の中の汚れ方が全く違います。現場所長のS部長の粋なはからい・・・ありがとうございます。(笑)

さて、概ね揃ったかな?と思ったところで、問題発見・・3mm高いところを発見しました。
 
概ね組みあがった土台をもう一度剥がし、土台の裏を3mmノコで引き割って土台を105mmから102mmに薄くしました。もう一度組み上げて、水平器で高さを測って建て方に備えます。
 
今日はBAND-MAID /でstart over・・・相変わらずカッコいい!(笑)

2018年7月1日日曜日

新琴似の家 基礎工事完了

「新琴似の家」の基礎工事が完成しました。既に埋め戻しが終り基礎の周りに寄り付くことが出来ます。前回でホールダウン金物等は既に確認済みなので今日は埋め戻し後のチェックを行います。

敷地内の排水管の点検口は仕上げの化粧砂利埋め戻し分の余裕を見て切断されているか?OKです。

土台下の気密レールの効果がばっちり出るように基礎の天端は水平にピカピカに磨かれているか?OK!指で触るとつるつるです。
 
現場を担当していただいているアシスト企画のS部長はセルフレベラーモルタルの上から更に水平にレベルを出して正確に研磨調整してくれました。

配水管は防水モルタルでしっかり止水されているか?OK。

プロパンガス配管の位置、及び通信線の準備は?OK。

当事務所では大切な付加断熱を痛めるので、建物の外壁で受電する方法を原則取りません。ですので受電用幹線及び通信線等を地中埋設します。そのための埋設管が受電ポール近傍に出されているか?OK
 
今日は久々にバンアパなんていかがでしょう?

高湿度環境な今日この頃 南幌

最近、北海道はずっとぐずついた天気・・・雨が多いですね~。冬の間に工事を行い、6月の頭に次々にオープンしたみどり野きた住いるビレッジ。現在では北大のK研究室の測定器が全棟に取り付けられ既に計測が開始されています。
 
私とアシスト企画さんで担当した「南幌まちなかの家」もそろそろ床下には注意が必要とのことで約2週間に渡り床下を予熱しながら基礎コンクリートの乾燥を進めてきました。本日はその裏を採りに来たというわけです。床下の温度:24.6℃、相対湿度:76.5%、天気:雨、絶対湿度は14.79g/Kgです。

それに対して床下が結露する温度(露点温度)が20.2℃。ひとまずは安心でした。
 
要は初夏に完成し、床下の暖房が使われるのはまだ約半年も先。といった今回のような現場は気を許すとダンプネス(高湿度環境)が深刻な被害をもたらす場合があります。一番分りやすいのが床下の結露を見逃した(放置)したことによるカビの発生。大概は暖房の入る冬が近付くと匂いで気付く場合が多く、不審に思った住い手が懐中電灯片手に床下にもぐって発覚する場合が多いです。最近はすっかり梅雨の季節のある北海道・・・夏場も適宜床下を余熱して安心にお過ごし下さい。 
床下には照明が設置されいつでも住い手さんが点検出来るように考えてあります。

冬が近付くと基礎の隅角部から露点になり易くなりますから温水配管はそうした弱点をカバーできる位置に設置しています。
 
 

釧路の家 気密測定1回目

「釧路の家」を担当する八百坂建設のK部長から、気密測定の結果が届きました。結果はC値が0.2cm3/㎡(1回目)となっています。今までの300mm断熱の現場とほぼ同じ数値が出てホッとする反面。最初の挑戦ながら懇切丁寧に取り組む作り手のみなさまに心より感謝したいと思いました。
 
実はこの気密性能をいかに出すかが後の断熱性能を決めるといっても過言ではありません。極端な話し、20年以上前に現在の断熱水準と全く変わらない断熱設計がされているにもかかわらず、寒くて仕方がない。(断熱の量だけ見れば今と同じだが質がほぼ伴っていない)という家も残念ながら多数存在します。従来は気密測定と断熱の品質を結び付けて考える知見に乏しかったのが原因ですが、今では身近に断熱性能の良し悪しを事前に判定できる「気密測定」という方法が認知されているのですから、作り手なら積極的に取り入れて工事中から完成後の不安を取り除くべきだと思います。私の事務所が各案件ごとに必ず気密測定を行うのはそうしたことが主な理由です。
 
今日はこれから「南幌のバスツアー」なのでB.ホーンズビーでも一緒に聞きませんか(笑)