2014年3月3日月曜日

恵庭の家 内装工事+外装工事

美しい外部の木貼りがもう少しで完成間近の「恵庭の家」。お客さんと現場監督さん、職人さんの人徳で毎度ながら快晴の現場です。しかし...人がいない納期が間に合わない等々...工期の維持に誠に苦戦!もう少しあと少し頑張れ~っ!(笑)今日は部分的に出来上がりつつある内装のあちこちを確認に来ています。毎度ながら細かくてスイマセン。

家族間のコミュニケーションや子供のお絵かきのためにホワイトボードを壁に埋め込みました。でも壁には書くんじゃないぞ~(笑)。ちなみにホワイトボードのペンは油性なんですって。

リビング側から冷蔵庫を隠すことと、照明の光をきれいな影が伸びるように演出して階下に落とそうと考えました。加工はキクザワさんの自社加工。美しい組み上がりです。

こちらはものを壁から浮かして取り付ける際の仕掛け、その名も「いんろう」。外部と内部が出入りして水戸黄門さまの印籠のようでしょ?(笑)

美しく磨きこまれ太鼓状に加工されたエコシラ(白樺)合板の枠廻り。こちらもキクザワさんの自社加工。写真は植物性のオイルで一回拭き取っただけですがこの仕上がり。うーんキクザワさん、瀧澤ベニアさんありがとうございます。

私の事務所では壁の角を立てません。要は直角(ピン角)はご法度!なんです。理由は出来上がりはきれいでも必ずすぐ欠けるから。写真のように4mm~16mmの間でR面を取るために強化のプラスチックコーナーを入れます。元気な子供たちが多いこの家ではぶつけやすい角はエコシラ合板による縦枠。それ以外はコーナー部材による補強としています。

こちらは縦枠と巾木の取り合い。枠の見付け厚は18mm巾木は30mmで6mmの目透かしの加工をして床から少し浮かせたように見せます。掃除機やほうきを壁に打ちつけた時に壁と床の間にダメージが残らないように、しかし大きすぎるのはよくありません。役割を最低限の寸法で満たすこと!なかなか一般の方には分ってもらえませんが、こうしたところを小さく精巧に作るためにはそもそも柱と梁の組みつけの精度が高くないと出来ません。

右側が子供室、左側がキッチンです。

こちらはオーバーハングがついたボルダリング(岩登り)コーナー。ホールドを六角ナットで簡単に取り付けられるようにジベルがすでに仕込んであります。もちろんこれもキクザワさんのKJ棟梁作。美しい木目の唐松構造用合板に30cmピッチでホールドを固定できます。

こちらは100×200の白色タイルを縦方向にウマ貼りしたストーブのバックです。古レンガ風や耐火煉瓦などが多いのですが私の場合は最近はこうした白のタイルを使うことが増えました。もちろんネット貼り(複数枚を一度に貼れるために職人の技能をあまり要しない)なんかじゃありませんから、タイル割をしっかり現場で行って半端な余りが目立ちづらいように目地の巾も調整してあります。

こんな感じで張り上げると枠の太鼓面の内面にピタリと納まります。枠よりタイルの面が高いと美しくありません。

大きなパノラマウインドウが入ったリビング。一軒また一軒とお隣やお向かいの家が増えるのを眺めるのもこの窓です。まちの歴史を映しながら子供たちはあっという間に大きくなるんでしょうね~(笑)

南側に前傾したフォルムを持つ「恵庭の家」夏場の日射遮蔽のために大きく庇を張り出した外観です。
 
今日はバンアパ...雪にも似合いますよね~(笑)

IBEC 2014.3月号に掲載されました。

寄稿した文章が一財)建築環境省エネルギー機構の機関紙「IBEC3月号」NO.201に掲載されました。「住宅の省エネ化と断熱建材」の特集で今まで取り組んできた住宅のお話をさせていただいています。ぜひご一読いただければ幸いです。
従来は寒さに対する手立てとして語られることが多かった断熱。当初は寒くて困った地域の局地的な建築手法との認識が大勢でした。それが90年代(北海道では70年代)に入り省エネの観点で語られるようになり、最近ではヒートショックのような健康や医療費の視点、特に3.11以降は災害時の自宅避難や広域避難所の機能を見直す動きにもつながっています。長らく「燃えないこと」と「地震で壊れないこと」を建築の根幹としてきたわが国の価値観にようやく「断熱を主体とした機械設備とは別の熱環境」の視点が加わることは、長い時間を要したとはいえやはり画期的なことなのではないでしょうか。大学の研究室なんかも近年は環境系の先生方が忙しいとのこと。新たな時代を感じます。




若手のみなさんのオープンハウスを見て

3/1(土)は二人の若手建築家のオープンハウスを見に行きました。二人とも才能に恵まれた北海道のHOPE。これからも素晴らしいクライアントさんと共にたくさん良い建築を作ってくださいね~(笑)。

さて同世代のお二人ですが作り上げる空間の印象はかなり違っています。その一方で共通する北海道らしさもありますよね~、今日はちょっと(笑/かなり?)先輩、いえ年配の私が彼らの空間をご案内させていただきます。



