2010年11月12日金曜日

菊水の家 最終的なQ値

みなさま、寒くなってきましたね~。インフルエンザが流行の兆しとか、風邪など引いていませんか?私といえば、菊水と南あいの里の現場が最後の追い込みに入り、幸せな忙しさのなかで毎日を過ごしています。
北海道が1988年より推奨してきた北方型住宅仕様を遵守しそのルールの中で最高性能を目指す南あいの里に対して、そのルールを下敷きにしながらも独自の仕様も加味して高みを狙う菊水。両者は似ているようでいて実は設計のコンセプトが異なります。
南あいの里では、今年度の北方型ECO+のルールに則り、Q値計算上禁止された機械換気ではなくパッシブ換気(自然換気)を前提にQ値の算定を行っています。安易に熱交換換気の性能に頼って断熱を軽視することを防ぐための措置ですが、反対にしっかり断熱をした建物に熱交換換気装置をつけたならば、今の北海道の標準技術でQ値がどのくらいになるのかも大いに興味があるところだと思いませんか?菊水の家はそうした問いに答えるために1種熱交換換気システムを装備しています。さらに、空気熱源のヒートポンプを用いた暖房、給湯を用いることで低燃費を狙い、オール電化の泣き所である電力生産時の一次エネルギーの削減にも取り組んでいます。設備的にはたいへん今風であえて言うならば、太陽光がないくらいでしょうか?(笑い)
しかし今までブログをお読みの方は既にお分かりだと思いますが、こうした設備は優先順位としては二番目であることをぜひ上の表から感じてほしいものです。この表は現在建設中の菊水の家の最終的な断熱仕様をもとにQ値の算出をした資料の一部です。もちろん作成者はDr.タギ氏、実に分かりやすくまとめていただいています。それによればQ値は0.7W/㎡k、家全体で必用とされる暖房設備の大きさは2kw少々。みなさんが毎朝お使いのドライヤーは1本約1kwですから、2本分で家全体の暖房がまかなえることになります。従って室内に置く発熱体はたいへん小さくできます。
断熱に軸足を置いて室内の快適性をデザインすることは、けして暖房設備を否定するものではありません。一般にライフサイクルの短い機械暖房設備に掛かる負担を抑え、適切な大きさにすることでコストを抑えさらに燃費も改善します。換気設備も同様に複数のメリットが考えられます。私たちが取り組む省エネやCO2の削減には今後たいへんな努力が必要ですが、全て革新的な技術開発に任せるのではなく、自らの意識を変えることでずいぶんと楽になることをぜひ知っていただけたら幸いです。寒さを理由に始まった北海道の断熱が実はたくさんの長所と価値を備えた賢い暮らしの知恵として地域に根付き、育つことを願っています。1軒また1軒と設計し建てることでこのテーマにたくさんの仲間たちとのコラボレーションを通して挑戦し続けたいと思います。