設計者の富谷さん。札幌で有名な遠藤建築アトリエ出身の新進気鋭の建築家です。この建築のテーマはスッキップフロアだそうで、階段の踊り場に子供たちのワークスペースをデザインしていました。


正面のくぼみがTVのスペース。その上がワークスペースです。空間は白、グレー、濃茶といった色で明快に塗り分けられて果たすべき役割と色が連動している印象。たとえば床は濃茶ですが同じ機能の延長線上にある階段も同じ配色。同様に同じく木による造作である正面の本棚にも同じ色が現れるといったように機能や材種といった関連性を色使いの手がかりに使っています。もっとも作りたかった1階と2階の中間に位置するスキップフロア(中間階)は分かり易く画面の中央に置かれ、これまた最近では家族だんらんの中心となるTVスペースの上にきています。その結果、見せ場となるTV+階段+スキップフロアが一体となった面白さの詰まった空間が片側に集中し、吹き抜けからの光による陰影も手伝って、視線を引き付ける強い指向性を生み出しています。こうした空間はたとえばTVスペースの部分が暖炉であってもよいし、祭壇であっても悪くない?というようにさまざまに変形、応用されて私たちの暮らしの中で使われています。壁と天井は同じ白色ですが光の当たり方によって面ごとに異なるコントラストを見せています。この白という色は唯一、太陽光をもっともよく拡散させ、前述のようにたった一色で豊かな濃淡による空間の凹凸を表現してくれます。他の色がその色自体を目的とするのに対して、無色である白はそれゆえに建築空間を作る上で自身のみならず光までも自在に味方にできる特別な存在です。



吹き抜けを中心に各空間がぐるりと周りを取り囲む部屋構成。あっさりとした白であるからこそ日の光の動きを一層感じる空間になっています。


家じゅうに間仕切りが少なく、それぞれの用途空間を流れるようにつなげて全体の大きな空間にする手法は北海道らしさ満点ですよね~(笑)


右手のグレーの三角形がスキップフロア、左手のカウンターは吹き抜けの手すりを兼ねる。居間の奥に家庭事務のコーナーが見え、衝立でやんわりと居間の賑わいから隔てられている。


建て込んだ住宅街を敷地にするロケーションに配慮して注意深く位置や大きさを検討された開口部。柱や梁といった構造材が現れるシーンは極端に少なく、床、壁、天井の3種類で空間を構成してゆく手法が支配的。



さて今度は私の後輩でもある女性建築家の櫻井さん(向かって右)の倶知安の住宅。彼女は平尾建築事務所の出身。林業によるまちおこしで有名な下川町のエコハウスは彼女の設計。こちらも新進気鋭の女性建築家、これからの活躍が楽しみです。



一見して分かるように彼女の場合は色彩をあえて抑え木質の生成りの他には白のみで空間を作っている印象。手の込んだスタイルが好きな人から見れば工事中?とばかりに、あっけなく思うかもしれないけど、それほど慎重に主張を抑えた、自然な大らかさが倶知安という田舎にふさわしいリラックスした空気感を生み出しているように思います。家というよりは建築家の「作品」にありがちな、こう住め!、これを置け!といった押し付けがましさのない室内は建て主とその家族や友人たちにとって居心地の良いものでしょう。特に週末は楽しいものとなりそうですね~(笑)。生成りの木仕上げの室内は木材の反りや曲がり、日の光による色焼けまでを含めて家族の歴史を刻む豊かな表情を見せてくれそうです。色彩はシンプルな分、空間を特徴つける要素に床、壁、天井ばかりでなく構造が加わるところが彼女の大きな特徴。


頭上を縦横無尽に走る大梁が家の構造をシンプルに見せている。照明はほとんどが点光源によるスポット。



大空間の中央に置かれたアイランド型キッチンが北海道っぽい!


カラマツ積層合板を木目が透けるように白色で色付けしてあるキッチン。製作はもちろんクリナップ直需事業部。


階段とその横に吹き抜けの空間を配するのは作者の好みなのだろう。階段の左横に見えるのが玄関。


家全体の大きさからすると面積的にはかなりコンパクトながら大開口や視線の開放を上手に使い狭さを感じさせない土間玄関。

さてみなさんいかがだったでしょう?ぱっと見の印象は随分と違いますが、たとえば間仕切りを無くして空間同士を流れるようにつないでゆくところだったり、壁の白を用いた光の使い方だったりは似ているところがあります。彼らのような若手がさらに北海道の建築を面白くしてくれることを心より願っています。おじさんも負けないけど!(笑) 

両家の建て主さまへ

このたびは竣工おめでとうございます。また見学をお許し願いまして心より御礼申し上げます。おかげさまで学びを深める大切な機会をいただきました。今後のご家族のみなさまのご多幸を心よりお祈りしています。

今日はくるりの曲を二人に贈ります。これからも素敵な家をたくさんつくってください。(笑)

Dewのカバーで:ばらの花 https://www.youtube.com/watch?v=mBSKWGnkbGs

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